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考え中2
野生のごりら
アヤとパーロと森に入って数時間が経過した。丁度正午頃にで村を出たから辺りは段々と薄暗くなっていく。
ジメジメとした空気が重くなり昼のような青緑で照らす美しい木々が雲れている。
少し歩くと開けた場所に出てパーロが足を止め、こちらに振り返る。
「今日はこの辺で夜を明かそう。アヤは薪を集めてきてレイは俺と一緒にテントを建てるぞ。」
そう言うとアヤはオッケーと言うばかりに片腕を上げ薪を集めに行った。パーロは背負っていた大きなリュックを床に下ろしている。リュックを開けると簡易的なテントが入っておりパーロが組み立てていく。
「レイもボーっとしてないそっち持ってくれ」
パーロが大きな布のようなもの広げている。どうやらテントの大部分だ。俺がぼーっと見ている間に骨組みは組み立て終わっていた。
布の片側を持ち骨組みに合わせて被せていく。そして、あっという間に2個のテントが完成した。そうこうしていると薪を集めに行ったアヤが帰ってきた。
「おまたせ〜!」
笑顔でこちらに向かってくるアヤの手にはいっぱいの薪があった。テントの中間となる位置に薪を敷き、パーロが火おこしをしている。
村から持ってきた綿に火打石で火種を付けて少しずつ小さな火ができる。薪を追加し焚き火の完成だ。ここまですんなりできたのもアヤとパーロのサバイバル能力の高さからだ。そして、俺は特に何もしていない。いや、テント張ったか。
「じゃあご飯作っちゃうね!」
そう言うとアヤは行きがけに取れたきのこでシチューを作ってくれた。焚き火を囲いながら3人できのこシチューを食べる。繊細なきのこの味にシチューの深みが増した実に美味しい物だった。「料理が上手いのは母譲りなんだな」と思う。
「それじゃあ3時間おきに俺とレイで見張りをする。何かあったら起こしてくれ。そして、もしも何かあった時は森で迷ってここには帰って来れないだろう。ここから北にあるライネンスで落ち合おう分かったな?」
どことなくパーロの真剣な表情で俺は今自分が置かれている状況を再確認できた。そして安全第一で考えてるのもパーロらしいと思った。
夕飯を終え、アヤはテントに入っていく。先にパーロが見張りをしてくれて、俺は別のテントで寝る事になった。。
「レイ、レイ!」
眠っている中、俺を呼ぶ声が聞こえた。また夢の少女か?と思いつつ意識が朦朧としながら感覚を研ぎ澄ましてみる。よく聞くと男の声でどうやら夢の少女じゃないらしい。寝ぼけながら目を開くとパーロの姿が見えた。正直がっかりだ。と思っているなんて口が裂けても言えないが。
「3時間経った、交代だ。何かあれば大声で叫べ、分かったな?俺は寝る」
どうやら交代の時が来たようだ。時計を渡されあくびをしながらテントから出て、焚き火をぼーっと眺めてる。
夢の中の3時間って短いな。そう思いながら焚き火の火が消えないようにたまに薪を追加していく。
夜って意外と長いんだなぁ。眠気と戦いながらも暇で仕方がない。そこで俺は俺自身が村を出てする目標を作る事にした。
「え〜っと価値のある人間だから具体的にはどうすれば良いんだ?」
小言で夢の少女の言葉について考える。最終目標は夢の少女を探すかな?記憶は薄いけど少女が存在している確信している。
ならその少女に胸を張って会えるようには人のために生きていれば価値は付くのか?まず価値のある人間ってなんだ?
焚き火を眺めながらゆったりと考えてたらそろそろ3時間が経つ頃だ。俺はテントへ入りパーロを起こしに行く。
「パーロ、交代だ起きろ。」
パーロの巨体がむくりと起き上がる。時計を渡し時間を確認するとパーロは見張りをしに焚き火の方へ向かっていった。
俺は続けて眠っていたが、どうにも考え事をしていたら眠気が消えてしまっていた。仕方なくテントを出てパーロに話しかける。
「俺、人を助けれるような人間になるよ。」
そう。これが俺の答えだ何でもできるパーロへの憧れとかつて救われたように俺はそう言う存在になりたい。それに弱い俺でも何かしらの方法で人を救う事に繋がるかもしれない。
「そうか。」
パーロはそれだけ言って、少し微笑んだ。
その後は男のロマンを語り合った。。
チュンチュンと小鳥の鳴き声が聞こえる。辺りが明るくなり気付けば朝になっていた。テントからアヤが起きてきて、眠たそうに「おはよう」と言う
「おう!おはよう。保存食だが朝食できてるぞ!」
ニカリと笑ってパーロが乾パンを差し出す。アヤは眠そうに受け取り、ぱんを頬張る。
食べながらパーロが今日の方針について話す。
「今日も昨日と同じようにひたすら歩く。30分後にはテントなどを片付けて出発しよう。」
そう良い食べ終わったパーロはテントの中を片していく。俺もパーロの手伝いをしながら出発の準備を始める。
荷物もまとめ終わりいざ出発の時だ。リュックを背負って3人で歩き出す。パーロは首元から下げているコンパスを頼りに道を進んでいく。
何事もなく順調に進んでいくと。霧がかかり始めた。視界が悪くなるほどじゃないが、十分足元に注意が必要な程辺りは薄くなる。
「どうしたものか。霧が濃くなると森を歩くのは危険だな。」
パーロがそう言うと途方に暮れたような顔で考え事をしている。
霧が濃くなると万が一逸れた時に近くにいても見つけるのは困難になるだろう。森なこともあってどっから来たかとか分からなくなる。
「仕方ない。少し早いが今夜はここで過ごそう。明日霧が晴れたら出発だ。」
そう言うと黙々とテントを組み立てていく。アヤは道中拾ってきた薪で火おこしをしている。
俺もパーロと共にテントを組み立てる。昨日より早く組み立て終わり、夕飯の支度を始める。今夜はきのみや山菜のスープだ。アヤの料理なこともあって実に美味しかった。
夕飯を終え、昨日と同じように見張りをする事になった。
「今日は俺が先見張りをするよ。パーロは寝てて」
それだけ言って薄暗い霧の中で焚き火を眺める。
その時微かだが後ろの方で枝がパキッと折れるような音がした。
「獣か?それとも…どっちにしろ何かがいるのは確かだ。パーロを起こすか」
俺は急いでパーロが寝てるテントへ入る。
「起きろ!パーロ!近くに何かいる。物音がした」
横向きに寝ているパーロをゆさゆさと揺らし起こす
すぐに起き上がり俺たちは急いでテントから出る。霧で辺りは見えなかったが、パーロと俺は冷や汗をかく。なぜなら見られているからだ。何か分からない。ただ尋常じゃないほど不気味だ。一点をじっくりと見られていて、こちらを伺ってるようなそんな感覚。
「なんかいやがるな。レイ、ここから一歩も動くなよ。俺はもしもの時に持ってきた猟銃を取ってくる。」
そう言うとパーロはテントに入りがさごそと何かを開ける音がした。それと同時に何かが近づいてくる。足音が少しずつ近づいている。俺はパーロよ急げと思いながら固唾を飲んでその場にじっと待ち伏す。
「待たせたな。」
パーロが猟銃を持ちテントから出てくる。霧で見えないがすぐ先にやつはいる。そして俺は嫌な予感で全身が震える。なぜならこれは人や獣じゃないと確信しているからだ。獣はこんな夜遅くには普通は寝ている。それにこの感覚は両親が殺されたあの時の、絶対的恐怖の。。
「タス…ケテ…」
微かにだが声が聞こえた。ああ、嫌な予感が的中した。
悪魔は大袈裟な感情か無表情しか出来ない。これは基本だ。ただ少し長生きした悪魔は人の感情を唆るような事をする。それは懇願や人のもとある感情に訴えかける事だ。死に際の人を見て学習していく勇逸のコミニケーションだ。そしてもとよりこの森で霧の濃い中偶然、人と出会うなんて有りはしない。あっても天文学的な確率だろう。
どうする?アヤは寝ている。すぐに起こして最低限荷物を持って逃げるか?いや間に合わない。起こしてからじゃ間に合わない。誰か1人足止めしなきゃ荷物なしの森で迷い果てる。
「レイ、賢いお前ならもう分かるだろ。こいつは悪魔だ。アヤを起こして逃げろ。」
パーロはそれだけ言うと首にかけていたコンパスをこちらに投げ銃を構えながらゆっくりと悪魔に近づく。
俺はコンパスを受け取ると絶望のあまり硬直してしまっていた。パーロがいなくなってしまうのでは?と次会ったら悪魔になっているのでは?と頭にパーロの笑顔が浮かぶ。今にも泣きそうになってしまうが。グッと堪えアヤ起こしににテントへ入る。
「アヤ!起きろ!最低限荷物を持って逃げるぞ。悪魔が出た!急げ」
アヤはハッと言うように起き、混乱しながらも荷物を纏める。俺も自分のテントに行き、パーロと自分の荷物を纏めてすぐに出る。アヤもテントから出てきて、アヤの手を引き全速力で逃げる。
「グワァァァア!うぐ…アァ。」
去り際にパーロの痛々しい悲鳴が聞こえたがこれは幻聴だこれは幻聴だと自分に言い聞かせながら永遠と走る。アヤはまだ混乱した様子で何がなんだかわかっていない状況だった。
あれから1時間ほどだろうか。ずっと走り続けて息を切らし一度止まる。暗闇の中床に座り息を整える。
「悪い。俺が弱いせいで今頃パーロは…」
俺は俯き涙を堪える。
「そっか。ごめんね私も2人に任せて何もしてあげられなくて、でもパーロはきっと生きてるよ」
アヤは明るい声でそう言うも悲しさを隠し切りてない様子をしている。
お互い悲しみに浸りながら話しているといつの間にか疲れか眠ってしまっていた。
目が覚めると太陽が葉っぱ越しにこちらを照らしてくる。霧も晴れて晴天だ。俺は不思議とこの晴天がパーロの笑顔を彷彿として気分が悪くなっていく。
アヤも目を覚まし、保存食の干し肉をを食べる。急いで荷物を纏めて来たからか、残りわずかだ。おそらくライネンスに着くまでに尽きるだろう。
「一度村に戻って食料を取りに戻るのはどうだ?このままでは餓死だ。」
「そうだね。一度村に戻ろう。パーロの事もあるしね…ごめん何でもない」
アヤは少し泣きながらごしごしと目を拭く。パーロが居なくなったのは寂しい。そして辛い。俺も思い出せば自分の弱さを責めてしまう。でもパーロはそれを望んでない。だからパーロが生きてる方に賭ける。それだけだ。
それでも立ち上がり、俺たちは村を目指し急遽引き返すことにした。。。
2話完成です!いやぁこんな鬱展開にする予定はなかったんですけどね〜。でもこうなったら最後までって事で主人公虐めます。お楽しみに