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品菊の手紙
品菊は主人公の名前
拝啓 お父さんお母さん
あなた方のお子さんは手癖が悪いです。
将来こそ泥として捕まったりしたら、恥ずかしいので面会には来ないでください。
拝啓 お父さんお母さん
前回の手紙で言ったことは忘れてください。ちょっと卑屈すぎる気がしています。
とにかくも、我が子が気分屋で衝動的ということはご存知ですよね。なにも聞かないでください。
庭で知らない虫が死んでいました。見ていたら雀が食べていきました。気持ち悪かったです。
拝啓 お父さんお母さん
いまの職場での人間関係が面白くて困ります。
みんながギクギクしていて、私は傍観者です。
どんなときも傍観者というのは楽しくてたまりません。もっと私に無関係な諍いが起きればいいのにと思っています。
でも同時にこの諍いが終結するのを恐れています。この類の諍いは、なぜか傍観者が一番嫌われるという方向性で終わりを迎えると相場が決まっているからです。
目立たずに生きるのに必要なのは何もしないことではありません。あとあと糾弾されない程度に行動することだと思います。
拝啓 お父さんお母さん
なにもないところで転んで歳を感じました。小さいころ馬鹿にしてすいません。
お父さんお母さんはどうかお元気で。健康が一番です。
拝啓 お父さんお母さん
この前の仕送りでもらったキャベツに虫がわいていました。私は確かにこういったことをされても文句を言えないことをしてきましたが、できる限りやめてください。
とった虫はそちらに送り返しました。死んでいたら畑の肥料にでもしてください。
拝啓 お父さんお母さん
近所の人に赤ちゃんが産まれて、しょっちゅう泣き声が聞こえています。赤ちゃんの泣き声って癖になりますよね。
実は、はにちゃんが赤ちゃんだったころ、はにちゃんにわざと意地悪をして泣かせていたのは私です。ふみやのせいにしていましたが、私です。すいませんでした。
拝啓 お父さんお母さん
ふみやから連絡をもらいました。認知症と診断されたそうですね。でも、きっと嘘ですよね。ふみやが私に意地悪しているのだと信じています。
拝啓 お父さんお母さん
入院なんて嫌ですね。苦しいですか?
拝啓 お父さんお母さん
ふみやが私を殴ってきました。お前のせいで父さんと母さんは追い詰められたんだとか訳わからないこと言われて悲しいです。
答えてください、お父さんお母さん。
拝啓 お父さんお母さん
葬儀が済んだのに手紙を書き続ける我が子をお許しください。私はお父さんお母さんに手紙を書くのが好きなのです。お父さんお母さんに手紙を出すことが重要なので、お父さんお母さんが生きているかはさほど重要ではないのです。
親不孝な娘をどうかお許しください。
はにちゃん…いとこ
ふみや…弟