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花散里
5月上旬はぎくしゃくしたまま過ぎた。
下旬ぐらいになると、春っぽさは一気になくなる。梅雨に入り、湿った感じになっていく。クラスもそうで、だんだん話題がマンネリ化していた。源さんの話題は上旬に再ブームしたが、下旬には誰も言わなかった。
だからってわたしの気持ちが軽くなるわけでもなく、じめついた感じが広がっていた。
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梅雨はあまり好きではない。髪がどうとかはどうでもいいが、本がかびたりするのは良くない。そう簡単にかびないのは、わかっているものの、でもやっぱり嫌になる。傘をささなきゃいけないし、本の持ち運びだってそう易易とはいかなくなる。図書館は梅雨の時期、しばらく行かないと決めた。帰りに土砂降りは困る。
もう梅雨の幕開けのように、ざあざあと雨が降っていた。窓越しでも伝わる、その勢い。帰るのが嫌になる。合羽は持ってきていないし、傘ひとつで帰らなきゃ。
今日は帰りの図書室はやめた。一秒でも惜しい。その間、またざああっと勢いが増したら困る。長靴ではない、しくじった。
仕方なく運動靴を履いて、傘をさして、そのまま走る。スクールバッグが揺れる。ざあざあ。ざあざあ。ぺしゃっという水たまりを踏む音。あ、濡れちゃった。また走る。あと何分?あと2分ぐらい?たったったっ、ぺしゃっ。あっ、家が見えた。あともう少し、もう少し。また走る。走って、走る。
ゴールインするつもりで、玄関のドアを開けた。親は共働きだからいない。しょうがない。自分でやらなきゃ。でも制服の処理の仕方なんてわからないから、取り敢えず制服をハンガーにかけておいた。
お風呂をためる時間なんてないから、脱衣所に行って、シャワーをあびることにした。ちょっと熱めのお湯が、わたしの血流を蘇らせる。あ、わたし生きてるな。あったかい。
もうパジャマでいいや、とパジャマに着替えて、母にメールを送る。濡れたから今着替えた、と入れた。既読にはならなかった。
ソファにもたれて、リモコンを操作する。地上波は何にもやっていないので、動画アプリに切り替えて、そのまま動画を吟味する。あ、この本読みたかったやつだ。『ネタバレなし』と書いてあるけど、本当に大丈夫かな。一瞬思って、でもこのチャンネル好きなやつだ、と動画を再生することにした。
この本、図書室にあったっけ。なかったら、図書館でもいいんだけど。あぁ、でも図書館だと7月ぐらいじゃないと行けないな。暑いし。まだ春の範疇なのだろうか。
ざあざあと降り止まぬ雨は、動画再生を遮ってくる。
テレビは平安時代にない?知らんわ