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第陸話【下】
シラハは頭の中をはてなでいっぱいにしながら、歩いていた。あの、神聖なお祈りの場の地下が実験室?それに、魔って…………。「魔」には心当たりがあった。いつだっけ、遠い昔だった気もするし、最近だった気もする。ノルエ様が真っ赤な花を持ってきて、それで、それはなにかを聞いた。そうしたら、魔って………。とても、神聖なものだと言っていた気がする。神に等しい、と。花の花弁は五枚で………。花のことを思い出す度に、早くなる足取り。気がつくと、シラハは自室ではなく、お祈りの場へと向かっていた。何度見ても美しい大理石の床に足を踏み入れた途端、小さな断末魔が聞こえた気がした。驚き、思わず後ろへと下がる。キュッ、と心地のよい音が、壁に反響し、お祈りの場全体に広がった。思わず、口を塞ぐ。それから、ゆっくりと一歩一歩歩き出した。キョロキョロと視線を動かし、地下へ入る場所を探す。一生懸命探すが、なかなか見当たらない。それに、何度も行ったことのある場所なのだから、変なものがあったら見つかるし、普段から怪しむはずだ。そう、《《いつも行ってる場所なら》》。シラハはチラリと、奥に位置する豪華な椅子を見た。そして、歩み出した。
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案の定、椅子の後ろには隠し扉があった。引っ張ると木が擦れる音がして、扉が開いた。墨を塗りたくったような真っ暗な中。風はそこに吸い込まれているようだ。風の流れに逆らわず、シラハは中に入っていった。
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気がつくと、シラハはベッドにいて、朝を迎えていた。あくびをしながら、くしゃくしゃな髪を触る。夢、だったのかな?妙にリアルな夢だな。思い出せない………。頭が痛む。赤色に染まる。シラハは首を振って、赤を振り払った。
「夢は、夢。だよね。」
シラハはいつも通り、メイド服に着替え、いつも通り、廊下へ出た。悲鳴を聞いたのはその時だった。慌てて、廊下を走り、駆けつけた先には、`発火した人`がいた。
`「あ゛ぁ゛………ヒュー………ヒュー………ダ………ズゲデ………………ぁ゛う゛ぁ゛………。」`
発火しながらも、助けを求める人物を呆然と見つめる。皮膚は焼けただれ、蒸発した目玉は片方が皮一枚で繋がっている状態になっていた。
`「いダい゛…ぁ゛づい…………い“や゛ダぁ゛………ジニタ゛………グ………ナイ゛………。」`
床に這い蹲り、転げ、のたうち回る人だった肉塊を見て、こんな無感情でいられる自分が怖かった。人の目の涙も、蒸発して、空気中に溶ける。やがて、口から小さな風を切るような音を出して、息絶えた。亡骸__肉塊を無表情で見つめるシラハを、小さな悲鳴をあげて、「化け物」と罵る一人の子供。混乱と恐怖は全体に伝わり、固まっている子や、泣いている子が何人もいた。そこへ、サラッとした金髪を揺らした男が入ってきた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます!
一応、ね。PG12付けたよ?そんなにグロくないけど。
次回も読んでくれると嬉しいです!