１０話　　2人の初デート

少し肌寒くなってきた頃。 「この服でいいかな〜………？」 今日は、健太とデート｡………お出かけ､って言ったほうが良いかもしれない｡ 約束の時間の三十分前に家を出た。 「おー、颯。」 「健太。………待った？」 「いや、全然。…じゃ、行こ」 「うん………」 (……なんでデートなのにこんな冷静でいられるんだろ…) --- 「…あ、あれ食べたい」 「ん、いーよ」 ビルの中のフードコートで飲み物とか食べ物を買い、少し休む事にした。 近くには海の公園があり、それに興味を示した颯は、 「公園ある！行ってもいい？」 「…うん、もちろん」 なにか、決意がこもったような返事をした。 夕暮れ時の海には夕日が写っていて、とても綺麗だった。 「うお〜！きれーだな、健太！」 子供みたいにはしゃぐ颯が、少しバカバカしくもかわいかった。 「………颯」 「ん？」 --- その時、僕は何をされたのか分かるまでに時間がかかった。 唇に当たる、ぷにっとしたもの。 目の前の………健太の、ウルッとした瞳。 西陽が眩しかったけど、健太はそれをカバーするように僕を抱く。 これが、僕の――――― いや、 〝僕と健太の〟 最初に感じた、キスだった。