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兄が最高すぎて彼氏ができない #1
ピピピ ピピピ ピピピ
「おはよう」
クソみたいにうるさい電子音。
それに紛れたテノールの柔らかい声。
がばっ
いつもの如く突然飛び起きた私に、彼は端正な顔で微笑む。
「おはよう、|彼方《かなた》」
本当にいつ見てもイケメンである。
「おはよう|遥和《はるか》」
顔よし、頭よし、スタイルよし、性格よし。
こんな最強な人が私の兄でいいのだろうか。
神様、というかコウノトリ、血迷ったか。
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「おはよー、、、」
支度を終え、リビングへ降りると、母さんが目玉焼きを焦がしていた。
父さんは、、と見回して、今日はじいちゃんの病院か。と今の状況に納得する。
|倉富《くらとみ》家は母がバリバリのキャリアウーマン、父が主夫なのである。
なにゆえかと言えば、母が家事音痴だから。
他の何ものでもない。
しかしそんな母に愛らしいなぁと思う。
「母さん、何してんの、?」
「あ、彼方おはよう」
素知らぬ顔である。
本当にそういうところが可愛らしい。
「母さん、彼方。それ僕が食べるから、新しいの焼いてあげるよ」
新聞とコーヒー片手に父親ポジにいた兄がメガネを押し上げながら言う。
行動までイケメンとかどうなってるんだ本当に。
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「はいどうぞ、召し上がれ」
少々お道化て差し出された皿には、絶妙な火加減で焼かれた目玉焼きがいた。
料理までできちゃうのか、、と頭を抱える。
「彼方、具合悪い?」
母さんに覗き込まれて我に返った。
「いや。てか母さん時間」
視界に入ったテレビの時刻表示を指さして言う。
母さんが家を出るまであと十分。
母さんは慌てて目玉焼きを口に放り込むと、モゴモゴとなにかを言って(恐らくごちそうさまと言ったのだろう)バタバタと家を出ていった。
騒がしい倉富家の日常である。