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第5話
城に戻ると、まず私は召使いに声をかけた。
「お風呂の準備をお願いできるかしら」
召使いはすぐに動き、湯を張り、清潔なタオルや湯浴みを用意してくれた。
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一方、末日と加楓はまだ緊張した面持ちで城の廊下に立っていた。
聞くと、お風呂に入ったことがほぼないらしい。
「今日は、私も一緒に入るから、安心してね」
私は微笑みながら声をかける。
二人は少し戸惑った表情を浮かべたが、どこか安堵の色も見えた。
「さ、浴室はこっちよ。着いてらっしゃい。」
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服を脱ぎ、浴室に足を踏み入れると、湯気がふんわりと立ち込め、柔らかい光が水面に反射する。
普段見慣れない豪華な桶や洗い場に、末日も加楓も目を丸くしていた。
「えっと…あの、熱すぎませんか…?」
加楓が小さく声を上げる。
私は手で湯の温度を確かめ、ちょうどよい温かさに調整した。
「ほら、まずは足だけ浸けてみて」
末日も恐る恐る足を湯に入れると、思わず「ひゃっ…!」と声をあげる。
そういえば「お風呂は冷たいもの」と言っていた。
冷たい水しか知らなかった体には、この柔らかい温かさが刺激的なのかな、?
私もそっと湯に手をつけ、二人の肩を軽くさすった。
「大丈夫?冷たくでしょう?」
末日は少し安心したように息を吐き、加楓も小さく頷いた。
湯に体を浸けると、二人は最初こそぎこちなく座っていたが、次第に肩まで浸かり、
緊張が少しずつほぐれていくのがわかる。
私は後ろで髪を団子にまとめ、二人の背中に泡をのせて洗い始める。
冷たい水しか知らなかった二人の肌は、とても荒れていて、至る所に傷ができている。
「…あ、あの…彩音さん…」
末日が少し恥ずかしそうに声をかける。
「大丈夫。ここではみんな平等よ」
私は優しく答え、加楓にも微笑みかける。
しばらくすると、二人の肩や背中に泡を滑らせながら、次第に心を許すような穏やかな時間が流れる。
冷たく孤独だった彼らの体も心も、少しずつ溶けていくようだ。
湯気の中で、二人は互いに顔を見合わせ、照れくさそうに笑った。
私はその笑顔を静かに見守りながら、心の中で密かに思う。
(この子たちを、守らなきゃ)
長い時間をかけて丁寧に体を洗い、最後にしっかりと湯をかけてすすぐと、
二人は少し赤くなった頬を手で押さえながら、満足そうに湯から上がった。
浴室の扉を閉める前に、私は柔らかく声をかけた。
「これで、温まれたわね。ゆっくり休んでちょうだい」
その言葉に、二人は小さく頷き、少し安心した表情を浮かべた。
私はその背中を見送りながら、次に続く日常の準備を心の中で思い描く。
まだまだ、この子たちにしてあげたいことはたくさんあるのだから____