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まもあく「サリジエ&純粋神」過去編
……昔、ある小さな悪魔の女の子が居ました。
その子は、人間も魔物も大好きでした。
「むっらびっとさーん!」
「おぉ、お嬢ちゃんか。今日はどうしたんだい?」
「今日、パン焼いてるんやろ!一個余ったらちょうだい?」
「はは、お嬢ちゃんは耳が早いなぁ。言われずとも、お嬢ちゃんの分は用意してるよ」
「わぁい!ありがと!」
女の子が住んでるのは、森の奥深くの一軒家ですが、その近くにある村にちょくちょく訪れては、食べ物をもらっていました。その代わりにお嬢ちゃんはいつも村人の手伝いや、子供たちとよく遊んでいました。
女の子は自分が悪魔であり、本来は人間に差別される存在だと微塵も思っていませんでした。
親などいた記憶も無く、最初の記憶は家で空腹と孤独を嘆く自分のみ。
それから何年もしてようやく村を見つけ、手伝いの対価に食べ物へとありついたのです。
「ふんふふーん♪」
「きゃうっ」
「あ、うさぎさん!」
女の子が住んでる森には時々、小さな動物が現れます。
動物は、女の子を一目見た瞬間に懐いて、餌をねだるようになりました。
「はい、今日は焼きたてパンやで!すっごい美味しいよ!」
女の子も、小さな動物がいてくれるおかげで家でも一人になることはなく、餌をあげてよく遊んでいました。
「そうだ。明日は、うさぎさんと村の子らと一緒に遊ぼ!」
女の子は明日、村の子供達と遊ぶ約束をしていました。
「ふふ、絶対皆喜ぶに決まってる!だってうさぎさんこんなに可愛いんやもん!」
そして、待ちに待った次の日。
女の子は兎を腕の中に抱いて、村の中へと入っていきました。
「あ、サリちゃん来た!」
「みんなお待たせ〜!」
「?サリちゃん、それなぁに?」
「じゃじゃーん!うちの友達のうさぎさん!可愛いやろ!」
「ひっ、まもの!」
「サリちゃんがまもの連れてきたぁ!」
「え、まもの…?」
何なのそれ、と聞く前に子供達は散らばってしまい聞けません。その上、子供の悲鳴に駆けつけた大人達は、女の子を怪訝な目で見つめています。
「嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。さっさとそれを森に置いてこい!」
「それってなんなん!うさぎさんは物じゃない!」
「っ…この、魔物の仲間め!」
大人は、それぞれ農具を取り出し女の子と兎を引き離しました。
「きゃっ!」
大人は数人がかりで女の子を取り囲み、その倍の人数でうさぎを攻撃し始めました。
「やめて!うさぎさん、うさぎさん死んじゃう!」
女の子がどれだけ叫んでも、どれだけ泣いても大人達は農具を振り下ろすのをやめません。
そして、小動物である兎が大人の猛攻に耐えられる訳もなく、数分後には動かなくなっていました。
「っうさぎさんやだ!死んじゃやだぁ!!」
「おい、こいつはどうする?」
「一緒に始末しておいたほうがいいだろ」
「そうだな。おい、一発で仕留めろよ」
「あぁわかってる」
一人の大人が、女の子に近づく。その間も女の子は他の大人達に取り囲まれたままです。
「う"、う"ぅ……泣」
女の子はその周りの様子も知ることなく、ただ兎が殺された怒りと悲しみで泣いていました。
「…ッ許せよ、嬢ちゃん!」
今が好都合だと、大人は農具を振り下ろす。
ザクッ
「…は、土!?」
しかし、次の瞬間響いたのは土を掘った音で、女の子に当たることはありませんでした。
「おい、悪魔はどこいった!」
「きっと逃げたんだ、手当り次第探して殺せ!」
村人達は悪魔を逃したと大騒ぎで、そこに人が立っていた事に気付きませんでした。
「__無害の少女を殺そうだなんて、野蛮な人間共だ」
「…ぇ……?」
「な、新手の魔物か!」
「魔物とは失礼な…。"魔王"と呼んでもらいたいな」
「ま、魔王だと!?」
「あぁ、酒鬼マラ。それが俺の名だ」
「……?」
女の子は酒鬼マラと名乗る青年の手の上に乗っており、自然と女の子はその手にしがみついていました。
「魔王、酒鬼マラ…聞いたことがあるぞ……」
「魔王が、俺等に何の用だ?」
「お前らに用はない。この娘は俺が引き取ろう」
「……ふざけるな!その悪魔は数年間村から食べ物を奪ってきた魔物だ!」
「そうだ。そんな魔物を生かして見逃せだと?」
「っ……」
女の子に向けられる村人達の目は、昨日とは全く違う、軽蔑と差別の目です。
しかし、マラは軽い風を受けたが如く言い返す
「…これは決めたことだ。それでも何か、俺と戦いたいというのか?」
「はぁ!?上等だやって…」
「やめろ、魔王酒鬼マラの噂は聞いているだろ?」
「!…チッ」
「わかってくれたようでありがたいよ。…さらば、また会うことはないだろうけれど」
マラはそう言い残し、女の子を連れて森の奥へ消えていった。
「さて、と…ここまでくればいいかな」
「あの…、」
「ん?」
「ありがとう、ございます。助けてくれたん、ですよね…?」
女の子はほとんど状況を理解できなかったが、この人が自分を助けてくれたことは明白だと考えました。
「気にするな。俺はさっきも言ったが酒鬼マラだ」
「マラさん!」
「そうだ。…君はこれからここで暮らすといい」
「…え?」
「ここなら人間も来ないし安全だから…」
「あのっ!うち、マラさんに付いていきたい、です!」
「……しょうがないな。…ちなみに、名前は?」
「名前……」
そういえば、村の子供達に呼ばれていた名前は、子供達がそれっぽいという理由で付けてくれたあだ名だった。サリとは、自分でつけた名前ではない。
「……サリジエ!うちの名前サリジエにする!」
「そうか。サリジエ、よろしくな」
「うん!」
これが、悪魔サリジエの誕生の瞬間である。
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ここは天界。
多くの神と天使が集い、人類の秩序を守るため日々忙しく動いている世界。
人類が住まう界が下界なら、天界は上界と言われることがある。
その中で、群を抜いて優秀な中級神がいた。
『純粋神』
亡き親の為10歳から天界に関わる仕事に携わっており、経験の差は同年代の神とも比べ物にならない。
「純粋神が天界の中心に立てば、我らも人類も安泰だ」
そう言われるほどに彼は優れていた。
ある日、上司にあたる神に一つの命を受ける。
「下界に降りて直接人類のサポートをしてほしい。頼めるか?」
純粋神にとっての上司は、親が亡くなり一人だった純粋神を世話してくれた心優しき恩人である。
「御意」
そんな恩人の頼みを断るわけもなく、その場で下界に降りることを決断する。
「助かる。知ってると思うが、下界には我らが守るべき人の他には帰れなくなった元同胞共や忌まわしき魔物もいる。特に魔物達は見つけ次第駆除してくれ」
「承知しました。では明日の早朝、早速下界に行って参ります」
「無事を祈る」
純粋神は上司に頭を下げ、部屋から退出する。
「…魔物、か……」
天界には魔物はいない。それ故、純粋神の魔物のイメージは周りから聞いた話そのままだ。
"邪魔な存在"
"人類の敵"
"倒すべき悪"
「…早く準備しないとな」
純粋神はそう呟き、足早に自分の家に帰った。
そして、翌日。
純粋神が降りた下界の先は、木々が生い茂った森の中だった。
「わぁ……」
天界では森の中でも人の手で管理されてるため、このような無作法に生えてる自然というのはない。
カサカサッ
「ん?」
近くの草むらから物音が聞こえて、純粋神はそちらを振り向く。
振り向いた先には歪な蛇の形をした生物、魔物がいた。
「ま、魔物!」
早く駆除しなくては…と純粋神は急いで戦闘態勢に入る。しかし、その魔物は純粋神に対して威嚇も攻撃もしない。よく見ると、怪我しているようだった。
「怪我してる…?いや、でも……」
困っている存在には手を差し伸べよ、これも恩人たる上司の言葉である。
目の前には倒すべき魔物であり、手を差し伸べるべき存在がいる。
純粋神の心が揺らぎ、一つの答えにたどり着く。
「……ほら、こっち来て」
純粋神は敵意を解き、魔物に手招きする。魔物も警戒しながらも近づいてくる。
そして、自分の膝下に来た魔物に純粋神は簡単な治療と回復を施した。
「…これで大丈夫。ほら、早く帰りな」
魔物の治療もある程度終わり、しっし、と手で会釈する。魔物は礼儀正しく、頭を下げ、そのまま草むらへと消える。
「ふぅ……」
上司が言っていた言葉を黙殺し、魔物への手助けをしてしまった。
(誰にもバレなきゃいいんだけど…)
しかし、そんな純粋神の願いは至極当然かのように握り潰された。
下界に降りて間もなくした頃、純粋神は再び天界へ帰ることとなった。
そして目の前には、純粋神の上司が厳かな表情のまま純粋神を見下ろしている。
「純粋神。下界でお前は魔物を殺さず、しかも治療まで施したという知らせが入っている。事実か?」
「…はい」
誤魔化しても意味はない。なら素直に白状したほうがいいだろう。
「何故殺さなかった?」
「殺す必要がないと判断したからです。何より自分が見た魔物は怪我をして弱っておりました」
「言ったはずだ。魔物は人間にも我々にも害を成す存在。殺す必要がない?そんな訳無いだろう」
「いえ、もしかしたら魔物は__」
「黙れ」
悪い存在ではないのかもしれません、そう言い切る前に遮られてしまった。
「魔物と接点を持つ事は、同族であろうとも許されることではない。よって__」
「純粋神、貴殿の神の称号を剥奪する」
「……」
なんとなく、予想はしていた。
天界に呼び出されたのも、きっとこれを伝えるためだったんだろう。
「貴殿の天界への立ち入りを今後一切禁ずる。我の前から消え失せるがいい」
「……御意」
ただ一言、純粋神は頭を下げ小さく呟き部屋をあとにする。
恩人の頬に涙が伝うのも、純粋神は知らずに天界から堕ちた。
神でなくなり、純粋神は、下界を自由に歩き回っていた。
「これからどーしよっかなぁ……」
どこかでひっそり暮らすもよし、色んな場所を見て回るもよしで、例え堕天しようとも純粋神は気楽だった。神の寿命は永遠に近い。自由になった純粋神はこれからを気ままに生きるつもりだ。
ガサガサ ガサガサ
「?魔物かな?」
また草むらに魔物が隠れているのかと思ったが、隠れられるようなところはない。
(てか、今の音上から聞こえて__)
ボキッ ドサッ
「いったぁ!?」
「うっわぁ!?」
いつの間にか真後ろに少年が痛そうな顔をして尻をさすっていた。
「つ〜……う?……誰?」
「それこっちの台詞でもあるよ?」
物音からして、この少年は木の上から落ちてきたのだろうか。
「いやーごめんごめん。ボクはジェリア。驚かせてごめんね」
「ジェ、リア…?」
どこかで聞いたことがある名だ。気のせいだろうか。
「?なんかボクの顔についてる?」
「あ、い、いえ…。あ、僕は純粋神です」
「純粋神…大層な名前だねー。もしかして神サマとか?」
「ギクッいい、いや、いや?ぜ、全然そんなことなくて」
「あうん、わかった神サマね」
「なぜバレるッ!?」
「バレないと思ってたなら君流石だよ」
ある程度会話を重ね、純粋神はジェリアに現在の状況を話し、そして思い出す。
(ジェリア、過去に堕天した大罪人…)
堕天した者は今後一切天界に入れぬよう、一人一人名を記されている。その中に記されていた名の一つがジェリアだった。
「いやーまさか、同じ境遇の人を見つけるなんて。昔はこんなに見つかんなかったのに」
「?どゆことですか?」
「最近君含め3人の邪神を見つけたの。あと残り2人もいい子だよ〜」
「へぇー」
「あ、よかったら君も来る?行く場所とか決まってる?」
「い、いや…」
どうしようか、と純粋神は思う。
これから自由といえど、まず最初に何するかなんてわからない。何をしたいかすら、純粋神は考えていなかった。
__どうせ決まんないなら、ここで付いていくのも一興かもな
「…よければ、行きたいです!」
気ままに、自由に、好きに生きる。
それが純粋神のこれからであるのは確かであった
やっと投稿できたぁ…泣
隔離投稿どころじゃないですね。思いっきりスランプでした。
生存報告含め投稿しました。
次回もまた何週間か空くかもしれませんがお待ちください。
夏休み入ったら必ずや週間投稿に戻してみせます……!!
以上、前日までテスト期間だったせるあより((