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永遠の成れの果て
「私たちの友情は、永遠だよ!」
その言葉が、私が覚えている一番古い|歌夏《かな》の言葉だった。
いつでも一緒。どこでも一緒。私たちの関係は、そんなものだった。幼稚園ぐらいだったから、特に何もなかった。
小学校に入ると、歌夏はクラスの人気者になった。可愛くて、元気なクラスのお姫様として。
私は、歌夏と仲が良いからっていじめられた。歌夏は、取り巻きの誘いを断ってまで私と遊ぼうとする。私に着いてくる。そして、いつもの言葉を言う。「|凛《りん》、私たちの友情は、永遠だよ!」って。
気がついたときには、もう私の友達なんて、歌夏くらいしかいなかった。歌夏と別々のクラスになったって、わざわざ私のクラスに迎えに来てまで私と一緒に帰ろうとする。裏で、私はいじめられ続ける。
もう嫌だ。なんで、友達がたくさん出来ても私に構うの?
だから、私は中学校を受験した。そして、第二志望だった学校に行くことになった。
やっと、歌夏から解放される。
でも、卒業式があった日、歌夏は私と連絡先を交換すると言った。つかの間の幸せ、そんな感じだった。
中学は、満足いく日々だった。同じ小学校の人も少なく、私にとっては幸せな日々だった。歌夏からメールが届くことがあったけど、中学校が別れてまで私に構う意味が分からなかった。
高校は、中高一貫校だったからそのままエスカレーター式に上がったけど、歌夏が高校受験で私が通う学校に受かった。入学式の日、「高校は一緒だよ!」と言って笑う歌夏を見て、嫌な感情が渦巻いた。
私は、極力歌夏と関わらないようにした。でも、歌夏は私に構い続けた。かつてのようにいじめられ、友達も離れていった。
もう、疲れた。歌夏が嫌だ。嫌いだ。
家の机に突っ伏せる。顔を上げると、ペン立てにペンに混じってカッターを見つけた。
衝動的にカッターを手に取る。カッターの銀色の刃に、机の照明の光がギラリと反射した。
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凛は、幼稚園で同じクラスになってから興味を持った。
それまで、私はお姫様みたいに扱われることが当たり前だった。可愛くて、元気な女の子として。でも、凛は、私を普通に扱った。周りの皆は特に何も言ってこなかったから、私は凛とずっと一緒にいた。
小学校に上がってから、凛はいじめられた。「お姫様」の私と馴れ馴れしくて、仲が良いからって。
なんで?凛は、私の友達だよ。凛をいじめないであげてよ。
そう言っても、影でいじめが続いていることに気がついた。なんで?私の友達なのに。
凛は私を遠ざけるような気がしてきていた。だから、ことあるごとに言った。「私たちの友情は、永遠だよ!」って。
凛が中学校を受験すると知ったとき、怖くなった。私は、ただ凛と仲良くしたかったのに。凛はそのまま、私とは別の中学に上がることになった。凛との繋がりを無くしたくなかった私は、凛と連絡先を交換した。
高校受験は頑張って、凛と同じ高校に上がった。凛と、ずっと一緒。それが良かった。
高校でも、凛はいじめられていた。そして、私はお姫様。おかしい、こんなの。私は、ただ凛と仲良くしたかっただけ。
ある朝携帯を見ると、「悩み事が無くなる薬、いりませんか?」というメールが届いていた。電話番号を確認して、携帯のボタンを押す。
「……もしもし」
「あの……悩み事が無くなる薬がもらえる、と見たんですけど……」
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「おはよう、凛!」
「おはよう、歌夏」
「あれ?凛、その手首の包帯、どうしたの?怪我?」
「あ~……ちょっと、ね。歌夏こそ、テンション高いけどどうしたの?」
「ん~……なんとなく、ね。あ、ねぇねぇ凛、
私たちの友情は、永遠だからね?」
解説(?)です。
凛は、歌夏や他の人々との関係にストレスが溜まり、リスカを。歌夏は、人間関係がうまく行かないことによるストレスで、薬物乱用を。
うまく行かない人間関係を書きました。バッドエンド、なのでしょうか?