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又旅浪漫
俺はギンさんに
お代は配送料の安い鳥に頼むようにお願いした。
そうすれば獣道のスミレ通りの岩陰に
丁寧に貯蔵してくれるのだ。
ニンゲン界にもネコをモチーフにした配送の会社があるが
それと似たようなものだ。
太陽はすっかり地面に隠れている。
辛うじて薄っすらと、
一箇所だけ紫色に灯る空があるくらいだ。
横には黒ネコのハヅキが歩いている。
確かニンゲンの眼球保護装置にも似たような名の物が...
「あんたキヨシでしょ。
よろしくね、家はこっちでいいかな。」
紫色の箇所以外、辺りは真っ暗だ。
いつフクロウが飛び立ってもおかしくない夜空。
ハヅキは軽い足取りですたすたと歩き
リスのように振動することも無くドーロを進んで行く。
昼と違いひんやりとして肉球が気持ち良い。
「カラスを二羽殺したのは本当かい」
味が気になって仕方がない俺は聞く
ハヅキがにやりと笑っているように見えるが
ギンさん達と仕事をすると
"笑う"が出来るようになるのだろうか。
「あんた面白いね。
ボスにビビらされたんでしょ。
あたしが殺したのは確かに二羽。
でもハトよ。」
「ハトだと。旨くもないだろうあんなもん」
「食べる為に殺したんじゃないわ。」
「なんだ遊びでつい、という感じか。」
黒ネコというのは不思議な魅力がある
メスとなれば尚更なのかも知れない。
月明かりに照らされる黒く美しい毛並みを眺めながら
つい、と言う感じで聞いてしまうのは俺の方だ。
「いいえ、殺意よ。」
毛並みからは想像も出来ない返答だ。