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第3回 伝説なんて全て嘘です!
ふわぁ…とあくびが漏れる。先週、いきなり歩道橋から落ちて卑弥呼にタイムスリップ。なんとか逃げれたと思ったら、2年の先輩である橘紫さんという人に問い詰められ…さんっざんだ。
学校生活は平々凡々で、足して2で割ってやりたい。そしたらちょうどよくなる。
今までより歩道橋を注意して渡る。よし、今日はぶつかられなかった。ほっとして、ふうっと息を吐いた。すると____
「わああ!どどいてくださぁあい!?」
わ、自転車っ!?
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…あーもー、またタイムスリップ?また橘先輩に咎められるかもなのに…
「厩戸王様?」
「う…うまやどのおう?」
厩戸王?えーと…卑弥呼から順当に行くなら、次は聖徳太子か?
…いやいやいやいや!!十人の話なんて同時に聞けませんし、馬で空なんて飛べません!
「どうなさったのですか」
「いや…なんでもない。どうした」
なるべく聖徳太子っぽく(?)振る舞ってみる。
「今、渡来人がやってきたところへ行くという案が出ていますが、どうでしょうか」
「そう、だな」
えーと、じゃあこれは遣隋使ってことかしら。ってことは、小野妹子を出せばいいかな。
「良いと思うぞ。何名か立候補しているらしいが」
そう言って、部下らしき人は人の名前を読み上げた。その中に、小野妹子がある。
「どうでしょうか」
「小野妹子が良いと思うぞ。少し休憩してくる」
「はいっ」
よしっ、これで卑弥呼と同じように抜け出せば…
「皇子!」
「はいっ!?」
思わず本音が出る。
「ああ、いたのねぇ!ここで働いているらしいけど…聞いたわよ、冠位十二階とか、十七条憲法とか。わたしの息子として誇らしいわぁ。次は何をするの?」
「ちょっっっとぉー、今はきゅーけーちゅーなのでぇえ!」
あーもー、自己紹介の時と同じ噛み噛みだしぃ。もうっ、全速力で逃げる、これ一択!そしたら何か弾みで、またタイムスリップしないかな。
…現実はそんなに甘くなく。どれだけ走ってもタイムスリップせず、木のかげに隠れる羽目に。
はあ、とため息を付く。レキジョとして、こんなことはだめなんだろうけど…実技じゃなくて知識重視じゃないの、歴史って?
「歴史旅行者発見!ただちに逮捕…ありゃ、この人、姉さんが言ってた人」
「えっ?」
全然知らない子。小4?ってことは、赤ちゃん、かな?(babyじゃなくて、呼び名の「ちゃん」ね)
この時代ふうの服着てるけど…そういうのも全部、なんだっけ、歴史警察が支給してくれるのかな?ってことは歴史警察って、かなーり大金持ち?
「ごめんごめん。今日も姉さんが、歴史旅行者の確認がみられたって言ってたから。あなた、突発的歴史旅行者ですよね?確か名前は…歴暦!そうそう、覚えやすかったんですよ。突発的歴史旅行者なら、改変罪が認められる確率は低いですけど。さ、行きましょっ」
「えぇえっ!?」
そう言って、「目隠ししてー」とアイマスクをかけられ、なんかプシューッと煙をかけられた。
うぅ、眠い…
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「えーっ、また?」
うーん、橘先輩…?
「あぁ、起きたのね。ねぇ、なんとかならないの?」
「いや、だって…何故か、歴史人物の身体になってしまうんです。自分でどうにかできるなら、とっくにどうにかしてます」
「そうよねぇ。一応、歴史旅行防止剤があるから飲んどいて。お金は取らないから」
「…はぃ」
うおぉ、こんな薬あるんだ。ってことは、歴史警察ってかーなり未来の組織?
「あの、わたし、逃げちゃったですよね?あれ、聖徳太子とか卑弥呼の肉体なんですけど、どうなるんですか?」
「あー…こういう偉人になるケースはレアだからね。適当に処理されるでしょ」
歴史警察、雑すぎません!?