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君との夏の思い出
美咲「ほら、早く早く!花火上がっちゃうよ」
先輩は僕の手を引いて河川敷へと駆ける
風に揺れる黒くて短い髪、白と水色の浴衣が月明かりで透き通って見える
斗真「……先輩、なんで僕を誘ってくれたんですか」
斗真「もっと他に……誰かいるでしょ」
美咲「私は斗真くんが良かったの!ほら、早く!」
理由がざっくりしていてよく分からない
どうして僕が先輩と…?
高校2年になっても地味な僕に春なんて訪れない
そう思っていた
先輩が、僕に話しかけてくれるまでは
一瞬で目を奪われた
肩に付かないくらいの黒髪、大きな瞳、眩しい笑顔
やめてくれ、そんな顔で僕を見ないでくれ
もっと、好きになってしまうじゃないか
美咲「ここからなら綺麗に見えるかな?」
斗真「……そう、ですね」
美咲「てか、今日はメガネじゃないんだね?」
気づいてくれた
……いや、メガネ外してんだ、それぐらい誰でも気づくだろ
コンタクト、違和感無いかな
美咲「髪型も少し違うし、もしかして今日のため?」
斗真「……っ」
いつもの無造作マッシュをかきあげた髪型はコンタクトにしたのも相まって別人のようだった
それを先輩に指摘され、更に今日のためと聞かれて、
僕の顔は熱くなっていく
斗真「……なんか、変ですか」
美咲「そんなことない!凄くかっこいいよ!」
……かっこいい
その言葉を僕は胸に刻み込む
先輩に褒められた、それだけで幸せだ
斗真「……先輩も、その、」
美咲「ん?」
可愛いって言え、かっこいいって言ってくれたんだからそれぐらい……
斗真「……浴衣、似合ってますね」
何ビビってんだよおい
美咲「えへへ、そう?嬉しいなぁ」
空を見上げる横顔は綺麗だった
目が潤んでいて、唇が綺麗なピンク色で、
って、どこを見ているんだ
斗真「……ねえ先輩、」
美咲「ん?」
僕の顔を少し見上げる彼女が
凄く、愛おしかった
抑えられない気持ちが膨れ上がって
もう、止められなかった
斗真「僕先輩のこと、」
ドーンッと大きな音を立てて花火が打ち上がった
斗真「……__です、」
美咲「わあ、すっご……っ!」
先輩は空を見上げて明るい笑顔になる
花火の光に照らされてその笑顔がはっきりと見えた
僕の小さな告白は、先輩の耳には届かなかった
美咲「で、どうしたの?」
斗真「……いえ、なんでも」
美咲「えー何?気になるなぁ」
でも、それでいい
斗真「……花火、見ましょう」
美咲「うん、そうだね!」
僕のこの気持ちは、まだとっておこう
大事に、大切に、守りながら
斗真「……凄く、綺麗ですね」
あなたがとても
美咲「ね!ほら、来てよかったでしょ?」
斗真「はい、来て良かったです」
あなたと二人で花火を見られて、
美咲「お、珍しく素直だね」
斗真「…まあ、」
あなたの前ではそういたいですから
夏だ、改めてそう思った
ぬるい風が僕たち二人の間を通り抜けていく
いつか、僕の思いが、
あなたの心に届きますように
より大きな花火が空に咲いた