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25:記憶の断片
二人で協力して傷を治したナツキさん。放課後の。このあとどこに行くかというと。
そりゃあ部活ですよね。
「部活って、特殊クラスのことですかね?」
なんと、元々ヒメさんがいた学校は貴族学校なんですって。さすがお姫様。
特殊クラスも放課後、生徒が集まって何かするようで、部活については早くも理解した様子。
「こんにちは……?」
「こんにちは!」
私たちが入ったのは美術室。つまりは美術部である。
スケッチブックを棚から取り出し、色鉛筆の箱を開ける。
「この色鉛筆、発色がすごくいいですね。」
向こうのほうが色の種類はたくさんあったが、どれも発色が悪いため、あまり見分けがつかなかったらしい。
そんなことを言いながら、ヒメさんはさらさらと慣れた手つきで絵を描いていく。
「元々、美術クラスを選択していましたからね。」
だんだんと出来上がっていく絵。
もしかして、これって……。
創作変身ヒロイン!?
「創作、変身ヒロイン?」
だってこのフリフリの衣装。可愛い女の子。魔法のステッキ。これはもう変身ヒロインに決まっているでしょう。
ヒメさんはすごい。
初めて見てからたった一日で、こんなにも完成度の高い変身ヒロインのイラストを描くなんて!
「えーっと、その、言いづらいのですが……。」
どうしたの?
「この女の子を描いたのは、初めてではないんです。」
……どういうこと!?
それは、つまり!
向こうの世界にも変身ヒロインみたいな女の子がいたってこと!?
「わ、分かりません!わたしも初めて、ナツキさんの家でアニメを見たんですよ!なのに、なんでこの子が描けるのか分からないんです。」
たまたま、かな?
「分かりません。この子、見たことないはずなのに。なんででしょう。この子を何度も描いたことがあるように思えてしまうんです。」
金髪に綺麗な青い瞳。ふわっふわのドレス。
こんな美少女が向こうの世界にはいたかもしれないのか!
会ってみたい。それは、叶わないのだが。
コスプレではあるかもしれないけれど、本格的だ。
いったい、この服を考えた人は、この女の子はどんな人なのだろう。
「あれ、ナツキ?絵柄変わった?」
あー、気分です。
「き、気分です!」
「そうなのね。でも、可愛く描けていると思うわ!」
「あ、ありがとうございます!」
褒められてとても嬉しそうだった。
もともと絵のセンスがあるということだ。勉強も出来て、イラストも描けるなんて、ヒメさんは実に多彩である。
「そんなに褒めても、わたしからは何も出ませんよ!」
何も出なくても褒めるのはいいことである。