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恋と退魔の境界線
夢乃
一部ネタバレ含みます。
自己解釈、想像表現があります。
誤字、脱字がある場合があります。
「何でもOK」という方だけお読みください。
夕日がかもめ学園の校庭を橙色に染める頃。
僕──源輝は旧校舎の3階を見回っていた。
黄昏時と呼ばれるこの時間帯は、怪異達がそそくさと動き始める。
生徒達がほとんどいなくなったこの頃に、僕は祓い屋としての仕事を始めるのだ。
ふと、僕の横を飴の袋を持った一匹のもっけが通りすぎた。
もっけを視界に入れたとたん、思わず霊刀を鞘から引き抜きそうになって、慌てて深呼吸をする。
本当なら今すぐにでも祓いたいところだけど……、姫には嫌われたくないしな。
我が家の長女である姫こと、てぃあらは本当にお姫様のような存在だ。
中等部3年生である弟の光も可愛がっている。
そんな愛しい妹がペットに選ぶほど大好きな怪異であるもっけの一匹を、僕自身の手で祓ってしまうわけにはいかない。
愛らしいあの顔を、涙で歪ませてしまうことになる。
もっけだけは見逃してあげよう。
だが……。
「君は何をしているのかな?」
くるりと振り向くと、「この世の終わりだ」とでも言いそうな顔で七番が硬直した。
青い顔で目を見開いて、小さな声で尋ねてくる。
「いつから気付いてた……ンデスカ?」
慌てて敬語に直す七番を見て、ふと感じたことがあった。
──可愛い。
そんな感情には気付かなかったふりをして、僕はニコリと微笑んだ。
七番の腕には、教科書やノートが数冊と弁当箱が抱えられていた。
「手に持っているそれは、君が犯した罪の証拠?」
「え?いや、違……イマス!俺がやったんじゃないんだってば!」
「ふーん」
僕は親指と人差し指を顎にあてた。
七番が相変わらず冷や汗を流しながら、ぎこちない笑みを浮かべた。
「もっけが持ってきちゃったんだ。ヤシロにウワサは変えてもらったんだけど、物を盗むショウドウは抑えきれないみたいで……」
七番がじりじりと後ずさる。
チラリと弁当箱に目を移すと、まだおかずやご飯が詰められているままだった。
「教科書やノートはまだ良いとして、まだ完食されていない弁当箱をこの時間に回収して、明日持ち主の元に戻るっていうのはどうかと思うけど?」
七番はう゛っと息詰まる。
「しょーがないでしょ。俺がやったわけじゃないんだから」
そうやって恥ずかしそうにそっぽを向いた。
──照れ屋なところ可愛いな。
今度は完全に脳裏に届いてしまった。
この僕が……、祓い屋である僕が、怪異の七番のことを「可愛い」?
そんなこと、地球を一周したってあるはずが無い。
いや、あると信じたくなかった。
怪異なんてゴキブリと同じような存在で、僕は怪異が大嫌いで……。
「あ、あの、大丈夫?」
僕より背の低い七番が、僕の顔を少し心配そうに覗き込んだ。
その瞳と目が合ったとたん、心臓が大きく跳ね上がったように感じた。
僕は180度体の向きを変えて言った。
「今回は見逃してあげるよ。あんまり早く祓っちゃうと、光が悲しむからね」
「え、ど、どうも……?」
七番が僕の方を気にしながら去っていくと、僕は大きくため息をついた。
「はぁ~……」
──「あ、あの、大丈夫?」
七番のあの顔を思い出しただけで顔が熱くなる。
窓の外を眺めると、少しずつ夜の帳が下りてきていた。
七番に抱いたあの感情の名前を何と呼ぶのか、僕にはまだ分からなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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