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✧ 百点満点 ✧
窓の向こうで、まるで空が涙雲を広げたように、花弁雪がぱらぱらと舞い落ちている。
冬の帳を降ろしたそれは、衾雪となって広がり、歩く人々にとって寒さも相まって辛さが伴うものだった。
そんな中、春のような暖かさに包まれながら数十名の生徒は一斉に前を向いて勤勉実直に教師へ視線を留まらせる。
教師はよく通る低い声で名前を呼び挙げ続け、やがて、「|月居《つきより》」と少年の名前を口にした。
後ろで椅子が引かれる音がして、色素の薄い白肌に翠髪と海のように深く青い瞳の少年が席を立った。
月居|藍生《あいき》、冷静で物静かな印象があるものの、虚弱体質で休みがちではある。
しかしながら、全人類が羨ましいとでも言えるのか、“見たものを完璧に覚える”といった特性の能力を有している。
それを本人が鼻にかけているのかは分からない。時折、そんなものがあるのならテストなど無意味ではないかと思うのは藪であろうか。
だが、そんな能力があったとしても、一度くらい満点でないところを見てみたい。
いや、正確には彼に小テストの点数で勝ってみたいのだ。
横で藍生が教師から回答用紙を受け取り、席に戻る瞬間に点数をちらりと見やった。
『月居 藍生 50点』
頭の中で「勝った!」と天にも昇る気持ちで勝利に酔いしれた。
普段、100点満点の藍生が50点なんて、珍しいこともあるものだ。
自分の名前、呼ばれるのを今か今かと待って、ついに呼ばれた。
威勢の良い声で反応し、嬉々として教師の手から回答用紙を手にとった。
少ししわくちゃになった薄い紙に描かれた数字は『26点』。
横に『ギリギリ合格』と文字が記載されている。
頭の中が急激に冷え、思考が何にも結びつかなくなる。
つまりは頭の中が完全に真っ白になった。
その理解の遅い頭の先で瞳は点数の横の満点の数字をようやく認識した。
『26/50』
枠:質問
内容:“八色星団”の由来は?
読んだ作者の小説:(シリーズ全体)
好きな作者の小説:『オリキャラ小説』(シリーズ)
推しキャラ:無し
その他:
一周年、おめでとうございます。花雨様の作品は、オリジナルキャラクターに対して深い愛情が感じられ、まるで実在する人物であるかのような親近感を覚えます。
これからの更なるご活躍を、心よりお祈り申し上げます。