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こぐま はじめての冒険
長い冬眠から目覚め、春の森へと飛び出したこぐまは、毎日が新しい発見でいっぱいでした。きらきらと輝く新緑の葉っぱ、優しい色とりどりの花々、そしてどこからか聞こえてくる楽しそうな鳥たちの歌。すべてがこぐまをわくわくさせました。
ある日の午後、こぐまがお父さんクマと木の実を探していると、ふと、森の奥から小さな鳴き声が聞こえてきました。「ぴい、ぴい……」それは、助けを求めるような、か細い声でした。
「どうしたんだろう?」こぐまは好奇心にかられて、声のする方へ駆け寄りました。お父さんクマも、心配そうにこぐまの後を追います。
声の主は、木の根元にうずくまっている小さな鳥のヒナでした。巣から落ちてしまったのか、まだ羽も生えそろっていません。冷たい地面で震えるヒナを見て、こぐまの胸がキュンとなりました。
「お父さん、この子、どうしよう?」こぐまは、不安そうにお父さんクマを見上げました。
お父さんクマは、そっとヒナに近づき、匂いを嗅ぎました。そして、こぐまに優しく言いました。「大丈夫だよ、こぐま。この子の親鳥がきっと近くにいるはずだ。私たちがここにいると、親鳥も近づけないかもしれない。少し離れて見守ってあげよう。」
こぐまは、心配そうにヒナを見つめながらも、お父さんクマの言う通り、少し離れた場所から様子を見ることにしました。しばらくすると、どこからともなく大きな鳥が飛んできて、ヒナのそばに降りました。それは、ヒナのお母さん鳥でした。お母さん鳥は、ヒナを優しく見つめ、何か話しかけているようでした。そして、ヒナを背中に乗せると、ゆっくりと空へと舞い上がっていきました。
「よかった!」こぐまは、思わず歓声をあげました。
お父さんクマは、こぐまの頭をなでながら言いました。「困っている仲間を助けたいと思う気持ちは大切だよ。でも、時にはそっと見守ることも、優しさなんだ。」
こぐまは、小さく頷きました。新しい命が生まれる喜び、そして、困っている仲間を思いやる気持ち。初めての冬眠を終え、心も体もちょっぴり大きくなったこぐまは、また一つ、大切なことを学んだのでした。
楽しんでいたただけましたか?
読んでくれてありがとうございました