雨降る日にはさよならだ

私は雨が嫌いだ。 だから、今の梅雨の時期は最悪だ。 入院して半年。明日、私は退院する。 隣で寝ている夏鳥あんなは私よりも先に入院していて、余命が近づいているらしい。 「夢名、もう退院しちゃうんだー。短かったなー。」 「もうすぐだね。ていうか、すごい雨だね。もう、梅雨とかほんとに無理。」 「もーう。どんだけ雨嫌いなの？私は雨、嫌いじゃないけどな」 「え、なんで？」 「なんでって…。雨を見るとさ、私に似てるなーって。」 「あんなはどちらかといえば太陽じゃない？」 あんなが少し悲しそうな顔をして口を開く。 「太陽だったら、人生楽しかったよ。」 「私はずっと入院してて、人との関わりがないの。だから、傘で避けられる雨と似てるなって。」 「そっか…。」 「そろそろ消灯時間でーす。おやすみなさい。」 「おやすみなさーい」 いつもあんなとは長話してから寝るけど、今日はしないでどちらもすぐに寝てしまった。 そんな今日、なんだかものすごく嫌な夢を見た。 隣にはすごく苦しんでいるあんな。私は何故か寝ている。 「夢名、今まで、ありがとう。楽しかった。そして、さよなら。」 そこで目が覚めた。 「よかった、夢だ…。」 火曜日の朝。今日はすごく快晴だ。 早朝だったので、あんなはまだ寝ているかと思い、隣を見るとあんながいなかった。 「あれ、あんな？」 するとガラガラっと扉の開く音がした。 「あら、夢名ちゃん。おはよう。今日は早かったのね。」 「おはようございます。先生っ！あんなは！？」 先生は悲しそうな顔をして小さく口を開いた。 「あんなちゃん、先に旅立っちゃったみたい…。」 大粒の涙が溢れてきた。 「どうして…夢名ちゃんとのお別れに間に合わなかったのかしら…」 「今日は…すごく晴れていますね。梅雨は、明けたんですか？」 「え、あ！そうそう！なんだか急に梅雨が明けたとかなんとか！」 「そう、なんですね。」 「あと、あんなちゃんから、手紙が。」 「え？」 「じゃあ、私はそろそろ行くわね。荷物、準備したりしてて！」 手が震える中書いたのだろう。字が震えていた。 夢名へ たぶん私死んじゃう。私、本当は雨なんて嫌いだよ、大嫌いだよ。だって…私と似てるんだもん。私は雨みたいだけど、夢名ならきっと、いや絶対太陽みたいになれる！だって私の太陽だもん！！夢名の退院に間に合わなくてごめん。ゆなは、わたしのたいようだよ ありがとう あんな また大粒の涙が出てきた。 「私も雨なんて、大っ嫌いだよ。」