公開中
実力主義の世界で俺は‘大罪’を否定する
大罪。それは本来の異能とは異なった性質を持つ。
そしてそれは、キリスト教における‘七つの大罪’が基である。
元々の所有者は一人であったが、今は散り散りとなっている。誰に渡っているのかは誰にもわからない。唯一知っている者とすれば、発端である人物だけである。
発端--それは初代大罪所有者、七瀬 レイラ。彼女・・・・・・いや、彼は本来であれば普通の異能力者であった。しかし、偶然か必然か、“七つの大罪” というギフトを受け取った。
なぜ、死んだのにも関わらず、本人がそれをわかるというのか? それは‘強欲’によるものだった。‘強欲’の罪は、なぜか本人の霊魂に奥深く根付いてしまっている。
普通の人間に、なぜこれほどの異能が宿ったのかは未だ解明されていない。
そして、その‘大罪’ は世界に知られてしまった。・・・いや、知らされてしまったのか。レイラの手により。
ちなみに俺は何も持ち合わせてはいない。いや、異能はある。だが、‘大罪’は持ち得ていない。
そんな俺は現在、虐められている。
「ぷっ」
口の中に溜まった血を吐き出す。
目の前の光景に反吐が出る。実力主義とはいえ、こうも弱者をいたぶるか。
「余裕ぶっ込いてんねぇ?」
正面にいる地味に体格のいい男が、そう言いながら殴りかかる。
「がはっ」
もろに腹に喰らったことにより、痛みが走る。あぁ、めんどくさい。
「おい、お前ら! もっとやれ!」
正面の男が仲間に呼びかける。
はぁ、と俺はため息を吐く。争い事は嫌いなんだよな。
一度俺は起き上がり、目の前の奴らを一瞥する
こいつら、そこそこの異能は持ってる癖して弱い者虐めをするか。
俺も虐められるだけは飽きてきた。
少し、お灸を据えてやらねぇとな。
「はっ、なんだ? やる気か?」
目の前にいる男は、挑発する様に言う。
少し、そいつに対して拳を放った。瞬間、そいつは弾き飛ばされた。
思わず笑みがこぼれ落ちる。
「はっ、こんな程度か? こんな俺をお前らは虐めてる癖して、雑魚なのか?」
そう言って挑発する。
すると、奥からリーダー格の男が姿を現す。
「よぉ、虐めっ子くん」
「威勢はいいな。だが、いつまで保つかな」
男は言い終えると、拳を放ってきた。しかし、単調だな。
すかさず俺は回避し、反撃をする。
「ぐっ」
俺は的確に、鳩尾に拳を打ち込んだ。だが、目の前の男は倒れない。
へぇ、やるじゃん。
「上等だ。本気でやってやるよ」
男はそう言うと、懐からナイフを出す。それを男の仲間達が止めようとするも、全て薙ぎ払った。
「んじゃ、ちゃんと相手してくれよ?」
俺は首をコキッと鳴らす。
それが合図となり、お互いに間合いを詰める。
「踏ん張れよ?」
拳を固め、俺はそれを腹部目掛けて放つ。それなりの威力だ。
肉が食い込む感触がした。
だが、男はまだ立っている。
「・・・タフだな」
「ま、タンクだしな」
タンクだとしても、俺の拳を耐えれる奴はそうそういない。・・・大罪を持ち得ていない限り。
「お前、大罪を持っているのか?」
「さぁな。言わねぇよ」
大罪を持っているなら話は別だ。
男が大振りの攻撃を放ってくる。俺はそれを受け流し、懐に潜り込む。
「本気だ。せいぜい耐えろ」
腹部に左手を翳して右拳を放つ。左手は威力軽減だ。
俺の右拳が左手に触れた直後、男は吹っ飛んでいった。
衝撃を抑えてこれか。まぁまぁだな。
しかし、これでやられるか。大罪は持ち得ていないようだな。残念だ。
男の仲間に対し、俺は言い放つ。
「お前ら、解散だ。やられたくないならさっさと帰れ」
言い終えると、仲間たちはやられた奴を抱え立ち去った。
あぁ、疲れた。
そう思いながら俺は帰路についた。