公開中
砕けた恋心
私には親がいない。
中3の終わり頃に交通事故でいなくなった。
私はもうすぐ高校生だったから、そのまま一人暮らしをする事になった。
羨ましかった。親のいる人たちが。
どんどん卑屈になっていく私。
私のことが嫌いな私。
普通に生きられない私。
そんな暗闇の中にいる私に手を差し伸べてくれたのは、一個年下の伊織だった。
「セーンパイっ。」
「どうしたの、伊織。」
帰りのホームルームが終わり、帰宅部の私がそそくさと帰ろうとしていると、伊織がはなしかけてきた。
いや、正確に言うと、待ち伏せしていた。
「一緒に帰りません?」
初めての頼ってくれる後輩で、私はつい頷いてしまう。
彼女に甘えてしまっている自分がいた。
彼女を好きだと認める心が、私の何処かに確かにあって。それを口にだせないもどかしさが、最近の私を支配していた。
この思いを口にしたい。だけど、今の関係を終わらせたくなくて、ただただこの幸せな時間を堪能することだけが、私にできる唯一のことだった。
学校にうまく馴染めない私に、彼女は大丈夫だと笑う。
彼女がそう言ってくれるだけで、救われた気がした。
「先輩?大丈夫?」
つい考え込んでしまい、しかめっ面になっていたようだ。
伊織が心配そうに覗き込んでくる。
顔が近くて、赤くなる。
それを隠したくて、私は顔をそらしてしまう。
「伊織~!」
遠くから彼女を呼ぶ声がする。
垂れだろうと顔を上げると…
「あっ!空!」
嬉しそうに手を振る伊織が見えて、次に空と呼ばれた男子が手を振り返すのが見えた。
「私の彼氏なんです。」
照れながらそう告げる彼女は、残酷なまでに美しかった。
バットエンド書いてみました!