公開中
バトルドーム第一話(?)「鹿、バトルドームを始めた話」
バトルドーム(と思しきもの)に、鹿がおりました。
この鹿、なんとなくマラソンしておったら、謎のドアに入り、そこでバトルドームと称する異空間の一室に出たのです。
部屋のデザインを観察すると、布団と机とアイパッド以外にはなんもない質素極まりねえ部屋でした。
そして鹿は、やっぱ帰ろうかなと思い後ろを見ます。すると、
「行きのドアなくなってんじゃん!」
そう、鹿はこの謎空間に閉じ込められてしまったのです。
部屋の出入り口って感じのドアがもう一個あったんで、そこを開けます。
少なくとも出口じゃねえってことがわかり、鹿は失望を新たにドアを閉めました。
いきなり消えなかった方のドアが開きました。
「こんにちは。バトルドームの新たな利用者様で?」
入ってきたのは謎の(スマブラのそれのような)ロボット。その質問に、鹿はこう答えます。
「ちょっと何言ってるかわかんない」
「さすが鹿の脳d」
ロボットの顔面に剣が撃ち込まれ、ロボットは部屋の外にバーストします。
「そういうわけで言ったんじゃねえ!質問がいきなりすぎるんだよ!」
怒鳴り散らす鹿の前に、ロボットは平然と
「これがバトルドームの説明書です。スマブラのオンラインマッチだと思ってください。」
説明書(エピローグ前書き)を読んだ鹿は、
「何だ、それなら参加するわ。あと、レストランとかはあるんか?」
「ありますよ、しかもタダでね、それと、あなたの利用者番号は1168です。しっかり覚えといてや」
「それは置いといて早速バトルだぜ!」
鹿は闘志を燃やして叫びます。
「そんならこのボタン押してくださいね」
ロボットはボタンが木の板に付いただけのようなアイテムを鹿に渡します。鹿がそれを押すと、たちまち視界がブルーアウト。さながらロード中といった感じのローリングアイコンを相当長い間見せられたあと、森林にテレポートしました。
「ここはバトルステージか?」
と、
**「バトル・スタート!」**
どこからとも無くおっさんの声が響き、次の瞬間前方から馬鹿にならねえ轟音が迫ってきます。
「ん?」
轟音はさらに大きくなり、次の瞬間眼の前の木がなぎ倒され、間から**熊**が迫ってきたではありませんか!
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
鹿は絶叫し、慌ててカウンターの構えを取ります。鹿は本能の上で、熊にアホみてえな強さの恐怖を感じるようにできているのです。その影響で剣が震えたためか熊の剛腕は一瞬にして剣をへし折ります。
「わああああああああああ!!!!!!」
鹿は本能で逃亡を図ります。木々は熊の進撃によって倒され、隠れる場所は多くありません。鹿はそんな残る森を駆け回り、必死に走ります。熊は野生のそれとは一線を画すスピードで、その僅かに残る隠れ場所を破壊しつつ、鹿めがけて進撃します。
広いステージの木々はしかし、逃亡と追跡による破壊によりことごとく倒れました。邪魔者を一切排除した熊はギアを上げて突進します。
もう逃げ切れんと思った鹿はタイミングを合わせて急停止キックを見舞い、ワンチャンを狙います。
しかしそのキックも普通に耐えられ、ブチギレた熊による本気の拳を鹿は顔面に喰らいます。
「ブエエエエエエ!!!」
「die」
鹿のなっさけねえ悲鳴に対し熊はこうつぶやきます。どうやら欧米産のようです。
そして鹿は恐ろしい速度でぶっ飛び、地面に落下。熊はふたたびその後ろをつけ、追撃の百烈マッハパンチが炸裂。
鹿はさらなる飛翔を見せ、壁に大激突。次の瞬間には熊はジャンプし、飛び降り旋風脚を食らった彼は地に埋没します。
「I'll kill you in 10 seconds.」
熊はそう言いながら超速百烈アームハンマーを食らわせ、特大降龍拳を当て、ギャグ漫画のごとく負傷した鹿を掴んで自身は高速回転、竜巻旋風剣に巻き込んで粉塵に帰しました。
ちなみにセリフからここまで3秒の出来事です。
鹿の粉を地に振りまいて勝利の叫びを上げた熊ですが、次の瞬間その体は閃光に消えました。
**ドガァァァァン!!!**
爆発が起きました。とっくのとうに死んでいる鹿はともかく、熊はボディーを完全に焼き尽くされ、炭素の彫刻と化しました。
「鹿は武器が離れると爆散する」という法則がここで働き、熊を地獄送りにしたのです!
こうして、鹿と熊は相打ちになりました。
かつて森であった風景を一瞬の沈黙が多い、次の瞬間には何百人分もの絶叫に近い大声が大地を揺るがしました。
「な、なんと鹿、あの無敗の熊を破壊したあー!」
と、おっさんの絶叫。次の瞬間にはかつて鹿であった粉に向かって拍手喝采が巻き起こりました。
実はこの熊、究極拳法を用いて100連勝を達成した、猛者中の猛者だったのです!
マイクラの如きリスポーン制度で、寝てもいないのに自室のベッドに送られた鹿。
「ああもう嫌だ!帰る!」
そう言ってなんも考えずドアに突撃すると、出た先は三つのドアに別れた場所。
『レストラン』
『集会所』
『待ち合わせ』
最初に見たときもそうでしたが、出口がありません。
「おのれロボット!もっぺん会ったらしばき倒してやる!!!」
怒り狂った鹿は、説明書を手に取り投げ捨てます。と、説明書は恐るべき強靭さで衝撃を耐え、ある面を開いて鹿の前に来ました。
「何だ?」
『バトルドームの出入り券を得るためには、10回戦闘する必要があります。今は一回。あと9回。頑張れ!』
**「ア゙ア゙!?ふざけんな!チクショーメー!!!!!」**
鹿の絶叫をよそに本は地へと舞い戻り、テメエは何も見とらんでとばかりにしています。
その体に蹄が降り注ぎます。
しかし無駄に終わりました。鹿の蹄が粉砕し、強制的にリスポーンさせられたのです。
「おい!勝手に殺すなや!fack!!!!」
そして、鹿は気分を紛らわすべく布団にダイブしました。
その頚椎が偶然にも破損し、飛び込むまでもなくリスポーン。これでは寝るに寝れません。
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
鹿は絶叫し、疲れ、やっぱり寝ました。
めでたくなし、めでたくなし。