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ep.5 初任務後にはブラックコーヒーを。
表現が微グロかもです!
すみません...
凛都の目の前でシアンが弾け飛んだ____
シアンの鮮血と身体の数々が凛都の頭上に降り注ぐ。
--- 遅かった。 ---
後一歩速ければ、シアンは弾け飛ばずに済んだのか。
いや、おそらく凛都が追いついても、シアンは自分の意思で肉壁となっただろう。不死に等しい身体と頭ではわかっていても、身体が追いつかない。
血の匂いが鼻腔をくすぐり、目の前にあるシアンの腕が脳内を刺激する。
突如、シアンの下半身と思えるものから、ぐちぐちとお腹が腕が頭が、身体が生えてくる。
それは想像を絶するもので、少なからずもショックを受けるものだった。
周りには異臭が漂い、その匂いと光景で吐き気を催す。
気持ち悪い____そう思ってはいけないが、反射的に身体が嫌悪感を抱く。
そして、シアンが復活を果たした。もちろん、服は破れたので上半身は半裸になっていた。
シアンは微笑み、凛都に声をかける。
「大丈夫でしたか?服が破けていますね。お見苦しいものをお見せしました。死人は出ていませんか?」
シアンは掠れた声ながらも、他の人の心配をしている。自分が犠牲となって倒れたのに嫌悪感を抱いてしまった。そのことに凛都は罪悪感に駆られる。凛都は震える声で答えた。
「死人は出てない。0だ。」
そう言うとシアンはヘニャっと微笑み、
「そうですか、ならよかったです。」
シアンは眠るように倒れた。
---
シアンは病院に運ばれて、様子見のため1週間の入院することとなった。
原因は特異体質だ。あれだけの回復をすると、強制的に意識がシャットアウトすると特異体質専門医からそう教えられた。
凛都はお見舞いに行くことにした。
シアンの入院している個室に入ると、シアンは点滴につながれていた。
「わざわざご足労いただき、ありがとうございます。大丈夫ですか?ちゃんと自炊とか片付けとかしてますか?」
シアンは相変わらずだった。
「ちゃんとやれてる。俺は子供じゃないんだぞ。少なくとも、お前よりは年上だ。それよりか自分の心配をしろよ。病状はどうなんだ?退院はできそうか?」
「そうですね。少し外で話しませんか?」
シアンは落ち着いた声色でそう答える。
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凛都とシアンは談話室へと足を運ぶ。
「僕のいる部屋少し薄暗くてですね。ここの談話室に時々日向ぼっこに来るんですよ。ほら、ここです。僕のお気に入りの席です。」
シアンが指した席は観葉植物の置いてある、空に近い、日当たりの良い席だった。凛都とシアンはソファに座り、シアンは穏やかな声で話し始める。
「回復しているところ見ました?」
凛都は思わず息を呑み、そっと目を逸らす。シアンは鋭い目を凛都に向け、冷酷な声で話す。
「無反応は肯定と受け取りますよ。」
凛都は黙っているより素直に言う方がいいと感じた。シアンを傷つけないために。
「......すまない、見た。」
そう言うと、シアンは顔を曇らせる。やはり、アレはシアンにとって辛いものだったのだろうか。
「本当にお見苦しいものをお見せしました。気持ち悪かったですよね。自分でも分かっています。あんなの人間じゃないって...。本当に、ごっ...ごめんなさい。」
シアンは顔を覆い、ガグガクと震え、許しを懇願しているように見えた。人を危険から守ったのに。なぜ、謝るのだろう。一体、何がシアンをそうさせるのだろう。
「そんなことない。お前は人を危険から守ったんだ。そのために特異体質を使ったことを謝る必要はない。おかげで、お前も他の戦闘要員が誰1人死ななくてよかった。こちらこそ、すまない。後方への配慮が足りず、お前に苦しい思いをさせてしまった。本当にすまない。」
シアンはそう言うとホッとしたような顔になり、にこりと微笑む。シアンの目には少しの涙が日光に反射し、きらりと光っている。それは、嬉し涙なのか悲しみの涙なのか凛都にはわからない。
「お互い様ですね。正直、びっくりしました。気持ち悪いって言われることを覚悟していたのですが...。あなたは他の人と違って優しいですね。」
悲しそうな表情をしながら微笑み、そう言う。
まただ。また、あの時のような表情をする。
それを見た凛都は自販機へと足を運び、1つの缶コーヒーを買う。それをシアンへ投げ、シアンはキャッチする。シアンは不思議そうに凛都と缶コーヒーを交互に見つめる。
「どうしたんですか?急に。」
「やる。感謝の気持ちだ。俺からの厚意だ。ありがたく受け取っておけ。この前みたいに拒否すんなよ?」
シアンはこくりと頷き、嬉しそうに微笑むと、缶をあける。
プシュと缶が音を鳴らせ、シアンがそれを飲む。
「...**ふぇ!?**何これにっが!?ってこれブラックコーヒーじゃないですか!何するんですか!感心した僕がバカでした...」
シアンは顔を真っ赤にさせ、ぷりぷりと怒る。それを見た凛都は面白おかしく笑う。
「クククッ。お前はそこら辺の"ガキ"とは違うんじゃなかったのか?あぁ、"ガキ"だから、ブラックコーヒーも飲めないのか。それじゃあ、オトナになれないな?子猫ちゃん?」
シアンは顔を真っ赤にし、悔しそうに歪める。
「ふんっ。バカにしないでください。これくらい、一気に飲めますよ!__うぅ、やっぱり苦い__」
そう言いつつも、勢いよくしっかりと飲み干す。そんな可愛い姿を見て、凛都は微笑ましく思う。
「ぷはぁ。どうですか!全部飲みましたよ!これで僕はガキではないんですよ!」
「クッ。**アハハッハーッ!**」
凛都はひいひいと大声で笑い始める。シアンは真っ赤に顔を染め上げ、目に悔し涙を浮かべる。
「なっ、何がおかしいんですか!笑わないでください!」
そう言い、凛都をぽかすかと叩き始める。力もあまり入っておらず、ぽこぽこと効果音がついているようだった。
それさえも凛都は愛おしく、笑いが抑えきれない。
「もぅっ!やめてくださいよ!」
2人の間には、穏やかな空気が流れていた____