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野薔薇の妹
我は|紅呂野薔薇《あかいろのばら》だ。
幼い頃、我の両親は、いろいろあって逮捕に行き着いたという。噂では、詐欺をはたらいたとか。ま、野薔薇っていう名前をつけた時点でお察しではある。
今、我は養子として|月花《げっか》夫妻のもとで暮らしている。戸籍上、我の名前は月花野薔薇。でも、紅呂の方がしっくりくる。
最近、母と父が外出していることが多い。今日も外出した。
そして、しばらくして帰ってきた。
「野薔薇ー、お風呂沸かしてくれない?」
「え、あ、わかったのじゃ」
なんでお風呂…と思いつつ、我はお風呂のボタンを押す。玄関に行くと、父と母、それから____
あまりにもかわいそうな少女。
小3ぐらいだろうか。ピンク色の髪の毛はボサボサで、のびきっている。衣服こそ清潔なものだったが、白いシャツにズボンという、個性が皆無な出で立ち。
見たことある。紛れもなく、我がいた施設の服装。
我は両親が逮捕された後、施設送りになった。1ヶ月ほど施設にいて、それから月花夫妻にもらわれた。
「沸かしたのじゃ。…おぬし、なんという名前じゃ?」
__「……|桃木、椿《ももき つばき》…」__
かすれそうな小さな声を、びくびくしながら言う彼女。
「今日から、野薔薇の妹よ!」
桃木椿。この家には月花と紅呂、桃木という3つの苗字で構成されているのか。
「よろしくなのじゃ。部屋は我と共同で使ってほしいのじゃ、布団はどうする」
「お客さん用のがあるから。パーテーションかなんかで仕切り作ろう」
うんうん、といろいろ決めていった。
これから、我に妹ができる。
「よろしくなのじゃ」
「…うん」