公開中
もう空はオレンジ色
お待たせしました。読み切り②出ました。
楽しんでもらえると嬉しいです。
小学校の帰り道、私は片手にピンク色のおさいふを握りしめて駆けていく。
毎週火曜日、行きつけの駄菓子屋でおやつを買って帰るんだ。
友達も一人しかいないけど、私には家族と駄菓子屋のおばあさんと一人きりの友達がいるならそれでいい。そういえば、昨日は「タイムマシンを作ってみたい」って言ってたっけ。あの子とは妙に気が合うんだ。でも、他のクラスメイトたちはいらない。みんな私の言うこと、わかってくれないもの。
「空に浮かぶカニ、星々のダンス…あと、真っ赤なネズミ。あとは何がいい?」
普通のことだもん。私が描きたいもの描いたらみんな、「へんなの」「不思議」って言うの。いいもん。わかってくれなくてもいいもん。
私は駄菓子屋でお絵描きをするよ。
今日も来週も、おんなじことの繰り返し。赤いランドセルをガタガタ揺らして、青い空に囲まれた道を走ってく。
「…あれ?」
ふと、足を止める。
「こんなところに、お店なんてあったっけ?」
そこには見たことない、綺麗なお店が立っていた。どことなく、駄菓子屋に似てるかも。
駄菓子屋に行くはずだったのに、自然と足がそっちに運ばれてく。奥のカウンターには、綺麗なお姉さんが一人立っていた。なんだろ、どこかで見たような。そうでもないような。お母さんの顔の方が見慣れてるかも。
「こんにちは、小さなお客さん。」
お姉さんが話しかけてきた。お店の中を見回すと、いろんな絵が飾ってあった。
透明な帽子、紫色のみかん。北極に住むチーターに、海の中の人間。なんだか、親近感。
どうしよう。ちょっと、欲しいかも。
「何か気になった絵はある?」
お姉さんの方を見て、あ、と声を上げた。お姉さんの後ろに大きな絵…とても素敵な絵が飾ってあった。
「お姉さん、あれは?」
あ〜、と渋い声を上げて、お姉さんは言う。
「ごめんね、お嬢さん。これは売ってないんだぁ。私がちっちゃい時に描いた絵なんだよ。」
へ〜。なんだか妙に引き込まれる不思議な絵。他にはないような色使い。なんか、デジャヴ。
「ね、お嬢さん。多分、君が今持ってる金額じゃあ、ここの絵は買えないかもね…。」
そこらへんに置いてある絵の値札を見たら、私が一年分くらいかけてやっと手の届くような値段が書いてあった。確かに、これは無理だな。
「でもね、お嬢さん、きっとまた会えるから。その時にもう一回、今度はお金いっぱい持ってきてね。そしたらきっと、買えるから。気に入った絵を今のうちに見つけておくんだよ。」
「…うん。ありがとうお姉さん。またね。」
お店にたった10分くらいいただけなのに。もう、何時間もいたみたい。不思議なお店…。
ドアをギィ、と開けた瞬間、いろんなことが頭に入ってきた。
あのお姉さん、私と顔が似てる。それに、なんで持ってた金額を知ってたんだろう。
あのお店は、私が好きな駄菓子屋によく似てる。
あの絵たちは、私が今まで描いてきた絵とそっくり。
なにしろ、あの大きな絵…。私が今度コンクールに出すために描こうと思ってた絵に似てる。と言うか、考えてた下書きとそっくりおんなじだ。
きっと、夢でも見てたのかな。
あ、そうだ、財布忘れたーーーーそう思って後ろを振り向いたら、
そこには、広々とした空き地と、ぽつんと落ちたピンク色のおさいふだけが残ってた。
「ーーまさか。」
ひょい、とピンク色のおさいふを拾い上げると、私は空に囲まれた道を走っていった。
帰ったら、絵を描こう。考えてた、とびっきり素敵な絵を。
もう空は、すっかりオレンジ色に染まっていた。
ちょっと長めに書いてみました。考察とかのファンレターお待ちしてます。
ではまた👋