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好きになった #3
月曜日が入学式。火曜日は友達ができた日。そして今日は水曜日。
昨日、ネタ枠に入った主人公は今日もいじられそうですね。
しかし、その手前にある出来事が…タイトル見たら察しがつきますよね。
ー朝の電車ー
岸部なのに岸田なんて、ひどい間違え方をする先生だ。どーせ、このネタをきっかけにいじってくるやつがいるんだろ?昨日までなんとも思わなかった電車からの風景も、少しどんよりして見えた。マインの交換が殺到した昨日の放課後、その場まかせに交換したが、それは間違いだった。察しの通り、マインでもいじられっぱなしだった。
「おはよ」
「あ、根崎。同じ電車に乗ってたんだな。」
「2個前の駅からね。いつ声かけよーか迷ってたら結構すぎちゃった。」
ん?それはどういう意味で捉えたら良いんだ?
「だって、蒼汰くんすっごいくタメいきついてたんだもん。話しかけにくいじゃん。昨日のことで悩んでるかなーとか考えてたりもしてたけど、大丈夫?」
そーゆうことかい。期待するなアホ。
「マインでいじられっぱなし。悲しくなってくる。」
「うわー。想像してた以上に深刻化してた。」
「そうなんだよ。俺の高校生活に傷はつけたくなかったけど、もう手遅れだな。」
ふと思った。俺のことめっちゃ心配してくれてるじゃん。高校生活には傷はつけたくないとか言ったけど、根崎という存在によって揉み消さている。え、俺、根崎が好きなの?
「大丈夫…?すごい目が開いてるけど。疲れたなら座れば?」
「いや、大丈夫。」
「本当に疲れてるね。ストレスからくる病気とかあるから気をつけてね。」
なんて優しい子だ。ただ心配だけをして、優しい言葉をかけてくれる。
「ありがとう。あ、次で降りる駅だ。降りれる?」
俺が聞いたことに大きくうなずいてくれた根崎は、歩こうとした瞬間にこけた。
「あ、ごめん。申し訳ないんだけど手、貸してもらっていい?」
突然のおっちょこちょいな行動に笑ってしまった。だが、降りる駅なので素早く手を差し伸べた。恥ずかしそうに俺の手をとる根崎は可愛かった。あぁ、好きだ。会って三日しかたたない、でも好きだ。
ー学校ー
あの後根崎は登校したが、「擦りむいた足、保健室で見てもらう。蒼汰くん先行ってて。」と言い残して保健室に行ったっきり帰ってこない。
「岸田だー?きっしだー」
好きと意識しだした途端、いじられてもどうってことなかった。案の定、学校に行ったらいじられたけどな。
「岸田じゃなくて岸部な?中田。」
「お前さ、それはわかってるけどよ…朝、鈴と登校してるの見たぞ。」
「あー…ええええ!?」
思わず変な声が出てしまった。その声を漏らさないよう片手で手を抑えても、遅かった。
「そりゃ、同じ学校なら皆に見られるだろうよ。」
恥ずかしい。根崎はそれが嫌だったから保健室に行ったのか?大した擦り傷にもなってなかったし。
「たまたま会っただけだよ…」
「蒼汰は鈴のこと好きなんだ。」
「うー…ええええええええええええええええええ!?」
今度は本当に抑える気もなく、大声で叫んだ。クラスの皆に注目されても、気にしない。だって、それ以前の驚き(?)が目の前にあるからだ。
「いや、焦りすぎ。はははは」
「あ、いや、その。いきなりそんなこと言い出すから。」
「だって、鈴の席ずっと見てるし。落ち着きがなかったんだもん。」
そうだ、根崎の席顔見してた。いつ来るんだろう、大丈夫かなとか思ってた。もう中田にバレたなら言うか。他の人に言わないと思うし。
「今日の朝気づいたんだ。好きなんだーって。」
「俺は屋上の時から好きだと思ってたけど。」
屋上のときは好きじゃなかった。特に意識もしなかった。友だちができて嬉しい、そんぐらいだった。多分。
「えーと、誰にも言うなよ?中田だから言ったんだぞ。」
「言わない言わない。ま、片思いは苦しい事あるかもしれないけど、頑張ってな。」
ー放課後ー
結局、クラスに来ることがなかった根崎。保健室に行って、根崎のことを聞いてみた。
「あの、根崎は…早退しましたか?」
「根崎さんは朝にね。あ、もしかしてあなたが岸部くん?伝言預かってたの。」
「え?」
「朝から体調が良くなかっただけだから気にしないでって。」
体調が悪かったんだ。だからコケたのに、それを笑ってしまった。申し訳無さで胸がいっぱいになった。
「わかりました。ありがとうございます。」
下駄箱に向かう途中、昨日ぶつかってしまった先輩が前から歩いてきた。
「あ、あの。」
すれ違うときに声をかけたので、驚いている。
「昨日ぶつかってしまったものです。昨日はすみませんでした。」
「あー、大丈夫だよ。私は忘れてたから。」
苦笑いで「そうですか」と答えると、急に自己紹介をしてくれた。
「私、2年生の指原 華乃(さしはら かの)。君は1年だよね?」
「はい。1年の岸部蒼汰です。」
「あれ?岸部って…」
そう、先輩と同じ学年には俺の兄ちゃんと姉ちゃんがいる。しかも一卵性双生児。男女の一卵性双生時は稀だ。とても珍しらしいそうだ。
「そうです。双子の兄と姉がいます。」
「私、美琴(みこと)と真琴(まこと)と仲いいんだよ。」
美琴が姉で真琴が兄だ。
「いつも兄と姉がお世話になっています。」
「そんなことないよ。あ、もう時間だから行くね。」
お辞儀を軽くして走っていった指原先輩は、ポニーテールがよく似合うなと、後ろ姿を見て思った。
今日は根崎のことを好きだとわかった。先輩が優しいことがわかった。いい感じに高校生活進んで…る?
はい、これで終わりです。今回は登場人物多く出しちゃいました。
ぶつかった先輩は指原華乃(さしはらかの)。
蒼汰の双子の兄弟は、美琴(みこと)と真琴(まこと)です。
それでは、また今度!
※マインはラ◯ンと思っていただければ幸いです。