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最強魔導士は今日もひっそり学園生活
縦で読んだ方が読みやすいかもしれませんね。
大魔導士『神理の継承者』。
それは時に世界をも変える最強の魔導士の総称である。
史上最強の雷・天気操作術士のニーニャ、宵を統べる天才魔術士メイヤ、世界初の妖術を生み出した魔女ラン、世界の次の瞬間を認識する預言者ミアナ。
「神かぁ・・・」
それは僕から遥かに遠い存在だ。
最も、神を信じているからあんなに強いのだろうが。
この前といっても五百年ほど前の話になるのだが、廻雷の魔導士に、その強さの秘訣は何だ、と聞くと
───それって嫌味?
と逆に聞き返されたのだ。それも、冷酷な鬼のような形相で、だ。
そこからは全く彼女たちを見かけていないし、噂も耳にしない。
いつの間にか死んだのか。
だとしたら死に顔くらい見たかったな。
追加するが遺言も気になる。
あと血の量。打撲で死んだならそれは残念だが。
と、楽しい妄想から我に返ると、そこには頭から酷い血を流した無惨な魔導士たちが描かれていた。
彼女たちが血祭りを開催している最中、僕は一人でこんな不毛な時間を過ごしていたのか。
全くだ。でも、人間はそう簡単に暖かい場所から離れようとはしない。
───いや、簡単ではない。僕にとっては。
人間は勝手な生き物でもある、と聞いたことがある。とある知り合いの学者から。
そうと決まればこんな場所からさっさと───。
「ネル〜、起きた?」
部屋の外から声が掛けられる。
「ん〜」
とでも適当に返しておく。
「朝ご飯もうできたよ〜、あと、今日の遅刻は許さないんだからね。お父様からネルに話したいことがあるって」
は、今何と。
「へ〜」
と、また変な奇声でも返しておくが。
「君に、ゼアード帝立魔導剣士学園の首席をお願いしたい」
改まったようにきちんとした姿勢で男は告げる。
ディアルゲート・ゼアード。ゼアード帝立魔導剣士学園の学園長。剣の腕と顔はピカイチなのだが、魔術の腕は多分帝国一の最低だ。
治癒魔法が使えない奴はモテない。と、聞いたことがある。どこか遠い場所の風の噂で。
そんなことは置いておいて。
「な、な⁉︎ 無理ですよせっかくの入学式に全く見知らぬ生徒が堂々と代表として挨拶をしていたら皆さんドン引きですよ‼︎」
そう饒舌的にまくしたてる僕とは裏腹に、隣に座る少女、リーナ・ゼアードはまるで自分のことのように嬉しそうに煌めいている。
「ほ、本当ですかお父様⁉︎ そんな大役を・・・ネルが⁉︎」
「嫌ですよ‼︎ 絶対いじめられます‼︎」
意見が相反する中、ディアルゲートは考えるような素振りを見せる。
「今回の新入生の中で、首席獲得試験に合格したのは・・・」
そして、期待の沈黙。
「0人だ」
そして、驚きの沈黙。
「は⁉︎」
僕とリーナの声が重なる。──0人、だと。
「そこで、なのだ。君の魔力は無限だし、剣の腕も悪くはないだろう?顔でも貴族には張り合えると思うんだ」
それはないのだが。
「いいね! 学園のみんなを驚かそう!」
「そうだな。私なら、立場上編入生を首席にさせることなど簡単にやってのけることができる」
・・・。
「そうと決まれば早速!私も行く〜」
「お前は決まっていただろう」
「待って、それ、私が首席獲得試験に不合格だったことが・・・。」
「って、何、勝手に話を進めているんですか・・・」
「|金貨《報酬》は弾むぞ」
「やります〜!」
こうして金に釣られた僕は、呆気なくゼアード帝立魔導剣士学園に栄えある首席として編入することが決まってしまった。
***
「あれが首席? 信じられない」
「編入生じゃなくて、侵入生なんじゃないの・・・」
というような丸聞こえの面白い陰口が聞こえる講堂。
僕は、今日の朝結構頑張って覚えてきたダサ弱い挨拶文を適当に述べながら、呪眼(いわゆる透視)で学園探索をしていた。
夜は良い雰囲気になりそうな西洋風の廊下、学園中に張り巡らされた高等魔術結界。
寮はまあまあ豪華だが、部屋同士に接する壁が薄い。
「────私たちの〝最初の伝説〟を、ここから始めまひょ・・・あっ、始めましょう」
ちょっと噛んだ。が、笑顔は絶やさず。
それにしても、厨二的な挨拶文だった。三十度頭を下げてふらついて、また三十度頭を下げて、壇上を降りる。
ゼアード帝立魔導剣士学園は貴族の生徒が過半数なんですぞ!?
へえ、豆知識ですね。
おーい‼︎