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2話 A.I.D.A.と。
翌朝、午前10時。
ピーンポーン
数年以上鳴っていなかったチャイムが鳴った。
「…まじか」
美桜は重い足取りで玄関へ向かう。カチャリとチェーンをかけ、恐る恐る扉を開けた。
ガチャ…
ドアを開けると、目の前に居そうで居ない程よいイケメンの男性が、発光体を織り交ぜたようなスーツを着て立っていた。その目は、心なしか暗く見えた。
「初めまして。|A.I.D.A.《アイーダ》です。おはようございます。美桜さん」
美桜は一度扉を閉める。頬をつねってここがユートピアの中ではないことを確認する。
カチャ…
やっぱり居る。
「どうかしましたか?美桜さん」
美桜は諦めたように現実を受け入れる。
「はぁ…その名前で呼ぶなよ。女っぽくて嫌いなんだ」
「では、|m《エム》とお呼びしたらいいですか?」
「絶対駄目!」
A.I.D.A.はあらぬ方向を見つめている。呼び名を考えているのだろうか?感情が読み取りづらい。
「で?わざわざこんなとこまで何しに来たの?」
居た堪れなくなって美桜が少し強めに切り出す。
「あなたを本部に連れて来い。との指示を受けて来ました」
バタンッ!
勢いよく扉が閉められる。
「美桜さん?」
「絶対無理」
「美桜さんが部屋に閉じこもったら、mの正体をバラすと言え、と言われています」
「…」
「本部には最新のテクノロジーが集結しています。本部でもmは続けられます」
ガチャッ!
「ガチで!?警察本部のテクノロジーって…しかも、サイバー犯罪対策課でしょ…⁈」
美桜は何やら興奮してブツブツと呟いている。そこで初めてA.I.D.A.の感情が分かったような気がした。
「行きますか?」
「うぅ〜…い、行く…」
美桜は急いで準備をしに向かったが、持ち物は持ち物はほとんど無かった。そして、A.I.D.A.の陰に隠れるようにして一歩を踏み出す。
「ふぅ…よ、よし!」
声は、震えていた。
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美桜はしばらくあたりを警戒し、身を丸めながら歩いていたが、次第に慣れて来たのか、ポジションがA.I.D.A.の後ろから横に変わっていた。そんな時、美桜が口を開く。
「あの、さ、A.I.D.A.は…アンドロイド、だよね…?」
「はい。そうです。それがどうかなさいましたか?」
「あぁ…いや、やっぱ、そうだよね…」
束の間の沈黙。
「いや〜、俺、人間相手に話せるかなぁ?本部って人がいっぱいいるんでしょ?」
「大丈夫ですよ。私たちの仲間にも美桜さんのような人はいますから」
「そうかなぁ…?あ!てか、美桜って呼ぶのやめろ」
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「ここが…本部…?」
「はい」
そこは美桜の想像していたものとは大きく違っていた。今の時代、見ようとしてもなかなか見れない煉瓦造りの壁。大きさは中学校の体育館ぐらい。おまけにあたりには腰ほどの草が生い茂っている。
「心霊スポットじゃん…」
思わず美桜が声を出す。A.I.D.A.は先頭を切って歩き出す。そこには、しっかりとした獣道があった。