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3 話 .
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「……、もう隠しても無駄ですね、僕等の正体。」
人質として数万人を捕らえ、早十分。
SNSでは#マジックのライブで立てこもり事件 や #ライブ途中umbrella.登場 と言ったものがトレンド入りしているようだ。
警察も勿論来ており、出入り口を固めているみたい。
「ここのみなさん、そしてこの配信を見ている方たちへ告ぎます。」
その口元にはうっすらと笑みが浮かんでおり、朱元の行動には謎がありすぎた。
自分から正体をバラしにいく奴が居るかと問いたいものだろう。
ただ、今はそんなこと言っている暇はない。
全世界の者たちが、息を飲んだ。
「実は僕達_____。」
「 ”Star_LightMagic” です(笑)」
え?
と。
その冗談のような言葉で、全国民の体に衝撃が貫いた。
「嘘じゃないです、ちゃんと僕等ですよ、……ほら」
朱元が額の面を外せば、陰から見えたのは間違いなく______。
「”朱乃井悠”です(笑)」
挑発を取るような声で自身から名乗り出た 朱元。
「後は分かりますよね?」
朱元が視線を滑らせたのは、斗青。
「……どーも、”蒼乃希空”です」
青色のピアスを揺らせて、面を取った斗青。____いや、希空。
「はいはいどうも皆さん数十分ぶり~! 藤黄こと”夕世なな”だよ~」
元気さを含ませている声は、いつもならファンを魅了する武器のはず。
なのに今は、ファンを失望させる”|剣《つるぎ》”でしかない。
「あんたはうるさいんだよっ! ちょっと清紫は黙って!!」
「おめぇもうるさいんだよ桃華! お前こそ黙れよ!!」
桃と紫香。
双子として息ぴったりで、でもそれは”桃華と清紫”になると、二段構えの|矛《ほこ》となる。
「さぁさぁ、これでいいかなぁ?」
SNSのトレンドでは、#マジックまさかのumbrella.だった #マジック五人 立てこもり がトレンド一位にになりつつあった。
『悠さーん? 聞こえますかー?』
不意を衝く外からの声。おそらく警察だ。
拡声器やらなんかを使って、声を大きくしたのだろう。
「聞こえてますよ、警察さん」
配信カメラに向かって、返事をする。
___、_________。
斗青からの耳打ちで、僕は下舐めずりをした。
『人質は無事ですか? 全員生きてますかー?』
嫌らしい。
この声が、だ。
もう、こんな声はうんざりだ。
「嗚呼、無事でしたよ。”今までは”ね」
嫌味たっぷりの言い方をした。
これで良いだろ。
『!? 悠さん!? 今までとはどういうことですか!?』
「言いましたよねぇ? 無理に入ってきた場合、『人質の命は保証できない』、と。」
『んな!?』
「斗青から聞きましたよぉ、出入り口を壊して侵入してきたんですって?」
『__ぇ……、__』
警察から、こんな声が出るとは。
ただ、そんなこと気にしない。
近くに居た、バックダンサーさんを連れて来た。
体を押さえ、銃を構える。
等の相手は、怯えて声が出ないようだった。
『何やるんですか!! 銃を下ろしてください!!』
「んふふっ(笑) ちょーっと歩けなくなるだけですよ、それだけ。」
バンッ、と。
銃声が鳴り響いた。
それは相手の右太腿へと命中し、弾丸がめり込む。
「んぐぁっ!?」
「__間抜けな声、__」
そんな自身の独り言を置いといて、弾丸の補充をする。
『悠さんっ!!』
「あっれれー? 僕は朱元のはずだけどなー?(笑)」
軽く跳躍し、空を舞った朱元は、その銃口を配信カメラへと向ける。
「……では、みなさんへ問題です!」
朱元以外のメンバーが居ないこの場所は、人数の多さに釣り合わないほど静まり返っていた。
「何故、人間”以外”の者は愛を貰えないのでしょうか?」