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あの夏が飽和する
Hitokage
「ふぅー、今日は暑いなぁ」私、社毛野詠美は誰ともなくそう呟いた。夏が始まったばかりというのに、とても暑い。やはり、地球温暖化が関係しているのだ。「えーっと今日は、あ、部活がある。」私はサッカー部に入っている。小さい頃からサッカーをやっていて、中学生になってもやりたいと思って入部した。顧問もコーチもいい人だったし、何より私の小学校からの友達、青山麻理音も入っているから、サッカー部に入った。今は9月のインターハイに向けて、練習している。インターハイは選ばれた選手しかプレイできない。だからみんな必死で頑張っている。麻理音もそうだ、もちろん私も。でも2人とも選ばれたら、どこかに出かけようと思ってる。突然スマホからピロン🎵という音がした。麻理音から『今日も部活がんばろー!』と連絡がきた。はいはいと思いながらスマホをしまう。そうこうしている間に学校に着いた。下駄箱に靴を入れて、上履きを履き、更衣室に向かう。更衣室は誰もおらず、私1人部活着に着替えた。そして着替え終えると、部活開始5分前だった。まだ、麻理音は来ない。さすがにそろそろ来ないと部活開始に間に合わない。思い切って麻理音に電話する。1コール、2コール…と5コール目で出た。『もしもし麻理音?今どこ?部活後5分で始まるよ」だが、麻理音は話さない。「もしもし麻理音?大丈夫?」「詠ちゃん…」出た。だが、いつもと違うか弱い声だ。「もしもし麻理音?」「詠ちゃん、どうしよう…。昨日人を殺したんだ。」麻理音はそういっていた。
私は麻理音が言ったことが理解できず、呆然としていた。そして、我に返ると「もしもし麻理音、今から麻理音のうち行ってもいい?」と言った。そして私は部活着のまま、麻理音の家に向かい走った。
そして、思いっきりドアを開けると麻理音の部屋の前で泣いており、ひどく震えている麻理音がいた。麻理音は私が来ると分かり、安心したようで、泣きながら話した。「殺したのは隣の席のいつもいじめてくるアイツ、もう嫌になって肩を突き飛ばして打ちどころが悪かったんだ。もうここにはいられない、どっか遠いところで死んでくる、バイバイ」そういう麻理音に私は言った。「それじゃ、私も連れて行って」サイフ、サイフ、ケータイゲームをカバンに詰めて、いらないものは全部壊していこう。「あの写真も日記もいらない。」と言いながら麻理音は捨てていった。私はその捨てられた写真をそっとポケットの中に入れた。「本当についてくるの?」「うん、人殺しと(麻理音)ダメ人間の(私の)君と私の旅だ」そして私達は逃げ出した。この狭い狭いこの世界から。家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。もうこの世界に価値などないよ人殺しなんてそこらじゅう沸いてるじゃんか。「麻理音、貴方は何も悪くない、貴方は何も悪くない」
結局私達、誰にも愛されたことなんてなかったんだ。そんな嫌な共通点で私達は簡単に信じ合ってきた。
麻理音の手を握ったとき微かな震えもすでになくなっていて誰にも縛られないで二人廃線になった電車の線路の上を歩いた。どっかの家から金を盗んで、どこにも行ける気がしたんだ。今更怖いものは私達にはなかったんだ。額の汗も、私の落ちた眼鏡も。「今となっちゃどうでもいいさ、溢れものの小さな逃避行の旅だ。」
本当に死ぬつもりなのか聞きたくなってこう言った。わたしは麻理音を死なせたくなかった。二人とも生きようと言いたかった。
「いつか夢見た優しくて誰にも好かれる主人公なら、汚くなった私たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな」だが、麻理音はハイライトの消えた目で、私の甘い考えを一刀両断した。「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ、シアワセの四文字だってなかった、今までの人生で思い知ったじゃないか、自分は何も悪くねぇと誰もがきっと思ってる」ああ、麻理音は本当に死ぬつもりなのか、だったら、私に止める権利はない。
当てもなく彷徨う蝉に群れに水もなくなり揺れ出す視界に迫り来るう鬼達の怒号に馬鹿みたいにはしゃぎ合い「捕まえられるものなら捕まえてみなよ!」「アハハハ!」ふと麻理音はナイフを取った。「麻理音、何して…」「詠ちゃん、ここまで来てくれたの、私が死ぬのをやめさせるためでしょ?私と二人で死のうともしたんでしょ?でもごめんね。
でも詠ちゃんがそばにいたからここまで来れたんだだからもう良いよもう良いよ死ぬのは、私一人でいいよ」
そして貴方は首を切ったまるで何かの映画のワンシーンだ。白昼夢を見ている気がした。気付けば私は捕まって。麻理音、あなただけがどこにも見つからなくって貴方だけどこにもいなくって、そして時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎっていった家族もクラスの奴らもいるのに何故かあなただけはどこにもいない、あの夏の日を思い出す。私は今も今でも歌ってるあなたをずっと探してるのあなたに言いたいことがあるの麻理音。
九月の終わりにくしゃみして六月の匂いを繰り返す。あなたの笑顔は無邪気さは頭の中を飽和している。「誰も何も悪くない、麻理音は何も悪くないから、もういいよ投げ出してしまおう。」そういって欲しかったんでしょう。
ねえ