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#13
朝食を終え、それぞれが仕事の準備に取り掛かった後、ルドとレイラは二人でゴミを捨てにアジトの外へ出た。
道すがら、ルドはふと朝の騒動を思い出し、隣を歩くレイラに尋ねた。
「…そういえば、レイラ」
「ん?なしたんだい、ルド」
「お前の名前って、誰がつけたんだ?」
ルドの問いかけに、歩いていたレイラはぴたりと足を止め、振り返った。その顔には「どうしてそんなこと聞くや?」とでも言いたげな困惑と、わずかな動揺が浮かんでいた。
「あ、いや、別に言わなくても……」
ルドが言い訳を探して言葉を濁そうとした、その時。
「ザンカが付けてくれた」
レイラは淡々とそう答えた。
「は? ザンカに?」
「うん。“レイラ”って」
そう言うと、レイラは視線を遠くへと向けた。その瞳は、どこか悲しみを湛えているようでもあり、同時に懐かしい記憶を愛おしむようにも見えた。
「ザンカって、意外にセンスあんだな」
「そーそー。あぁ見えて、結構世話してくれんねん」
「まあ、実際自分でもその名前、結構しっくりきてんねん」
ルドが「どうして」と尋ねると、レイラは少し口ごもりながら答えた。
「さあ、過去の記憶はできるだけ無くしてるから、よう分からん」
「覚えてたとしても、僕の家系が“特殊”だったっていうことだけ」
「そんな家が嫌すぎて、自分でここへ堕ちた」
レイラはそこで言葉を切り、再び歩き出した。ルドも慌てて彼女に追いつき、隣を歩く。
「……その過去のこと、触れないほうがいいか?」
ルドの気遣わしげな声に、レイラは少しだけ頬を緩めた。
「…僕はあんま言いたぁない主義でな。気になんなら、ザンカに聞いたらええじゃろ? あの子だけは僕の生い立ち知っとるけん」
「…そっか」
🔚