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大人になるって
長めです汗
小学生になってから、褒められることが増えた。
できるようになったことが増えるたび、えらい。えらい。
テストで100点。
「すごい!」
跳び箱が飛べた。
「すごいね!」
友達がたくさんできた。
「すごいよ!」
何をしてもえらい、すごい、いい子。
そんな‘いい子’でいたくて、何にでも全力で、頑張ってた。
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中学生になってから、怒られることが増えた。
親からも、先生からも。
「静かにしなさい」「勉強しろ」「何にもできない子」
何でだろう。何をしても怒られるの。
私より下の子たちは何をしてもえらいのに。軽く叱るだけなのに。
「次からは気をつけようね」で済んじゃうのに。
笑顔が減っていく。口数が減っていく。
それと比例するように、理不尽に怒鳴られては心が苦しくなる。
誤魔化すように上手く笑えないから、学校での居場所も無くなっていく。
「あの子っていつも一人だよね」
「可哀想」
違う、そんなんじゃないのに。
「勉強しなさい」
ごめんなさい、今やるね。
「片付けなさい」
ごめんなさい、すぐやるね。
「早く学校に行け」
うん、行ってきます。
駄目だ、上手く笑えない。
ふとした瞬間に涙が溢れる。
そのたびに、大丈夫まだやれる、そう自分に言い聞かせて上を向く。
白い天井さえも、辛い。
目を開けているのが、辛い。
声が聞こえるのが、怖い。
心が、苦しい。
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大人になると、当たり前?
お母さんは、会社の人達と楽しそうにしてる。
でも私を見ると怒鳴り、忌み嫌う。
私はお母さんにとっての邪魔者?
お母さんが辛いとき、そばにいて支えたのは私だったはずなのに。
お母さんが笑ってるとき、一緒に笑ってたのは私だったはずなのに。
記憶が塗り替えられていくみたいに、どんどん過去がフラッシュバックする。
そこにいたはずの私が、弟に、妹に変わっていく。
あれ、私、なんのために頑張ってるんだっけ。
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もう、これで最期にしよう。
お母さんと笑った公園。
お母さんと手を繋いだ帰り道。
お母さんと過ごした家。
それらと逆向きに、まるでさよならをするように歩く。
同時に涙が落ちる。
涙なんて嫌いだ。
心が苦しくなる。
締め付けられるように、頭が痛い。
だからこれで最期なんだ。
さよなら、と言おうとした口が動かない。
喉がつっかえる。
手が震える。
やっぱり、死ぬのは怖いや。
これが、大人になるってこと?