公開中
クリスマスの宝物
⚠️"ディスレクシア"という障害が出てきます。
12月24日、世界中の子供たちがお手紙に願いを乗せて過ごす夜。
そんな夜の空に浮かぶ星のうちの1つには、その願いを叶える人々が暮らす一段と明るく輝くものがありました。
その星の名はキリスティア。周りは雲のようなもので覆われていて一面真っ白。そこには大量の包装紙やリボン、おもちゃにお洋服、お人形などが積み上げられています。そこで忙しそうに動いているのはサンタクロースの格好をした男女の若者たち。彼らは何億人もの子供たちからの要望に頭を悩ませながらも皆の笑顔のために働いています。
「あ~、づがれだぁぁ~…」
カラフルなプレゼントの上で項垂れる少女。彼女はベル=フィーナス。ミルクティー色の髪の毛をおさげにしてベルの髪飾りを着けています。
「おい、ベル、さぼるなよ…」
子供からのお手紙をしかめっ面で見ていた少年が言いました。
「ノエル…もう、何で私がサンタさんのお手伝いなんかしなくちゃいけないのよぉ」
「サンタさんはもう機敏に動けるお年じゃないんだ。…それに、俺らの願いを叶えるためでもあるだろ。つべこべ言わずにやれ。時間が無いんだ」
「辛辣~…」
そうしてノエルはまた手紙の読解に戻ります。
「~?これは…"や"か、いや、"か"だな…ブツブツ」
---
「終わったぁ…もう足がジンジンするよぉ」
ソリに詰め込まれたプレゼントの上でまたもやへたれているベル。
「今年は俺とベルでペアだ。さっさと乗れ」
ノエルはベルをソリから下ろして座席に座りました。
「やっと…来た!この時が!」
ベルはノエルの言葉を聞いた瞬間、一気に起き上がると目をキラキラさせながらソリに乗り込みます。
「じゃあ、行くよ」
「今回プレゼントを運ぶのは"日本"って所みたいだね。良い子が多いといいなぁ」
トナカイに繋がれたソリで目的地に向かってひとっ飛び。
「ここのアキトくんは大きなロボットで…ミキちゃんはお人形のお家…ユリナちゃんは足が速くなる魔法ね…そして…」
順調にプレゼントを運んでいきます。
そんな中、真夜中にも関わらず明るい光が溢れ怒声が聞こえるお部屋がありました。
「…あれ、タカヒロくん、夜遅くまで起きて大きな声で喋ってる…悪い子だなぁ」
プレゼントは"良い"子にしかあげてはいけない決まりです。
「お手紙もよく分からないし…この子は今年は無しかな…」
「…ちょっと待て。」
隣で冷たい目を向けていたノエルが急にソリを止めました。
「アイツの様子をよく見てみろ」
「ん~?」
お家の中でタカヒロくんはお母さんと喧嘩をしているようでした。
「やっぱり、"悪い子"じゃない」
ベルはノエルに怒った顔をして言いました。
「…いや、この子は"悪い子"じゃない」
「え?」
「アイツは、ディスレクシアなんだ。それで親と揉め続けている」
「え…、でぃす…れくしあ?何処かの星の名前?」
ベルは不思議そうな顔をして聞き馴染みの無いその言葉を何度も復唱しました。
「アイツは手紙に書いていたんだ。"ディスレクシアがなくなりますように"と。"それが一番のプレゼントです"とな」
「お母さんと揉めるのは"悪い子"じゃないの?」
ノエルは溜め息を1つついてから面倒臭そうに話します。
「何で親子の喧嘩で子供が悪いと決めつけるんだ。アイツの親は自分の息子がディスレクシアと信じずにずっとずっとアイツを攻め続けてるんだぞ。"何でできないの"、"皆、"良い子"だからやってるのよ"って。ディスレクシアは読み書きの障害だ。知的機能は問題ないから気づかれにくいんだよ…」
「…そんな」
「ベルは物事を単純化し過ぎだ。"悪い"なんて一方的に決められるものじゃない。子供たちの背景を理解した上で俺らは幸せを届けるべきじゃないのか」
ベルははっとしました。自分は子供たちの笑顔を見たいとこのお仕事を頑張っていました。綺麗にラッピングして要望に答えるだけに重点を置いて、子供たちの手紙の裏のことなんて一度も気にしたことがありませんでした。
「…ごめんなさい。大事なのは本当に子供たちを想うことよね…」
「いや、そういうことはよくある。俺もそうだったんだ。友人がディスレクシアと気づかずに彼の誕生日に小説を送ったんだ。そうしたら悲しい顔をされたから、つい…衝突してしまったことがある。それからそいつとは口を聞けてない」
「…知らなかった」
ベルはもう一度タカヒロくんの様子を伺ってから、"お母さんがタカヒロくん自身を大切にできる魔法"を選びました。タカヒロくんの望んだ魔法ではありませんでしたがベルはタカヒロくんがこれで幸せになることができると信じていました。
「タカヒロくん、メリークリスマス」
【コンテスト用記述】
作品のテーマ:全ての子供の願いが叶うクリスマス
作品の拘り :実際に存在する問題を用いてクリスマスの魔法をかけたこと
要望 :ずっと尊敬しております…。良ければネッ友になって頂きたいです。
お任せ欄 :なし
【あとがき】
私の友人にディスレクシアの子がいます。その子からこの障害を絡めた小説を書いて少しでも多くの人に知ってほしいと言われ、執筆しました。ご不快になられた方がいらっしゃれば本当に申し訳ありません。
初めての本格的な小説執筆で稚拙な所が多いと思いますが、少しでも楽しんで頂けていたら嬉しいです。