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お呪い 前編
私、「一宮」は小さな商店街でスイーツ専門店を開いている。ちまたではそこそこ人気の店で、テレビの取材も多数くる。だが、最近厄介なものができた。隣に引っ越してきた「二条」だ。彼も小さなスイーツ店を開いていて、最近どうしてもそちらの方に客足を取られてしまう。
その理由は二条の父親だ。父親はもともと海外で修行してたためもあり、とてつもなく料理がうまいのだ
憎たらしい。私はどうにかして店を閉店へ追い込もうとした。
だが無駄なあがきに過ぎなかった。お人好しの二条家族には関係なかった。
「一宮さんいつも話しかけてくれるなんて嬉しいな〜」
「父さん、今度お菓子をプレゼントしてあげようよ」
外へ出るといつもそんな会話が聞こえてくる。それが余計に私の神経を逆撫でた。
「憎たらしい、憎たらしい、憎たらしい、憎たらしい」
いつしか私はその言葉が口癖になっていた。
「カランカラン」
店のドアが空いた。外には一人の男が立っていた。顔は暗くてよく見えない。趣味が悪い服だなと思いつつ笑顔で接客をした。
「いらっしゃいませ〜!お好きな席にどうぞ〜」
すると男は軽くお辞儀をしてトランクケースからなにか取り出した
”お呪い札”とか書かれている。古い御札のようだ。
「おのろいふだ...?」
私がその札の名前を口に出すと男が立ったまま言った。
「ということは、あなたは”呪い殺したい”人がいるんですね」
私はどきりとした。まるで自分の心を見透かされたみたいで気持ち悪い。だがあることを思いついてしまった。
「隣の二条さんなら買ってくれると思うよ」
私にはこの札はゴミ同然だ。なら二条に売りつけてやろうと思ったのだ。我ながら天才的な考えだ。少ししょぼいが...
ふと店のドアが空いた。そこには帽子を深くがぶった男性がいた。
「すみませんまだ開店時間ではなくてなにか御用でしょうか?」
二条が声を掛けると、男はトランクケースを開けて札を取り出した
「おまじないふだ...」
そう呟くと男が優しい口調で言った。
「あなたは、心が綺麗ですね。この札をさしあげましょう」
男から受け取った札は淡い水色で真ん中に”お呪い札”と書いてあった。これには”不思議な力”がある。そう自分でも理解できた。
「さっそくこの札を”2枚”使って、効果をお見せいたしましょう」
すると札をとりだして自分に向かって唱え始めた。
「”お呪いお呪い”」
自分の体から何かが抜けていくのを感じた。
「おや、あなた呪われていますよ。効果はないみたいですが...」
驚いていると、男は順を追って説明してくれた。