ゾンビウィルスが全世界に広がってしまった【500文字】

僕らはなんとか重いシェルターの扉を閉めた。 「あぶな、かったわね」 この涙目の少女は、大学時代の同期だったユカ。 前にいたシェルターがゾンビに破壊されてしまい、なんとかここに逃げ込むことができた。 床も壁も泥で固められたこの部屋は、手作りの洞窟のようだった。 …僕らは無言でシェルターの物資を漁り始めた。 僕は冷蔵庫のようなものを開いた。 中は全く冷えてはいなかったが、少しだけ食料が入っていた。 乱雑に置かれた段ボールを漁っていたユカが、一瞬声を上げた。 振り返る。 ユカはどこか妖艶な笑みを浮かべ、なにか緑色のものを持っていた。 「ねえ、やっぱりここって私達の最初の実験場じゃない？」 それを見せつけるように飲み込んだ。 それは…！ 「やめろユカ！」 そんな声も虚しく、ユカは苦しみ始めた。 だがすぐに「これで死ねないね！」と狂ったように笑い始めた少女を見た。 それは夏の日だった。 大学生だった僕らは、未知のウィルスを作りだしてしまった。 しかも、うっかり外に出してしまった。 誰にも言えずに楽観視していたら、こんな事になってしまっていた。 目の前の少女はもう、人ではなかった。 誰かたすけ