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ハロウィンまで後少し
ある晴れた日。魔王の娘であるアーテ・サンライトは大親友の手羽先と魔王城の中庭で遊んでいた。
「アーテェ~、人が来た。」
「かくれろっ。」
鶏の羽で作られたみのを着た顔のみえない住所不詳の少年と次期魔王の少女が遊ぶのをよく思っていない大人は多い。人が来ては隠れ、たまに場所を移動し、見付からないように二人は遊んでいた。
「何処に隠れれば良い?」
「さっき、いい感じの穴があったから、ついてきて。」
アーテが手羽先の手をとる。と、同時に二人の存在に気がついた大人が走って追いかけてくる。
「アーテ樣っ!その者から離れてください。危険ですっ!」
「うるさいっ!危険かどうかは私が決めることだぁ!」
二人は駆け出した。肥満気味の大人達が元気爆発中の子供の脚力に敵うわけもなく、差がどんどんついていく。
「仕方ない。最終手段です。」
大人の一人が呪文のようなものを唱え始め、灰色の光が二人を覆う。
「うわっ」
光が体に吸収されると、体がガクンと重くなった。
「こんな地味に嫌な魔術使いやがって!」
「使われたくなかったら逃げないで下さいよ。。。」
その後も口汚く罵倒しながら、アーテは逃げた。時折手羽先の羽をむしり、目眩ましに使いつつ逃げた。
そして、幾つか曲がり道を曲がったさきに穴を見つけた。
「飛び込めっ」
二人は勢いよく穴に飛び込んだ。
「アレ?」
思ったより穴は深く、上を見上げると空が豆粒のように小さく見えた。ヤバいヤツだと考える側からどんどん空は見えなくなっていく。そしてアーテと手羽先は、真っ暗な闇に飲み込まれていった。
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薄れゆく意識の中、アーテは赤と白に輝く塔や鉄製のカラフルなゴーレムの群れを見たような気がした。
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「オーイ、、、」
誰かの呼び掛けでアーテは目を覚ました。そこには角を持った魔族の女性と狼に変身した狼男がいた。
「誰?」
アーテが尋ねると、少し驚いた様子の女性が
「私は高野。で、コイツが嶋田。えっと、、コスプレイヤーやってます。」
とこたえた。
「こすぷ...?」
どこかの民族の名前だろうか?そんなことを考えていると、今度はシマダと呼ばれた人物が話しかけてきた。
「君の角は、コスプレじゃない...よね?それに、突然部屋に現れたし...。お隣の鶏の化け物もさ...何者なの?」
何の事かと辺りを見回すと、アーテは今、穴の中ではなく、知らない部屋の一室に手羽先と居ることが分かった。
「どゆこと...?」
アーテは一人呟いた。
続く?