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暁前の微光【6話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
母がお茶お茶…、と呟きながら台所の方へ向かう。
カラ達はそれを横目で見ながら上の階へとあがっていく。
ふと、カラがなにを思い立ったのか。母へと声をかけた。
カラ「お母ちゃん〜?〇〇まだ寝とる?」
母「あぁ……LOUIS?もう起きとるんとちゃうかな。様子見たって〜」
カラ「はぁーい」
毎日昇り降りしているこの階段。どこか薄暗くて。
そして、この扉の先。僕のがいるであろうこの部屋の入り口は人気の無いように静かだった。
今日も、ぎぃっ…と軋んだ扉を開け__
カラ「LOUIS、入んで」
名前を呼ぶ。
今まで寝ていたのか、起きていたのかは知らない。彼は暇があればだいたい寝ている。
LOUIS「ぁ…え?ちょっと待って。ほんま汚い」
カラ「大丈夫やって、いつも汚いで。もう慣れたわ」
LOUIS「カラの部屋の方が汚いて。…………うん、入って」
5分程度待ってから彼が出てきた。一番最初に目に入ったのは寝癖。
カラ「寝てたな。」
LOUIS「寝てへんわ」
カラ「嘘つけ」
寺「wwこの部屋入るんも、久しぶりやなぁ」
周「やっほーう」
LOUIS「二人もおったん。すまん、部屋汚いんけど」
カラ「ダイジョーブ!なにする?」
周「LOUISの部屋で遊ぶゼンテーなんかい」
この4人が揃うのは2週間ぶり。
寺「ほんで?なにする?」
3人「うーーーん………」
3分ほどの沈黙を経て、一番最初に口を開けたのは。
LOUIS「外に行きたい」
彼だった。
途端、“は……?”
とカラの口から低い声が漏れる。カラは普通の男子よりも声が高い。
そんな彼の口からは誰もきかないはずであろう、低い、小さな戸惑いの声が乾いた部屋に溢れた。
LOUIS「あ…いや、違くて」
まだ続く言葉を遮って、トーンを落としたままカラが言った。
カラ「お前…自分がどんな状況なんか、分かって、言ってんの」
LOUIS「……」
カラ「なんか、返事…せえや。お前、つい2週間前に倒れて、そんで……」
寺「カラ」
カラ「そんで……、病院いって、病気やったんちゃうの」
止みかけていた雪が、また降り出した。
部屋は冷えてとても寒い。さっきまで明るいはずだった空間は、重く変わっていた。
再びカラが開こうとした口を、周と寺が止める。
他人の自分達が出るべきではないと、幼ながらにも二人の少女は分かっていた。
小学生___それも低学年とは思えない、重すぎる兄弟の会話を、静かに聞いているしかなかった。
LOUIS「…、すまん」
LOUISは、二週間前に学校で気を失って病院に運ばれた。
丁度昼休みが終わりそうな頃。校庭で突如、倒れたのだった。
病気。『意識障害』というものだった。
意識障害_____意識が清明ではない状態のことを示し、覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていることを指す。
病院に運ばれたLOUISは、丸半日、昏睡状態に陥り、目を覚ましたのは次の日の早朝だった。
そんなことがあってから、外で倒れられたら困るから。と医師に外出を制限されていたのだ。
LOUIS「……俺は。___俺は部屋に篭るため生まれてきたんじゃない。外に出たい。木を見たいし、猫と遊びたい。商店街にも行きたいし、学校にも行きたい。」
カラ「っ…」
彼が外に出たがっているのは、カラが一番よくわかっていた。
同じ部屋で、同じ家で、毎日を過ごす兄弟としては当然のことだろう。
カラもLOUISと外に出て遊びたかった、しかし、それを止めるのが弟としての役割だから。
LOUIS「なぁ、お願い。」
--- 「いいよ」 ---
続く
次回、いよいよ家出編へ突入。
暁前の微光【7話】乞うご期待。