公開中
第11話:他校の番長(自称)現る
放課後の校門前。そこには、見るからにガラの悪い集団がたむろしていた。
中心にいるのは、近隣の工業高校で「狂犬」と恐れられる男、鮫島。
「おい、大塚ってのはどいつだ! 警察に職質されるほどの若頭気取りがいるって聞いたぜ。この俺が格の違いを教えてやる!」
殺気立つ不良たち。通りかかる生徒たちが悲鳴を上げて逃げ出す中、校舎から一人の男が悠然と現れた。
漆黒のサングラス、隙のない制服の着こなし。大雅である。
「……来たか、大塚ッ!」
鮫島が鋭い声を張り上げ、一歩踏み出す。
しかし、大雅は鮫島を完全に無視。
その視線は手元のスマホに釘付けで、眉間に深いシワを寄せ、今にも誰かを殴り殺しそうな指つきで画面を猛烈に叩いていた。
(……クソッ、なんて返せばいいんだ……。琥珀から『今日の夕飯、オムライスなんだ!』ってLINEが来た。……『美味そうだな』じゃ普通すぎる。……『俺も食べたい』? いや、それはがっつきすぎか……ッ!)
大雅の脳内は、琥珀への「完璧な返信」を構築するための超高度演算で埋め尽くされていた。
「おい! 無視すんじゃねえ! 俺の拳が見えねえのかッ!」
痺れを切らした鮫島が、大雅の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。
その瞬間。
大雅が、ガバッ! と鮫島の腕を掴んだ。
サングラスの奥から、文字通り「血走った目」が鮫島を貫く。
「……黙れ。……今、大事なところだ。……一文字でも打ち間違えたら、どうしてくれる」
「ひ、ヒィィッ……!!」
鮫島は、その圧倒的な「圧」に腰を抜かした。
彼には、大雅が「俺のシマを荒らす奴は、文字通り消してやる」と宣告したように聞こえたのだ。事実は、「フリック入力がズレて『だいすき』が『だいずき』になったら死ぬ」という焦りだったのだが。
「お、覚えてろよッ!」
鮫島たちは、尻尾を巻いて逃げ出していった。
そこへ、琥珀がひょこっと顔を出した。
「あ、大雅くん! 帰ろ……あれ? 今の人たち、知り合い?」
その瞬間、大雅の「若頭オーラ」が霧散した。
「……琥珀。……いや、知らない奴だ。……それより、今、LINEを……」
「あ、返信くれたんだ! ……えっ、『だいずき』? 大豆が好きなの?」
画面には、案の定、打ち間違えた「だいずき」の文字。
大雅は一瞬で顔面を真っ赤に染め、スマホを握りしめてその場に崩れ落ちた。
「……し、死ぬ。……俺は、もうダメだ……。……恥ずかしくて、オムライスどころじゃない……」
「あはは! 打ち間違いでしょ? 大丈夫だよ、私も大雅くんのこと『だいずき』だよ!」
琥珀の無邪気なカウンターに、大雅は本日二度目の「尊死」を経験することに。
「……晴翔。……俺を、豆乳に沈めてくれ……」
影で見ていた晴翔が「お前ら、一生やってろよ」と乾いたツッコミを入れた。
🔚