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6話 雨粒が、落ちた
僕は不思議な気分でカフェを出た。ここに入るときはすごく気分が悪くて、今すぐに死ねるなら死にたい、ぐらいだったのに今はとても気分が軽い。上を見上げると痛いぐらい燦々と輝いた太陽と目が合う。雨は完全に止んだ様だ。
「じゃあ、僕はこれで。」
この前は、もう会わなければいいな、と思いながら別れたが、
「え、もうですか?もう少しお話したいのに……。まだお昼すぎですし。」
「お気持ちは嬉しいのですが、それは、またの機会に取っておきます。」
今回は、また、会えればいいと、そう願いながら「またお会いできれば。」と言った。
「あ、そうだ。」
「?」
心底残念そうな顔をしてとぼとぼ帰ろうとした彼女を、僕は呼び止めた。
「お名前、まだお聞きしていなかったな、と思って……。」
僕がそう言うと、彼女は見るものすべてを魅了するような笑顔で、「オリビアです。」とそういった。チェリーレッドの傘から雨粒が垂れ落ちた。