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1.到着
山を一周していた時のような毎日が始まった。
昼間にポチの先導でスピードを出して、ある程度進んだら、いったん休憩。そして村を探してそこで野営。朝ごはんと弁当を少しの仕事の手伝いとともにもらい、村を出る。
途中、魔物と呼ばれるものに出会ったりもしたが、ポチが追い払ってくれた。その後、ポチは一日以上機嫌がよく、いつもより元気だから、何か食べたりしたのかもしれない。
そして、7日が経過した。
響たちの前には、石で作られた立派な都があった。
(あぁ……うん、そりゃそうだよね。昔だもん。だけど……昔って木をもっと使っていそうなイメージがあったんだけど……)
石は石でヨーロッパの昔のような感じがしていいものだけど、日本らしい昔がよかった。響はそんなことを考えるのだった。
(さて、ここではどんな設定でいこう。ここが昔だったら9歳が一人でいるなんて危険だよね?もしかしたら奴隷商が……いや、変なことを想像するのはやめよう。ただ、私は住む場所と仕事を得たい。そして9歳を雇ってくれそうな場所……)
響は考えた。
そして、お屋敷のメイドとか使用人ならこの年齢でも雇ってくれるのではないか、と考えた。
響はさっそく実行することにした。
(一番待遇がよさそうなのは……ここが昔の設定なら王家とかあるんじゃない?そこだったら……)
普通の人はこんな無謀なことはしないのだが、響は常識を知らない。そして、さっそく王城らしきものに向かって歩きだすのだった。
響は、王城の前に到着した。
なんと、誰にも絡まれなかった。とても、不思議だった。
「衛兵さーん」
響は、衛兵という名前なのか他にも呼び方があるのか分からないなりに読んでみた。
「あ?何だいお嬢ちゃん、ここは王城だぞ。入ってくんな。」
(うわぁ、嫌な人だなぁ。)
響の評価はとても低くなった。
だけど衛兵という言葉にこの人たちが反応したことに驚いた。なんと、当たっていたのだ。
「王宮っていま使用人を募集していませんか?」
「使用人?嬢ちゃん、使用人になりたいのか?だったら試験を受けなきゃいけないよ。」
「試験?」
響は驚いた。
「そうさ。知らなかったのか?」
「はい。」
「じゃあ私を使用人として雇ってくれそうな家に心当たりはありますか?」
「そりゃ嬢ちゃんなら雇ってくれそうな人はたくさんいそうだが……」
衛兵は響を見てそう言った。
もっとも、その意図は、
(こんな将来有望そうな嬢ちゃんなら、体目当ての貴族様とかが欲しがるだろうなぁ。)
というものだった。
「そうなの!?」
響は驚いた。だってこちらは身元も分からない9歳児。なかなか受け入れてもらえないだろうと考えていたのだ。
「あぁ…」
(だけどこの嬢ちゃんは真っ当な職場で働きたいんだろうなぁ。)
衛兵はこの良く分からないけど、物腰が丁寧な少女を気に入った。そして、できる限りなんとかしてやりたいと思った。
「そうだな、ゲルリエ家はどうだ?」
「ゲルリエ家?」
当たり前だが、初めて聞く名前である。
「そうさ。確か嬢ちゃんくらいの年齢のお子さんがいたはずだよ。気に入ってもらえれば雇ってくれるだろうさ。」
響のこの衛兵に対する評価は上がった。
(この人たち、優しい人なんだね。)
そして、ゲルリエ家までの道を教えてもらい、早速向かうことにした。
響は、今もなお、無一文であった……。
そして、その少女が行った先を見つめる衛兵は言った。
「あれ、ターネリアだよな。」
「そうだろうな。」
「……なんで普通の嬢ちゃんについて行っているんだ?」
「しらねえな。」
衛兵は、少し恐ろしく感じだ。
「王宮に言っておくべきか?」
「一応、報告しておくべきじゃね。」
「申し訳ないけど……そうさせてもらおう。」