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インビジブル・ボイス ~オフィスの隙間に住む男の秘密~
「社員のストレスがマッハでこのままじゃ窒息死です!」
黒づくめの男が紫煙に巻かれて青息吐息で駆け込んできた。
ひと目見るなり江洲博士はほくそ笑む。緑あふれるオフィス。松戸菜園テスト研究所は環境対策のエキスパートで薄汚れた隣のビルとは好対照だ。
男は肺活量を振り絞った。
「あんた何をしたんだよ?!」
ある日、オフィスの一角にある小さな隙間を見つけた。机と壁の間にできた隙間は、何かを挟んだり、隠したりするのにちょうどいい大きさだった。社員たちはそれぞれの業務に忙しく、その隙間を気にする余裕はなかったが、私はなぜか気になってしまった。
ある日の昼休み、私はその隙間を覗いてみることにした。机の下に潜り込むようにして覗いてみると、そこには何もなかった。ただの暗闇だった。少し残念な気持ちになりながらも、その後は忙しい日常に追われ、隙間のことは忘れていた。
ある夜、遅くまで残業をしていると、煙草の匂いが漂ってきた。オフィス内では禁煙なので、どこから匂いがしているのか不思議に思い、辺りを探してみると、再びその隙間が目に入った。今度は煙草の吸い殻が隙間からこぼれ落ちているのが見えた。
私は興味津々で隙間を覗き込むと、そこには一人の男性が座り込んでいた。男性は煙草を手に持ち、一服しながら何かを考え込んでいるようだった。私は彼の姿に心が惹かれ、声をかけてみることにした。
「すみません、何をしているんですか?」と尋ねると、男性は驚いたような表情を浮かべた。
「あ、あなたが見えるんですか?普通の人は見えないんですよ。」
私は驚きながらも、彼との会話を続けることにした。彼は「隙間の住人」と名乗り、自分がオフィスの壁の中に住んでいることを話してくれた。彼は社員たちの悩みや不満を聞きながら、煙草を吸いながらアドバイスをするという役割を果たしているのだという。
「隙間の住人」は、社員たちが気づかない間に彼の存在を感じることができる特別な力を持っていると言った。そして、彼は私にもその力があることを教えてくれた。
「あなたも隙間を覗いてみれば、その中の世界を見ることができるかもしれませんよ。」
私は興味津々で彼の言葉に従い、隙間を覗くことにした。すると、そこにはオフィスの中では見ることのできない風景が広がっていた。観葉植物が生い茂り、美しい景色が広がっていた。
私は驚きながらも、彼との会話を楽しむうちに、彼の存在が私の日常の一部となっていった。彼のアドバイスによって、私の悩みや不満も解決へと導かれていった。
そしてある日、私は彼に別れを告げることにした。彼は驚いた表情を浮かべながらも、私の決意を受け入れた。
「ありがとう、隙間の住人。私はもう自分の力で前に進んでいくんだ。」
私は彼に感謝の意を込めて微笑みかけると、隙間から離れていった。
それからというもの、私は彼の存在を思い出しながら、自分の力で悩みや不満を乗り越えていくことができた。そして、あの隙間が私にとって特別な存在だったことに気づいた。
オフィスの中にある小さな隙間が、私の心に新たな視野を開かせてくれたのだと思うと、不思議な喜びが湧いてきた。
「隙間の住人」に出会ったことで、私は自分自身を見つめ直すことができ、新たな一歩を踏み出す勇気を持つことができたのだった。
これからも、私は隙間の存在を忘れず、自分の内なる力に向き合っていこうと心に誓った。
そして、その小さな隙間が、私の成長の証となることを願いながら、私は新たな道を歩み始めたので