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鐘をならせば
「ミミ、これあげる」
「おとーさん、なにこれ?」
「鐘っていうんだよ。みんなに、綺麗な音を聞かせてあげてね」
「おとーさん、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
私は思春期が来るくらいの年齢だが、お父さんが好きだ。
たまに馬鹿にされるけど、無視している。
男一人で育ててくれたお父さんに感謝しているしね。
「おはよう、おとーさん」
「...」
珍しく挨拶を無視してきて、様子がおかしいと思ったが、眠かったのだろうと脳内を誤魔化した。
「おはよう、ミミ」
「あ、おはよー!ミサキ!」
「あれ?いつもバッグにつけてる鐘は?やっぱり昨日の男子のこと気にしてる?」
「全然!あんな鐘の悪口言うやつなんて、ね」
ふーん、という感じで目をそらすミサキ
ん?
「いま...バッグに鐘がないって言った?」
「言ったよ?」
嘘!あんな大事な鐘なくすわけないし!
どこかで落とした?
「探してくる!」
今まで来た道を戻る。
コンビニ前にもない、畑の中にもない、どこ...?
その日は授業を聞けずに、怒られてしまった。
「おとーさん、私の鐘知らない?」
「そのことなんだが...」
割れた鐘が手のひらに乗っている。
「おとー...さん?」
驚きを隠せなかった。
別におとーさんを責める気はないし、ただただ、悲しかった。
「だから、これ。新しい鐘...ずっとミミが欲しいっていってた鐘」
そこにはきれいな柄が彫り込まれた素敵だと思っていた鐘が乗っていた。
「おとーさん...!」
ありがとう...!
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「今日の初ライブ、最期の曲は昔から私のことを一番見てくれていた人、おとーさんに向けて歌います!」
曲が流れだす。
もうこの世にはいない、おとーさんへ。
私のことを育ててくれて、時には怒ってくれて、泣いたら慰めてくれて、本当にありがとう...!
「ありがとうございました!」
おとーさん、ありがとう。そして、お疲れ様!
読んでくださりありがとうございます。
これも曲作りますかね。
現在サビだけ投稿中。
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