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Ⅱ
晴瀬です。
ある人の夜の話です。
真っ黒な暗闇の中少女が一人、その場に立っていた。
月と夜と少女だけがその場を満たしていた。
月明かりの下、虚ろとも無感情とも寂しさに似たような感情とも取れる色をした目の少女は長い黒髪を風に靡かせている。
少女は呟く。
「…か──に─な──っ─」
風に吹かれ木々の葉が擦れてその言葉は誰にも聞き取れなかった。
少女は突然眉を顰めて、先程よりも大きな声で言う。
「最低だよ
私も一緒に連れて行ってくれればよかったのに」
少女は目から涙を溢す。
木を、空を見上げて少女は笑顔を作った。
涙を流しているからか、少し引き攣っていた。
その人が、自分と同じように何気なく、夜外に出て空を見上げてくれていたらいい、と少女は思った。
それができる環境に生きてほしいと願った。
夜が誰かを救うことを信じていた。
大事な人を失った者も、救われることがあると信じていた。
最近は夜も蒸し暑くて寝れません