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カクシゴト。
「‥」
慣れた視界。
片目分しか視野がないのに困る事はあるが、朝起きる時に困る事はない。たまに困るのは眼鏡がサイドテーブルから落ちて何処かへ行っていた時。探すのに時間がかかる。
そして今日は、リビングに行くのにいつもより時間がかかりそうだ。何故なら眼鏡がサイドテーブルの上にないから。床を探してもない。こういう時は大体ベットの下に‥
「‥ない。」
なかった。
何処にもない、と言う事は昨日僕自身が別の場所に置いて寝たか、または誰かが盗んだかしか考えられない。
誰かが盗んだ可能性は案を出したがあり得ないことだ。僕は確かにこの部屋の入り口に鍵をかけて寝た。今もその鍵は外れていない。シェリア・ヴィクトリア特製の鍵の為、複製やピッキングは出来ない。
何処に置いたかだが、昨日は確かにサイドテーブルの上に置いたはず。だがテーブルにはない。記憶がないだけで、僕は別の場所に置いたかもしれない。
思い出せない時は昨日の行動をやり直してみるといい。能力は使う程でもないので使わない。
確か昨日は夜中の1時を過ぎたあたりで寝ようと自室に戻り、それから部屋着に着替えてベットの上に来たはず。その後はサイドテーブルに眼鏡を置こうと‥
「‥」
したが、また落とすと困る為に引き出しの中に閉まった。記憶の通りに引き出しの中を開けてみると、やはり眼鏡があった。
少し‥いや、かなり眠気が限界だったのだろう。全然思い出せなかった。
眼鏡も見つかったことだ。服を着替えてリビングへ行くとしよう。今日は珍しく依頼お断り日のはずだからな。
♢
「おはようございます。」
「あれ、もう起きたの?おはよ〜。」
シェリア・ヴィクトリアが依頼時用のソファに座りながら紙の束を読んでいた。恐らく依頼の情報整理資料だろう。
「休みの日まで仕事ですか。」
「なんかさ、仕事してないと落ち着かないんだよね。記憶がないからかな。」
彼は記憶がない。故に過去の楽しい思い出を振り返って時間を潰すという事が出来ないのだ。
皆、シェリアの前では過去の話題を避けているように感じる。一応気を使わせない為だろう。
かく言う僕も過去の話をしないようにしている。話したくない事が多いという理由もあるが、シェリア・ヴィクトリアの前で過去の話題を出すのはなんだか申し訳ないという感情が沸くからだ。
「‥話題を逸らすようで申し訳ありませんが、今は何時でしょうか?」
「あれ、ルイシェくんの部屋に時計なかった?」
「数日前に壊れました。」
「いや、そういう事は早く言ってよ!!買いに行かなきゃなんだからさ!」
立ち上がって僕に詰め寄るシェリア・ヴィクトリア。「依頼が立て続けに押し付けて壊れた事を言えなくしたのは貴方じゃないですか」とは流石に言わなかった。
「すみません。」
「まぁ、後で買いに行けばいっか‥で、今何時かだっけ?」
「はい。」
「んー‥今は五時半だね。随分と早起きじゃないか。」
「シェリア・ヴィクトリアも早起きだと思うのですが。」
「僕は寝てないから早起きって事でもないかな〜。」
「寝ていないのですか?」
「うん、なんだか寝付けなかった。」
彼はへにゃりと子供のように笑う。僕から離れ、棚から腕時計を取り出してそれを僕の手首に巻きつける。
「‥壊れた時計の代わりですか?」
「うん、その通り〜!今日買いに行くからそれまで我慢しててね〜!」
「時間などあまり確認する事もないので、後回しで構いません。」
「あれそう?‥でもどうせどっかのタイミングで買いに行くし、早めに買った方が良くない?」
「‥あってもなくてもどちらでも構いません。」
「答えになってない答えだな〜‥」
彼は電話の横に置かれた小さなメモにペンで何かを書き始める。その途中で電話のベルがなったが、彼がすぐに切った。メモを書き終えるとそのメモを千切り、僕の手に握らせる。
「これは時計屋の住所が書いてある紙。後で行ってきてね、壊れた時計も一緒に!」
「はぁ‥わかりました。」
「そりゃどーも!ところで朝ご飯食べる?」
「急ですね。ですが、あるのなら頂きましょう。」
「昨日丁度買い出しに行ったからね〜、パンとかご飯とかコーンフレークとか色々あるよ〜!」
「では‥そのパンを。」
僕はチーズが少し入った大きめのパンを指した。食べやすいサイズに各自切れるようなパンだ。
「これね〜、ちょっと焼くから待ってて〜!」
そう言い彼はキッチンへと姿を消した。レンジを開ける音が聞こえるので、レンジで温めようとしているのだろう。
彼がキッチンに行って少しした後、リビングの扉が開いてアレルくんが中へと入ってきた。部屋着から着替え、今すぐに依頼が来ても出れるような服になっていた。‥今日は依頼が無い為、恐らく出掛ける用事でもあるのだろう。
「あ、おはようございますルイシェさん!」
彼女は寝癖を治しながら僕を見つけて、慌てて挨拶をした。別に挨拶しなくても構わないのだが‥
「おはよう‥ところで、今何時だ?」
「え?あ、今は‥6時ピッタリです。」
リビングに設置されている壁掛け時計を見て質問に答える彼女。だが、僕はそれより彼女の髪にまだ寝癖がついている事が気になって仕方がない。
「‥私の頭に何かついてます?」
気まずそうな顔をして僕の顔を見るアレルくん。彼女に寝癖がある事を伝えようとした時に丁度シェリア・ヴィクトリアが戻ってきた。
「あ、アレルくんじゃん。おはよ〜‥って、寝癖ついてるよ?(笑」
「え?ど、何処ですか!?」
「え〜言わな〜い!」
「最っ低なんですけど!ね、ルイシェさん!何処に寝癖ついてるからわかりますか!?」
「‥洗面所の鏡で見てきた方が、水で治せていいと思いますよ。」
「確かにそうですね、失礼します!、」
アレルくんは慌ただしく扉を開けて外へ出ていった。その様子をケラケラと笑いながら僕の前に温めてきたであろうパンを置き、席に座ったシェリア・ヴィクトリア。
「アレルくんって見てて飽きないよね〜、いつでも笑えちゃうや。」
コーヒーカップに角砂糖をいくつか入れてスプーンでかき混ぜる。スプーンを側におき、珈琲を一口彼は飲んだ。
「ゴフッ」
むせている。変なところに珈琲が入ったか、それか苦すぎたかだろう。もしかしたら熱かったのかもしれない。
「‥角砂糖、もっといりますか?」
「気が利くね〜!ありがゴホッ‥」
「‥」
そっと角砂糖を彼の前に持っていき、蓋を開けておく。彼は咳き込みながらも角砂糖を取り出し、珈琲に入れた。そして一口飲む。
「‥うん、やっと美味しくなったや。」
そういいフっと笑った。残念ながら、失態を晒しすぎて今更カッコつけるのは無理だと思う。
「ところでルイシェくん。」
「どうかしましたか?」
「メモ書き、珈琲でビショビショ。」
「あ」
♢
午前十一時。先程の馬鹿みたいな会話から何時間か過ぎた頃。
ちなみにあの後は、メモ書きを取ろうとしたシェリア・ヴィクトリアが珈琲を倒してしまい、僕の服にかかった。それをどうにかして落とせないかと僕に近づいてハンカチで汚れた部分をはたいていた所にリュオル・フォルテーオが来て、恋人同士のアレだと勘違いされた‥勿論、すぐに弁解した。口外禁止とも言っておいた‥言ったはずなのだが、何故か全員が外へ出て行った。可笑しいな、全員「明日は絶対外に出ない」と昨日言っていたはずなのに。
「‥なんかごめんねぇ、僕が珈琲溢しちゃったせいで迷惑かけちゃって‥」
「構いません。読書出来る静かな空間が出来上がったので寧ろ感謝しています。」
「そう?なら‥よかったのかな?」
そんな会話をしながら食器を洗う彼と僕で、今から読書の時間もなしに出掛けるようだ。彼が食器を洗い終わるまでしか読書の時間がないとは可笑しな話だ。今日くらいはゆっくり出来ると思ったんだが‥
そんな事を考えていたら水が止まる音が聞こえた。洗い物が終わったと言うことだろう。僕は本を片し、ソファの上に置いていた袋を手に取った。それとほぼ同時に彼がキッチンからリビングに戻ってきて上着を手に取った。
「洗い物終わったよ〜、今から出れる?」
「えぇ、出る準備をしていましたから。」
「そっか〜、ありがとね!」
ヘラヘラと笑う彼の後ろについていく。身長が高い分、扉を少し屈んで通らなくては行けないのはいつまでたっても面倒だ。たまに寝ぼけていると頭をぶつけて痛い。
日中はヴィスの動きが鈍くなる時間帯故にヴィスを殺しやすい。だがヴィスも殺されると分かっていながら外には出てこないので、日中はヴィスに殺される恐怖に怯えなくてもいいのだ。だが、この事務所が潰されてはいけない為、戸締りも気を抜かずにしておく。
「準備できた?」
「はい。」
「んじゃ、時計屋さんにレッツゴー!」
扉の向こうの太陽が酷く眩しく、暑すぎて頭がおかしくなりそうだった為にすぐ引き返したのは少し後の話。
♢
午後一時。僕達は時計屋の前にいた。
アンティークな時計が多く、古い雰囲気のある時計屋だ。店と店の間に挟まれていて、道路沿いの道だから通れば見覚えのある店になると思っていたが、全く持って記憶がない。普段周りをじっくりと見ないからだろうか。
そんな事を考えながら僕は隣の人をチラ見した。
「はぁっ、はぁっ、はぁ〜っ!、」
「そんな疲れてるの貴方だけですよ。」
彼‥シェリア・ヴィクトリアは壁に手をついて座り込んでしまっている。僕は水を持ってきたが、彼は持ってくるのを忘れたらしい。申し訳なくもないが、可哀想とは全く思わなかった。
「あ〜飲み物持ってくればよかった‥でも大丈夫。この店はタダで水くれるから!!」
「タダ水飲む為にそんな死にかけになってるんですか?」
「まぁね!!無駄な出費は抑えたい!!」
この前本を大量に買ったのはやはり言わない方がいいのかもしれない。
「さぁさ!早速入r(ヘブッ」
「いつまでグチグチ喋ってるんですか、さっさと入るなら入ってください。」
シェリア・ヴィクトリアが扉に手をかけようと近づいた瞬間、内側から扉が勢いよく開けられてシェリア・ヴィクトリアの顔面にヒット。店主はその事に気づいていながら無視しているのか、はたまた気付いていないのか。それは彼のみぞ知る。
「いったぁ〜‥あざになりそうだな〜‥」
彼は珍しく前髪を上げておでこをさする。確かにおでこが‥と言うか、顔面全体が赤くなっている。あんな音を立ててぶつかったんだから当たり前か。
「しつれ〜しま〜す!」
「そちらの方、態々ご足労いただきありがとうございます。僕は“サンガ・フェリーラン”です。ここの店主の代理で来てます。」
「代理?」
「ここの店主さん、かなりお年寄りだから体の節々が痛んだり普段通りの生活が難しくなっちゃってるんじゃないっけ。」
「その通りです、すみませんね。」
茶色の髪が控えめな照明に照らされて輝いている。オレンジ色の瞳も夕焼けのようで綺麗だ。
「‥時計を直して欲しいのですが。」
「修理ですね、お代は後払いですのでご安心ください。金を忘れたのなら修理中に取りに帰ってください。」
「前に金忘れてきた奴がいたんだよね〜!」
「|貴方《シェリア》ですよ。」
少年は愚痴を言いながらも工具を出して時計の状態を見ている。シェリア・ヴィクトリアと少年‥サンガ・フェリーランは随分と仲がいいよう。この町での付き合いが長いのか、シェリア・ヴィクトリアが記憶を失う前から仲が良かったのか、それはわからないが。
「‥先にお伝えします。この時計の修理代は6500円です。所持金が足りない場合は取りに行ってくださいね。」
チラッと財布を覗いたが、ちゃんと7500円が払える分は残っていた。
「一時間程時間を貰います。水が欲しけりゃそこのミニ冷蔵庫からどうぞ。何か他に用事があれば、終了し次第連絡致します。」
外見的に年齢は16〜18の少年だが、まるで20を超えた大人のような態度だ。25なのに10代に見える隣の男とはまるで違う。
だがやる事がない。外に用事があるわけでも、水を飲みたいわけでもない。出来る事なら読書でもしたいが、目の前で本を読むのは失礼か?
「‥読書でもなんでも、お好きにどうぞ。」
少年はまるで、心を読んだかのようにタイミングで話しかけてきた。
「有難うございます。」
袋の中から一冊の本を取り出し、椅子の背もたれに寄りかかって読書に集中する。
チクタクチクタクと時計の腹が動く音と、少年の工具の音だけがあるこの空間は、心地よい。
♢
午後四時。
この店についてからもうそろそろ一時間が経過しようとしていた。持ってきた二冊の本も読み終わってしまい、どう時間を潰そうかと考えていた時の事。
「‥時計、どうぞ。」
やっと時計の修理が終わったようだ。
「ありがとうございます。」
「言ったより時間かかってすみませんね、思ったより壊れていたので。」
「いえ、お気になさらず。」
「それで‥お代を頂戴しても?」
「あぁ、6500円ピッタリでお願いします。」
お札と小銭を少年の掌の上にそっと置く。少年はそれを落とさないようにゆっくりと箱へ入れ、時計を渡してきた。
「また壊れたら来てください。あと‥横の大荷物、ちゃんと持ち帰ってくださいね。」
大荷物なんか持ち帰ってきていたかと思い横を見ると、そこには椅子に座りながら眠っているシェリア・ヴィクトリアがいた。
「‥」
僕は朝聞いた彼の言葉を思い出した。
『僕は寝てないから早起きって事でもないかな〜。』
そう言えば彼は寝ていなかったなと思い出し、起こすか運ぶか、どう持ち帰ろうか考えていた。
「彼、まだ寝てなかったんでしょ。」
「また、とは?」
「ここに来るとよくそうなってる。寝れない時はこの店に来るみたいだよ。爺ちゃんの頃からそうだった。」
工具の整理をしながら少年は話し始めた。気付けば敬語は抜け、子供らしい話し方になっていた。きっと営業終了したと言うことだろう。
「水を飲みにくるんだ。」
「水、ですか?」
「そう、今日もそうだったでしょ。ここの店の水はタダの水じゃないから、多分それ目当て。勿論壊れた時計も持ってくるけどね。」
「‥その詳細をお聞きしても?」
ヴィスに‥犯罪に関与している事ならば今すぐ罰を与えなくては行けない。例えそれが、僕の職場の上司だとしても。
「別に、犯罪系のやつじゃないよ。爺ちゃんの能力が“現実から逃げられる”って能力なだけ。夢の中へ逃げるでも、永遠の眠りについて逃げるでも、捉え方は人それぞれ。その能力をそこの水にかけてるんだ。だから飲むだけで能力にかかる。」
現実から逃げられる‥扱い方を間違えれば犯罪者にでもなっていたであろう能力だ。
「ただ、初めてその能力にかかった人は次に能力の効果を受け取っても初めと同じ逃げ方になる。初めに夢の中へ逃げたなら、次からも夢の中にしか逃げられない。そこのシェリアさんは、“夢の中へ逃げる”って捉えたみたいだね。」
「‥ちなみに、その能力の効果時間は?」
「最長でも二時間。その前に本人がもう満足って思えばもっと早く効果が切れる。今は水飲んでから一時間半くらいだから、後三十分くらいで効果切れる筈。」
「‥では、三十分だけいさせてもらi」
「ちなみにもう閉店時間だから。閉店時間を五分伸ばしてあげただけ感謝して帰ってね。」
「それ、本気ですか?」
「脅しなら聞かないよ。これから爺ちゃんの世話をしなきゃいけないんだ。何を言われようと時間は引き延ばせない。」
そう言い、少年は時計屋の元線や電気を消しに行った。僕は横にいる彼に軽くため息をついた後、所謂おんぶの形で背負った。
「居座ってすみません、帰ります。」
「あ、お気を付けて。ついでに店前の看板をopenからcloseにしてきてくれるとありがたいです。」
「‥了解です。」
「ありがとうございました〜」
店の扉を閉めて、言われた通りに看板を裏返しにした。彼を背負いなおし、事務所への道をゆっくりと歩いて行く。
♢
日が沈みかけの眩しい時間。店が多く並んだ場所を通り抜け、人通りの少ない道を歩く。背中にある重みを背負い直し、長い道のりが終わろうとしていた。
「‥ん」
その時、シェリア・ヴィクトリアが目覚めた。
「遅いお目覚めのようで。」
「あぁ‥もう帰る時間だった?ごめんねぇ背負わして。」
「‥いえ、構いません。」
「そっかぁ‥重くない?大丈夫?」
「なんて事ありません。寧ろ軽いです。」
「そりゃ嬉しいや、ありがとね。」
背中に乗る人が目覚めたのに起きあがろうとしないのは、あの少年の話で聞いた「目覚めてから少しの間は体が重くて動かない」の通りだろう。
「‥時計が随分と綺麗になって帰ってきました。あの少年は器用なのですね。」
「そうだねぇ‥彼自身はまだまだだって言ってるけど、僕は十分凄いと思うんだ。だから、少しくらい自信を持って欲しいなと思う‥」
「‥またいきましょう。」
「え?」
「仕方がないので、本二冊と引き換えにいつでもついていきます。気が向いたら自発的についていってあげましょう。」
「‥ふふっ」
「何か可笑しな事を言いましたか?」
「ううん、君がそんな風に言ってくれるなんて思わなかったや。もしかしなくても、サンガくんに何か聞いたのかな。」
「‥」
「無言は肯定ってことだよね、そっかそっか。‥いつか、君も僕達に心を開いてくれるのかな。」
「‥何故?」
「だって、君はなんだかんだ僕達に隠し事が多いじゃないか。」
「‥」
「君の本名は?君の過去は?君はどうして片目がないの?君は何をしにきたの?」
「‥」
「なんて聞いても、何一つ教えてはくれないでしょ?‥だから、今じゃなくてもいつか教えてね。教えてくれるまで、死んでも逃さないから!」
彼が背中で暴れ始める。能力の効果がなくなってきたのだろう。もう少しで事務所の距離なので背負ったまま歩く。
「‥貴方もそうですよ。」
「貴方って、僕かな?」
「えぇ‥僕と同じ、貴方も隠し事だらけ。」
「そうかなぁ?」
「では聞きましょう。何故夢の中へ逃げるのですか?何故眠れないのですか?何故ヴィスを嫌いのですか?何故、何故僕達を信じないのですか?」
「‥」
「‥貴方も、答えられないじゃないですか。」
「‥まぁ、聞かれた方の気持ちがよくわかったや。ごめんね、何度も。」
「いえ、お気になさらず。‥ですが、貴方もいつか教えてくださいね。」
「うん。」
「貴方がそれを話すまで、僕も貴方を逃しません。僕だけじゃない、他の皆も逃しません。」
「そりゃ怖いや。逃げる為にも早く話さなきゃなぁ〜!」
「何故逃げるのですか。」
「だって怖いじゃん!!死んでも一緒とかなんか嫌だよ!?」
「それは僕もです。」
「いや無理無理!!ルイシェくんの事死んでも離さないから!!」
「次は束縛強い彼女ですか。」
色々騒いでいる間に事務所に到着。彼に背中から降りてもらい、事務所の扉を開ける。
彼にも皆にも話していない事は沢山だ。これからも話すつもりはない。彼もきっと、最初から話すつもりなんかないのかもしれない。それでも少し、自分は話すつもりはないのに思ってしまう事がある。彼の過去を知りたい、と。そんな我儘を口に出すことは無いが、思う分には自由だろう。
『この命尽きるまで、ヴィスを殺し続ける。』
この気持ちは彼と僕の共通点だろう。例え死んでも、成仏出来ないくらいには強い願いだ。
彼を大切だと、そう思っているのは自分でもよくわかっている。けれど僕は最低だ。
「‥君を信じているよ。」
彼のその言葉に、聞こえないフリをした。
カクシゴトだらけの僕達は、やはり本当の意味で仲間じゃないのかもしれない。
事務所に入った途端付き合ってると勘違いされ、謎に祝われるのはまた別の話。
めっちゃ長くなりました‥(
書くのに何日かかったんでしょう、でも結構時間がかかりました。時間かかったのにこんな変な文章だらけの小説になっちゃうなんて‥(泣
ルイシェさん目線で話を進めてみましたが、ド下手で申し訳ありません‼︎