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#4 『episode Fuzo:孤独なコンチェルト』
この物語はフィクションです。また、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
--- 誰かと一緒にいても、いつも虚しかった ---
--- たった一人の温もりを、覚えていたから ---
--- 遥か昔の|協奏曲《コンチェルト》は、心の中に虚しく響いていた ---
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ぱし、と頬に痛みが走る。特に能力で治すわけでもなく、反射的に叩かれたところを抑えた。もう、痛みは居座っていない。
「……最低な男だって知ってたけど、本当に誰でも良かったんだね」
「そうだよ?…それを知ってて付き合ってくれてると思ってたんだけどな」
ぎ、とオレンジの瞳に睨まれる。顔はそこそこだけど、目がなんとなくシイに似てたから付き合った子だ。名前は……なんだっけ、まぁいいや。
本名不詳の彼女がいるのは俺の家、彼女が手に持っているのは他の女の子から貰ったネックレスだった。女の子がウチにいる理由は察して欲しい。
女物のそれを俺に送る意味が分からなかったが、なるほどこういう時のためだったのかと感心してしまう。きっと彼女は勝手に俺のいない間部屋を物色するなりしたのだ。
「それで、どうするの?欲しいならそれ、あげるけど」
「…は?」
敢えてデリカシーの欠片もない発言をすれば、相手は予想通り目を見開き、その後涙を流す。……シイが泣いたらこんな感じかな。
もう一度、今度はより強くパシンと頬に平手が飛んでくる。胸元にネックレスを押し付けられ、そのまま彼女は出ていこうとした。
「あ、待って。気に入ってるって言ってたピアス、今着けてないけど大丈夫?探してこようか」
「………いらない」
真っ赤になった目元が俺を見据える。あのピアス、結構似合ってたのにな~…と思い返しながら返していると、目にうっすら期待が宿っていることに気がついた。
あー、未練タラタラなんだ。まぁそうだよね、さっきまで好き好きって顔してたし。
正直、二回叩かれちゃったからもうあんまり一緒にいるつもりはなくて、だから先程もデリカシーの無い話をしたのだが……もう一押しかな、と心のなかで呟く。
「えー…うーん、この後に他のコ来たときにまた怒られちゃうかもしんないから、できれば持って帰って欲しいな」
その後俺は見事両頬に跡をこさえ、ついでに彼女のピアスも押し付けられてしまった。本音を言えば処分に困るのだけれど……まぁまぁ良いやつそうだし、売れば幾分かマシかしら、と無機質な光にピアスを透かす。
(…にしても、刺されて死ねって結構ひどいよなぁ。自分だって、都合の良い相手が欲しいとか言ってたのに)
はぁ、とため息をついてピアスを机に置く。次のコも探さないと、今日誰か会えないかなと顔を思い浮かべてみるが、誰もアテは無さそうだった。…新しいコ探そうかな。
ぼす、とソファに沈みながら、頬に手をするりと添える。別に叩かれたことに関して感傷に浸っているわけではなく、これは《《治療行為》》なのだ。
手に意識を集中させれば、だんだん頬に温もりを感じてくる。眠気も呼び覚ましそうなその感覚に、訳もなく安堵のため息をついた。
(そういえば、あのコとも《《治療中》》に出会ったんだっけ)
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この世界には「能力持ち」がいると、昔習ったことがある。それは俺の人生の師よりもずっと前の、雇われた家庭教師が教えてくれたことだ。
『能力、またの名を才能特権。この世界に生きる人々の1/1000ほどしか持っていない、特殊な力。その力は人によって様々で、その本人の意思に関係なく先天的に宿る』
俺が能力持ちだと分かったのは、それからすぐだった。理由は、重度の怪我で瀕死になった父親を治したから。
俺の能力は人を救う、素晴らしい力。そう両親は言っていた。…結局その後、俺の力をどこからか嗅ぎ付けて狙っていた施設に浚われた際に殺されてしまったが。
今考えてみれば、俺の能力のことを家庭教師がアイツら話したのかもしれない。誘拐してきた奴らは誰かに教えて貰ったようなことを話していたから。今となっては、もうどうでも良いけれど。
俺はその力を使って、ふらふらと人助け兼ヤブ医者のようなことをしていた。本当は軍医になりたいのだが、今はまだ経験が足りない。経験を積んでから、俺は軍医になると決めているのだ。
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痛みと腫れがひいたのを確認して、能力の発動を止める。いつか、いつかって言っているけれど、その《《いつか》》がいつなのかはまだ決めていない。…だから、師匠の元から経って数十年かかっても軍医になれていないのだが。
(…でも、軍人じゃなきゃ姉さんは探せない)
姉さん、というのはその名の通り俺の姉だ。俺には姉が一人いて、俺が誘拐されたときに生き別れになってしまっている。今どこで何をして生きているのか、全くもって分からないが……姉さんも、あの施設の奴らに浚われている可能性が高い。
もし俺と同じように、実験で永い命になって、生きていてくれていたなら。そんな望みを、昔からずっと、ずっと消せずにいた。
軍には様々な情報が集まる。行方不明者も犯罪者も……きっと、偉くなれれば戸籍の情報だって確認することができる。もしも姉さんの戸籍情報で生きていることになっていれば、そこに住所でもなんでも、手がかりさえ載っていれば。
(…まぁ、軍医になれてないから全部机上の空論なんですけどね~)
ずむ、と顔をソファの近くに会ったクッションに埋める。いい加減頑張んないと、そう思いながらも俺の意識は離れていく。
今日は疲れたし、また明日頑張ろう。心の中で(そう言った人間が頑張ったことはない)と浮かび上がった言葉を無視しながら、俺は昼寝を決め込んだ。
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懐かしい夢を見た。ああそうだ、今となっては懐かしい、師匠とシイと、三人で暮らしていたときの夢だ。
あそこは暖かくて、優しくて、まるで柔らかい羽毛のようなところだった。傷ついた心も、体も、何もかもを癒して全うな道へと戻してくれる、そんな場所。
施設で過ごした時間はあまりに短かったけれど、それでも確実に俺の、俺たちの心に大きな傷を残している。シイは研究所と聞けば体が強ばるようになっていたし、俺だってあそこと、それによく似た工場が未だに怖い。
そんな俺たちを受け入れて、知識や力を与えてくれたのが師匠___リーさんだった。
初めて出会ったのは、施設の中。部屋でぼんやり物思いに耽っていたとき、空間転移をミスったリーさんが偶然俺を見つけてくれて、そうして助け出してくれたのだ。
初めは警戒していたけれど、優しく接してくれて、痛いことも苦しいこともしないあの人が母と重なってからは心を開くようになったんだったか。
どちらにせよ、あの人が魔法をミスらなかったら今ここに俺はいなかったのだ。神であるのにおっちょこちょいな性質にも、この時ばかりは感謝せざるを得ない。
だが、あの日々を思い出すのにはもう一人俺の心に相当デカい傷跡を残した男がいる。それが俺の同室で2コ上のシイ・シュウリンだった。
俺はいわゆる両性愛者である。この前置きだけで分かる人もいるとは思うが、俺はシイのことが好きだった。否、過去形ではなく現在進行形で好きである。それこそ、シイの面影を追い求めて似たような女の子を漁るくらいには。
初めは、その見目の美しさに惹かれた。真っ白で月の光のような髪に、朱の瞳。生気を感じない端正な顔は人形を思わせるようで、子供心にも「きれいなひとだ」と一瞬で分かるようなほど。
次に、性格を好きになった。底抜けに明るくて、無邪気で、優しいところ。でも、この世の汚いところも知っていて、ただ能天気なだけじゃない聡明なところ。知れば知るほどシイ・シュウリンという男は魅力的に見えた。
そんな所謂初恋の相手と時には同じ布団に入り、共に学び、汗を流し、裸だって見合って、さらに当時俺は思春期。男同士、同室、当然何も起きないはずがなく…………的なのを想像していた人には申し訳がないが、十数年一緒にいたのに俺は一ミリも自身の想いを伝えないまま終わった。
確かに想いを伝えれば、幸せな生活もできたかもしれない。けれど、俺にはやりたいことがあったから、泣く泣くシイへの想いを諦めたのだ。…いや、ちょっと怖かったってのもあるけどさ。でもそれはほら、仕方ないっていうか……あるじゃん、ねぇ?
そのやりたい事こそが姉を見つけること。そのためだけに、明日こそはちゃんと頑張ろう。そう思いながら、俺は意識を手繰り寄せて覚醒へと進んでいった。
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「……ほ、本当ですか」
「はい、合格おめでとうございます。これであなたも名誉ある混乱的城市軍の医療隊員です」
待ち望んでいた言葉に、やったーとか、ありがとうございますとか、いらん言葉ばかりが頭をよぎる。喜びで心臓がグツグツと煮え立ち、今にも体が内から壊れてしまいそうだった。
今俺は軍の基地にいる。そこで、軍医……厳密には医療隊の隊員試験の合否を聴いていた。もう先ほどの台詞から察して貰えると思うが、そう、俺は合格したのだ。合格、合格。今日から医療隊、俺が、俺が、医療隊に合格!!!!気を抜けばぐわぁっと上ってくる喜びで叫んでしまいそうだった。悟られぬように丁寧に頭を下げ、踵を返す。
今から俺は、自宅に戻って引っ越し用に荷物を纏める必要があった。軍人になれば、軍の寮で生活をすることになる。生活費は給料から天引きで、噂によれば隊長クラスになると一軒家が与えられるとか………
まぁ、今の俺にはアパートくらいが丁度良い。突然地上に出たらモグラだってビビるだろう。そんなもんだ。
(それにしても、この家ともお別れかぁ)
なんだかんだ長く一緒にいたなぁ、と家を見渡す。それこそ歴代彼女の誰よりも長く、ずっと迷惑をかけてきていた。
この家には、そういった思い出がたくさん詰まっている。女遊びで虚しさや不安を紛らわしていた情けない自分の、酸いも甘いも詰め込んだような家だ。離れるのは名残惜しいが、それでも夢のためにやるべきことがあるのだから致し方ない。
空間転移布の上に荷物を置いて自分の部屋へと移す。そうして部屋を見渡せば、随分とこざっぱりしていて少し寂しい。…うーん、やっぱり未練は残るなぁ。
全て荷物を移し終わって、俺も転移布の上に立った。目をす、と閉じて前よりも丁寧に、布へと魔力を込めていく。
「…じゃあね、今まで楽しかったよ」
過去の情けない俺との決別も含めて、この懐かしい家へと俺は別れを告げた。
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『|協奏曲《きょうそうきょく》、またの名をコンチェルト。独走楽器とオーケストラが共演する楽曲』
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医療隊に入ってから、もう…何年だろう。永い時間を生きていると、時間感覚がおかしくなってしまって良くない。ともかく、数年かが経ち、俺は何故か……
「……はい、じゃあ今から後衛武具隊の訓練を始めます。俺は医療隊隊長のフーゾ・ギディオンです、今回は練習の補佐を任されたんで…まぁ、異論はあると思うんですけど、指示があったらちゃんと聞いてね」
「こう見えても、フーゾ隊長めちゃくちゃ歳上だから。普段俺に年功序列主張して異論言ってくる奴らはちゃんと従えよ」
…後衛武具隊の、練習に付き合っていた。俺の前には怖い顔した若人共が、ずらりと並んでいる。腕や胸には国の紋章が刻まれているので、頭では仲間だと分かっているのだが…うん、如何せん怖い。
どうしてこんなことになったのか、頭の中で勝手にリフレインを始める。隣の話は先ほど聞いたから、大丈夫。
まず、俺は医療隊で必死に働いて、働いて、その結果隊長にまで上り詰めた。給料も目に見えて上がったし、家だってあの狭いワンルームから一軒家が与えられたのだ。正直そこまで嬉しくはないが、まぁ無いよりかはマシである。
それに、隊長になる頃には周りの奴らとの関わりも随分と広がっていた。練習には怪我が付き物、されば医務室に行くことはほぼ必然である。…医療隊の奴らは、他の隊とも繋がりができやすいのだ。
その結果、何故か他の隊の苦労を知ろう、的なレクリエーションで撃ったスナイパーライフルが、何故か良い感じに手に馴染み、何故かその腕を見込まれて、何故か後衛武具隊の練習に付き合ってほしいと頼まれた。……うん、何を言っているか本当に分からない。ド素人に銃の訓練を任せるなんて、イカれてる。
(まぁ、思ってても言ったりはしないんだけどさ………)
「あ、レダンくん。その体勢だと撃った時に顎怪我しちゃうから、もうちょっと背筋伸ばして大丈夫よ」
「ウス」
「メクバくん、多分撃つとき左にズレる癖あるよね。左にプロテクター着けるか…ズレるの前提で、ちょっと右に撃つと良いと思う」
「あ、はい…ざす」
(………なんか、俺に対して結構…こう…失礼、じゃない???)
ひしひしと伝わってくる「なんでこんな奴に教えてもらわにゃならんのだ」感が半端ない。指示は素直に聞いてくれているので、まぁ可愛いことこの上ないで済むのだが……これ、他の人達が来てもこれなのかな。だとしたら不味くないかな???
老婆心ならぬ老爺心が顔を覗かせるが、今は訓練中。甘くしすぎては彼らのためにもならない、と気を引きしめた。
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「…お前ら、フーゾ隊長に失礼な態度取ンのマジでダセェから。優しいからって調子乗ってんじゃねぇよ、お前らいつからそんなガキになった?」
「……」
「てかさ、教えてもらってンのにありがとうございますの一言も言えねぇのは何なんだよ。不満があるのは分かるけどさ、もう良い歳してんのにそれは無いだろ」
「…でも隊長、どんなに銃が上手くても所詮医療隊の奴ですよ?!そんな奴に何が分かるんですか!!」
「じゃあお前、さっき貰ったアドバイス実践して悪癖治ったのはどういうことだよ」
「……それは……」
(……この地獄は何…???)
今現在、俺は左斜め前に仁王立ちした隊長くんが隊員たちに、俺への態度の失礼さで説教しているのを大人しく聞くという、気まずさレベルマックスの状況にあった。
えーそんな別に、俺気にしてないんだけどなーとは言えない。軍で偉くなってくためには、ただ強いだけじゃ難しいのだ。礼儀も身につけておいた方が、ずっと生きていきやすい。俺もそういうやり方で隊長まで来た。
ここで俺が気にしないと言っても、コイツらのためにはならない。ガチで気まずいが、若人のために我慢しようじゃないか。
「大体、お前ら俺に対しても失礼だよな?!年下にへーこらすんのはそんなに嫌か?!」
「ね、一回良い?」
「っはい!何でしょうかフーゾ隊長」
「なんで敬語?……いや、俺も思うことあるからさ、良いかな」
そう言うと、隊長くんはやけに嬉しそうな顔をする。いやあの、君みたいに強い説教はしないからね…?と念を押し、彼よりも前に出た。
「…君らさ、総統が来てもおんなじ態度でいるのかな」
「……まさか」
「だよねぇ、じゃ何で俺らにはそんな態度で良いと思ってるの?」
「……総統より地位が低いから?」
「疑問系になるなって。…というか、今俺らと総統を比べたよね?」
「………」
「まず対象が違うじゃん?君らが君ら自身のことどう思ってるのかなんて知らないし、心底どうでも良いけどさ。現実は君らの方が俺らより下なのよ、分かる?」
「…」
殆どの奴らがぐ、と苦虫を噛み潰したような顔になる。そうじゃない数人は、話を聞いていないか理解ができないかのどちらかだろう。そういう奴らはどうせ後々別の要因でやめることになるだろうから、あえて無視した。
実のところ、後衛武具隊の奴らは他よりも指示の通りが悪いっていうのはちょくちょく耳にしている。その度にああ、若いのに隊長くんも大変だなぁと思っていたし、今回は良い機会だとも思っていた。
「…それにさ、自分が相手を手の平で踊らすのって結構楽しいよ?ちょっとお世辞言っただけで今の総統とか喜ぶし」
「え」
「別にね、心から敬意持てって言いたいわけじゃなくて。ただ、自分より上の相手が自分の言葉遣い一つでご機嫌になったりするの見てさ、心の中で『しめしめ、してやったり』ってほくそ笑む方がよっぽど良くない?って話」
途端にざわ、ざわと隊列の所々から困惑の波紋が広がっていく。…うんうん、分かるよ。普通敬えとか言われるよね。だから反発とかするし、それしてると後にも引けないし。
勿論、敬意を持てるならそれが一番良い。ただお世辞にも今の総統は敬うに値する人間ではない。隊長くんだってまだ未熟なところはあるし、俺に至っては今日がほぼ初対面。敬意を持つなんて無理な話だ。
だから逃げ道を用意した。相手よりも擬似的に上の立場を見下せる、という彼らにとっても相当魅力的なものである。これをすれば敬語を使っていても「俺はお前を騙してやってるんだぞ」という心持ちでいれるから、前まで反発していたことが後ろめたくなることも殆どない。
敬語を使えない軍人の殆どは、プライドが実力の割に高い奴らばっかりだ。たまにシイみたいな敬語を使ったことがない、または使わなければいけないという意識のない奴もいるが、そういう奴は稀なタイプである。
実力が伴っているなら良い。指示出して違うことしても、良い結果を出したなら軽く干されるくらいで済む。
(…シイなら、実力があるから敬語を使う必要もないんだろうな)
快活に笑う彼の顔が、ふと頭を過った。油断するといつもこうで、その度に彼からは逃れられないんだなぁ、と勝手に捕まった気分になる。実際は、ただ俺が幻影から離れられないだけなのに。
他所へ行きそうな思考を今に戻し、ちょうど良く締められそうなオチを探す。頭にちらつく彼の白髪に、俺の思考は絡め取られてしまいそうだった。
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「調査、ですか」
「そうだ。なんでも、最近【迷いの森】近辺で行方不明者が続出しているらしいからな。調査隊を派遣することになった」
「ああ…それで医療隊も同行するんですね」
目の前にいる総統は深く頷き、こちらへと資料を寄越す。そこには迷いの森の位置や事件の概要、同行メンバー等が細かく丁寧に記載されていた。
今俺は、総統室にて今度向かう遠征の概要を聞いている所だ。突然呼び出されたので何かと思えば、総統の報連相意識が欠けまくった遠征要請。心の中で早よ言えよとか、冷蔵庫の中のサラミどうしてくれんだとか愚痴を吐きながら、おくびには出さずに話を聞く。
今回は少人数の遠征のようで、行くのは俺と、最近前衛武具隊の隊長になったばかりな子率いる少数精鋭チームだけだった。
嫌な人選だな、と心の中でまた吐き捨てる。少数精鋭での遠征と言えば聞こえは良いが、恐らくは面倒な駒を捨てるくらいの気持ちなのだろう。
年寄りは有能だが知恵があり人望がある分厄介、新しい隊長くんは強いけど扱いづらい。他の選ばれた子達も皆、強かったり慕われてはいるけれど、どこかしら難のある子が殆どだった。ここまで分かりやすければ、相当な馬鹿でもない限り「体の良い駒捨て」なことくらいすぐに気がつく。
「どうだ、行けるか?」
「…勿論。喜んで、Präsident」
敢えて頭の悪いフリをして、彼の思惑に乗ってやる。総統は下卑たニヤつきを隠そうともせず「さすがフーゾだな」と俺を煽てた。
まぁ、俺が同行するからには維持でも全員帰還させるつもりだが。
(…そういや、新しい隊長くんと話したことって無いな~)
仲良くできると良いけれど、なんて思ってさすがもいない癖に考えてみる。仲良くしたってどうせすぐに死んでしまうのだから、つるむ意味なんて無いだろうに。
永い命を持ったからこその諦めが、じんわりと体に滲む。いつまで俺は、置いていかれれば良いのだろう。
◇To be continued…