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騎士。
「んん゛ー……」
さっきから執務室のゆったりとした椅子に深く腰掛け、眉間に皺を寄せている蓮。
「どうしたんだよ、蓮」
蓮「なんかさ、最近襲われないなって思って」
「……っは⁉︎///」
蓮「あ、変な意味じゃないよ?そのまんまの意味」
「変な意味じゃないにしろ何言ってんだよ」
蓮「んー…俺さ、俺を守ってくれてるときのひかるの顔が好きなの」
「は?」
蓮「だーかーら。俺が襲われた時にひかるが守ってくれるのが好きってこと」
「俺が護衛してる時が好きってことか?」
蓮「違うっ。守ってるのが“蓮”じゃなきゃだめなの」
……。
真剣な顔してこーやって可愛いこと言ってくるところが、蓮のいいところであり悪いところでもある。
よく、他人にもこういうこと言って勘違いさせてるから……困ったもんだ。
「蓮じゃなきゃだめな理由は?」
蓮「だってひかるは蓮だけの騎士でしょ?他の人守ってたらおかしいじゃん」
「別に蓮だけの騎士になった覚えはないが」
蓮「………えっ?違ったっけ?」
一拍遅れて蓮が目を丸くする。
肩書き上は最強の騎士。
確かに王子のただ一人の騎士ではあるが、別に蓮の専属ってわけではない。
蓮「そっかー………よし!じゃあ王子の権限使ってひかるを蓮だけの騎士にする」
「ちなみに俺の承諾がないとそれは無理だぞ」
蓮「へ?」
「そういう決まりがあるんだよ。別に騎士を選んで自分のものにするのは出来るが、自分専属にしたいとなると話が変わってくる。……てか知らなかったのかよ」
蓮「…いちいち覚えてないし」
蓮はむすっとして口を尖らせる。
…こうなった蓮は面白い。
「そうか…。もう何年も蓮の騎士として尽くしてきたつもりだったのに、蓮は俺に関すること何も知らなかったのか…がっかりだわ」
蓮「ちがうっ‼︎」
「ふーん…何が違うの?」
蓮「全部知らないってわけじゃないし…。たまたまこのことだけ知らなかったの」
「ほんとにこのことだけ?」
蓮「ほんとだもん!」
「絶対他にも知らないことあるでしょ」
蓮「ぜんぶ知ってるもん、」
「じゃあ今から法律全部言ってみ?そんなに多くないでしょ」
蓮「……っ」
「ほら言えないんじゃん」
蓮「〜〜っ‼︎ もうやだっ、ひかるのいじわる…‼︎‼︎」
「勝手に嫌になればいいじゃん。騎士がいなくなって困るのは蓮だし。」
蓮「別に蓮は困んないもん‼︎ 蓮だって自分の身くらい自分で守れるし」
「じゃあやってみれば?俺は騎士団の特訓に付き合ってくるからじゃーな♪」
蓮「……」
少しからかいすぎたか、と思いながら俺は執務室を出た。
---
「_____じゃーな♪」
何故だか楽しそう……いや嬉しそう?にひかるは執務室を出て行った。
……さっきはあんな風にひかるいなくても余裕、って言ったけど全然そんなことない。
本当は寂しいし怖いし、不安だし_____
「…ひかるのばか」
ぽつりと、声がひとりの執務室に響く。
「…ひとりでも大丈夫、…だし」
自分に言い聞かせるように震えた声で呟き、書類を抱えて大会議室へと向かった。
---
この宮殿の最大の特徴でもある長い回廊。
いつもだったらひかると横並びでここ通る、っていうのが俺は好きなんだけど_____
ひとりだと、この回廊は怖い。
右にはずらりと並んだ部屋、そして左には中庭。
この中庭は、実は一番侵入者が入ってくる傾向があるとか…
ーー蓮だって自分の身くらい自分で守れるし。
嘘だ。
自分の身が守れないから、ひかるがいるのに。
なんであんなこと言っちゃったんだろ…
__かたんっ__
「⁉︎⁉︎」
突然聞こえた音にびっくりして、俺はあとずさった。
後ろに、俺とは別のもうひとつ影ができる。
振り向く。
真っ黒な羽織り。
見たこともない紋章。
俺を見て、にたぁっと上がる口角…。
「王子サマ……ヒトリ?」
びくりと肩が震えた。
「ひ、ひとりじゃないよ…?ほら、ここ宮殿だし、すぐに騎士も_____」
「イナイ」
「…っえ、?」
「サイキョウノキシ、イマ、イナイヨネ」
なんでひかるがいないこと知ってるの…?
今までのひかるとの会話聞かれてた__?
それとも…
そんなことを考えている間に、侵入者は長い剣を取り出して構えた。
「オウジのシンゾウ、イタダキマス」
「やっ…待って、来ないで…っ‼︎」
懐から短剣を取り出し、とりあえず応戦する。
_____カキィンッ‼︎‼︎‼︎
回廊に金属音が響いた。
びりびりっと腕に振動が走り、俺の剣が吹っ飛んでった。
…これ、俺じゃ無理だ。
一応、多少の相手と応戦できるくらいの訓練は積まされてるけど、相手が実力者だと俺じゃ無理。
……だからひかるがいるのに、………
侵入者は俺の心臓目掛けて剣を振り上げる。
ーー終わる。
そう思った瞬間だった。
「_____そこまでだ」
瞬きひとつした後に侵入者の剣が弾き飛んだ。
岩「お前、俺がいないとか言ったな。……俺は蓮から一瞬たりとも離れない」
そう言うと、ひかるは侵入者と数回攻防を繰り返したあと、侵入者を床に組み伏せた。
「……っ、ぐぅぅっ…‼︎」
苦しそうな呼吸の後、侵入者が気絶した。
岩「蓮、怪我は」
「…ない、けど……こわかった」
岩「ならよかった……」
ひかるはふっと微笑んで俺を抱きしめた。
岩「……さっきはからかいすぎた。ごめんな」
「ん、」
岩「…蓮の専属の騎士じゃないとか言ったが、訂正する。…俺は蓮だけの騎士だ」
「…えっ⁉︎」
岩「俺は蓮の騎士になるために、子供の頃からやってきた。……命令でもされない限り他人を守るつもりはない」
「…ほんと?」
岩「当たり前だろ」
「じゃあ……ひかるは蓮だけの…?」
岩「あぁ。……一生、俺は蓮だけの騎士だよ」
「ん、……約束ね」
ふたりの小指が絡む_____
やっぱ、ひかるは“蓮の”騎士じゃなきゃね。