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誰も知らないよ4
彼や彼女と言った言葉がありますが2人は付き合ってないです
「ん?何かいけないこと言っちゃった、かな?ほらほら、|氷水《なみだ》が溢れてる。このハンカチ使いな?」
彼女は彼の話でなぜか泣いてしまった。
彼女は、ハンカチを持った彼の手を振り払った。
「…余計なお世話だったね、ごめん。」
「あ、あの…!そんなことないです、すごい感動しちゃってしまいました…。」
そして彼女は自分のハンカチで氷水を拭った。
「もう…帰らないとです…」
「そうだよね、長くなっちゃった。ごめんね。…あ、じゃあこれもらって。」
そう言って差し出してきたのは、さっきのハンカチだった。
「これね。僕が家で刺繍したの。使ってくれると嬉しいな。」
「持ち歩いてるんですか…?(何でありがとうくらい言えないの私…)」
彼女はありがとうが難しい。特に初対面の人だと。
「病院に行くときは持ってる。君みたいな子に渡したいな、と思ってて。」
彼女はおそるおそる手を伸ばし、ハンカチを受け取った。
「あ…、ありがとうございますっ(言えた…当たり前だけどね)」
すると彼は満面の笑みで去っていった。
次の瞬間、彼女は、自分で思いもしないことを叫んだ。
「あの…!!また、会えると、い、いですね!」
待合室にいる人や歩いている人、看護師さん全員が彼女の方へ振り向いた。
もちろん彼も振り向いた。
「うん。」
大きく頷いた。
彼女は、久しぶりに本当の「笑顔」になることができた。
(今から…ピアノの練習しないと。)