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第9話
如月「入ったらすぐ殺しちゃう?なんか聞くことあるかな」
三鷹「紫村さん如何したのか聞いた方がいいかも」
黒宮「殺すのは2人に任せる」
三鷹「クロミヤちゃんのそれ振り回したらあたしたちも無事じゃいられなさそうだしね」
2mほどありそうな鎌は、物が多い室内では扱いづらい。同士討ちになる可能性が高い…というか、ほぼ確実に同士討ちになる。
三鷹「じゃ、開けて」
如月「俺!?」
如月が渋々扉を開けた。
開けた途端銃弾が飛んでくる。
如月「俺を盾にしないでよっ!!」
三鷹「アンタが一番丈夫でしょ。あたしは仕事柄あんまり怪我したくないし、クロミヤちゃんはちっちゃいじゃん」
黒宮が傷ついたような顔をしている。別に身長は低くないはずだが、大鎌とセットだと小さく見えるのだ。
如月「掛川総一さーん。いらっしゃいますかー?」
返事の代わりに銃声が鳴り響く。
三鷹「掛川って小心者なのね」
三鷹が溜息を吐いた。
こうも闇雲に銃を乱射していては、すぐに弾が切れるだろう。
数分すれば弾がなくなったのか、一気に静かになった。
如月「入っていいかな?」
三鷹「とっとといきなさい」
三鷹に蹴られ、如月が部屋を覗き込む。
掛川は見当たらない。
黒宮「物陰から撃っていたんじゃないのか」
三鷹「その辺に隠れてるから気をつけて」
如月「2人とも手伝ってよ!」
手分けして部屋を見回る。
一番奥にある倒れた本棚の影に、掛川はいた。
首が180度捻れた姿で。
三鷹「ヒイラギ、アンタいつの間に掛川殺したの?」
如月「俺じゃないって。俺は殴る専門だしさぁ、頸折ったりはするけど、捻ったりしないよ」
黒宮「ダイイングメッセージでも残してくれていたらありがたいんだが」
三鷹「推理小説じゃないんだから」
一応、掛川の体をひっくり返してダイイングメッセージを探してみる。
文字は見つからなかったし、メモも握っていなかったが、代わりに髪の毛を握っていた。
白銀の長い髪の毛だ。
如月「殺した奴の髪の毛?」
黒宮「こんな髪色の奴がいたらかなり目立つだろうな」
薄暗い部屋では、三鷹の空色の瞳や黒宮の真紅の瞳も目立つ。
光を反射しそうな白銀の髪をした人物がいれば、すぐわかるだろう。
三鷹「窓から逃げたのかも」
窓が大きく開いているが、ここは5階。
掴まれそうな物もないし、窓から飛び降りれば墜落死する筈だ。
如月「まあ、掛川は死んでるんだし、これで依頼完了じゃない?」
黒宮「紫村夫妻を見つけていない」
三鷹「あー、そのパソコンに何か書いてあったらいいんだけどね」
開きっぱなしのパソコンを覗く。
メールアプリが開かれていた。
三鷹「…2人とも殺されてるみたい。夫の方は『貿易社』の連中で拷問して殺して、妻の方は売れそうな臓器と血液を取り出して、病院の方で始末したって書いてある」
如月「夫の方もこの病院で殺したの?」
三鷹「え!?アンタが足突っ込んだ血溜まりが紫村さんのってこと?」
黒宮「…そういうわけではないと思う」
7年前の血液がまだ乾いていないのなら、それこそホラーだ。
黒宮「でも、2人ともここにいる」
三鷹「え、そこにいるの?」
黒宮は院長室の端を指差す。
黒宮「娘に会いたいらしい」
如月「じゃあ、ついてきてもらったら一件落着じゃん」
三鷹「早く『会社』に帰って説明しないと」
三鷹が車のキーを取り出す。
如月と黒宮の顔が強張った。
如月「三鷹ちゃん疲れてない?俺が運転するよ!」
三鷹「え?アンタ怪我人でしょ」
黒宮「なら私が運転する」
被せ気味に黒宮が申し出て、素早くキーを奪う。
三鷹「クロミヤちゃん、運転できたっけ?」
黒宮「教習所以外ではこれが初めてだ」
不安になることを言い出す。黒宮は移動に公共交通機関を使うので、免許は完全にペーパーなのだ。マリ○カートの腕前は良いから、おそらく大丈夫だと願いたい。
如月「宮ちゃんもワイルドじゃん……」
三鷹「気持ち良かったわ」
黒宮「申し訳ない」
如月は地面に倒れ込む。怪我人にカーチェイス風はだいぶキツかったようだ。
三鷹「大丈夫?あ、ちょっと待ってて」
何処かへ電話をかける。
如月「2人ともさぁ…なんでそんなにカーチェイスしたいのさ…」
三鷹「気持ちいいじゃない」
黒宮「マリ○カートと同じようにやったらこうなった」
如月「教習所を思い出して…『かもしれない』運転を…」
三鷹「『警察が追いかけてくるかもしれない』って?」
黒宮「『実はこの世界はマリ○カートの世界かもしれない』」
如月「宮ちゃんマリ○カート引き摺りすぎだって…」
柳澤「お前、何やってんだ!!」
三鷹が呼んだのか、柳澤がやってきた。
如月「宮ちゃんの運転が荒かったんだよ…」
柳澤「仕事で怪我したんだろ。見せろ」
如月「えええええ〜」
三鷹「消毒と止血はしたけど、一応病院で診てもらった方が良いかも」
柳澤「真面目に仕事しねぇからこうなるんだよ!!!!」
如月「だって今日ほんとは休みだったし…」
柳澤「黙れクソゴミヒモ野郎」
鬼の形相で如月を睨む。
如月は曖昧に笑いながら逃げ出そうとしている。
柳澤「いいから病院行くぞ」
首根っこを掴んでずるずると引き摺る。
如月「ちょっ、ズボン破けるって!!え、聞いてる!?ちょっ、ねえ!?!?」
三鷹「大人しくしなよ。柳澤さんに迷惑かけないで」
黒宮「破傷風になったりしたら大変だから」
如月はそのまま柳澤の車に押し込まれた。
三鷹「…じゃ、あたしは依頼人に連絡取るから、クロミヤちゃんは帰っていいよ」
黒宮「わかった。紫村夫妻は『会社』にいるそうだから」
三鷹「言わなくていいよ、それ……」
紫村夫妻は三鷹のすぐ横にいるのだが、言わない方が良いだろう。三鷹も、田中や水無瀬のような人間と同じ姿をした幽霊なら見ても構わないのだろうが、紫村夫妻は、死んだ時のまま…つまり、拷問死した時の姿の幽霊。見て気持ちの良いものではない。
三鷹と別れた黒宮は、いつものように帰路に着く。
見慣れた通りを横切った時、視界の隅に白銀がちらついた。
振り向くと、人混みに紛れて、掛川が握っていたものと同じ色が見え隠れしている。
あの病院から尾けて来ていたのか、ただの偶然か…。
けれど、『仕事』が終わった今は、あれが誰であろうが関係ない。
黒宮は、また歩き出した。
結構長くなっちゃいましたw
掛川を殺したのは誰でしょうね…また登場するのでしょうか?
今、リクエストいただいた三鷹ちゃんのイラストを描いております!
イラストのリクエストもぜひどうぞ〜