公開中
拝啓、君へ。
たとえば、明日僕がこの世界からいなくなるとしたら、
君はどんな顔をするのだろう。
涙を流してくれるのか、それとも、
「ふうん」ってまるで風に揺れるカーテンのように、
軽く受け流すのかな。
……たぶん、君なら笑ってしまいそうで。
それも、ほんのり皮肉っぽくて、
だけど、どこか優しさのにじんだ、あの笑い方で。
そんな君の姿が、頭の中に鮮やかに浮かんでしまう自分が、
なんだか、ちょっと情けなくて、
そして、すこしだけ誇らしかった。
君を好きになったあの日から、
どれだけの言葉を呑みこんできたのだろう。
残された時間を知ったその日、
君の態度は、まるでスイッチを切ったように冷たくなった。
心がぴしゃりと閉じる音が、はっきりと聞こえた気がした。
だけど、僕は知ってるんだ。
君は臆病なだけで、
優しさをうまく伝えられない人だってこと。
わかってたんだよ、最初から。
それでも、好きだった。
だから僕は、もう「ねぇ」と呼びかけるのをやめた。
何度も名前を呼んで、そのたびに背を向けられて、
痛んだ胸に慣れてしまった自分が、少し怖かった。
君のその、氷のような瞳の奥に、
もしほんの少しでも僕の影が映っているのなら。
それだけを信じて、生きてきた。
夕暮れの教室。
窓から差し込む赤い光が、床に僕の影を長く引き伸ばす。
まるで、今にも燃え尽きそうな蝋燭の炎みたいに、
頼りなく揺れている。
「君は、変わらないんだね」
そう呟いた声は、誰にも聞こえないほど小さくて、
でも、自分の心の奥に届くほどまっすぐだった。
何度も伝えられなかった想いが、
この空気のなかに溶けていく。
「ねぇ、僕が……いなくなっちゃう前に、もう一度だけ話せるかな」
その言葉は、まるで瓶に詰めて海へ流す手紙みたいで。
届くあてなんて、もうないのかもしれないのに、
それでも、伝えたかった。
君は、黙って目を伏せた。
まるで、見えない何かを噛みしめているように。
その沈黙が、胸に重くのしかかる。
だけど、それでもいいんだ。
今は、ただ君の声が聞きたい。
たとえ、震えるくらい冷たい声でも。
君と話したいことが、まだたくさんある。
君の目を見て、まっすぐに言いたいことがある。
たとえば、あの日君が見せた小さな笑顔のこと。
一緒に並んで歩いた放課後の坂道のこと。
君が無意識に口ずさんだ歌を、ずっと覚えてること。
全部、君に話したかった。
全部、君と分かち合いたかったんだ。
教室の空気が静かに冷えてゆく。
時間の砂が、音もなく落ちていくみたいに。
砂時計がもうあと少しになるみたいに。
窓の外では夕焼けが、真っ赤に空を染めていて。
まるで世界がゆっくり燃えているみたいだった。
終わりが近づいていることを、
空が先に気づいてしまったようで、少し切なかった。
でも僕は、逃げない。
君の冷たさの奥にある、
ほんの少しの温もりを、信じていたいから。
「どうして、そんなに冷たくするの?」
その言葉は、氷のように硬くなった空気のなかで、
かすかに震えていた。
君はやっぱり何も言わずに、背を向けた。
だけど、その背中が少しだけ揺れた気がして。
そのわずかな動きに、僕はすがりつきたくなった。
君の背中に、どれだけの痛みが隠されているのか。
本当のところは、僕にはわからない。
でも、ひとつだけ確かなことがある。
それは——
僕はまだ、君を手放したくないんだ。
どんなに冷たくされても、
どんなに拒まれても、
僕は、ここにいるよ。
君が振り返ってくれるその時まで、
君がもう一度だけ名前を呼んでくれるまで、
僕は、待ってる。
言葉にできないくらい、たくさんの想いを抱えて。
消えてしまう運命を抱きしめながら。
——もし、明日が来なかったとしても。
この夕焼けの下で、
君のことを好きだった僕が、
確かに、ここにいたということを、
誰かが覚えていてくれたら。
それだけで、僕は救われる気がする。
だから君へ、最後のお願い。
一度だけでもいい。
どうか、
僕の目を見て、
僕の名前を、
呼んでくれませんか?。
ファンレター名前、書いてくれたら返しに行くので!!。
もし、「返信いらないよ!」って方は書かなくても大丈夫です。