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消えかけの灯
阿部くんの心の奥底に、秘めている思いとは。渡辺くんなりの優しさとは。
ぜひ、最後まで御覧ください。_
Ryohei side
阿部 「ッ、」
初めは痛いと思っていた《《コレ》》
自身の腕から流れ落ちる赤い液体。
鋭い刃。深い傷口。
そんなものを見ているうちに、痛みもあまり感じないようになっていった。
今日は翔太とお泊まり。
今日もバレないように自分を隠し続ける。
阿部 「いらっしゃい」
渡辺 「おう」
阿部 「お仕事疲れたでしょ。ご飯できてるよ」
渡辺 「まじ?さんきゅ」
幸せな時間はあっという間に過ぎていく。
朝になれば、翔太が仕事へ向かう時間。
阿部 「いってらっしゃい」
渡辺 「おう」
静かに、ドアの閉まる音だけが響いた。
気づけば手にはカッターが握られている。
阿部 「ッ、はは、笑」
床に流れ落ちた赤い液体がカーペットに染みていく。
一つ。また一つ。傷口が増える。
ガチャ。
扉の開く音。足音。
そして、大好きな人の声。
渡辺 「りょうへーい!忘れ物した〜」
ここまで来るならざっと10秒ほど。
手に握ったカッターをクッションの下に置き、服の袖を下ろす。
阿部 「また?何忘れたの?笑」
渡辺 「あーこれこれあった。」
阿部 「よかった笑お仕事頑張ってね笑」
渡辺 「ん、?」
阿部 「どうした?笑」
渡辺 「なんか生臭くねぇ?」
一気に鼓動が早くなるのを感じる。
阿部 「そうかなぁ?笑」
渡辺 「亮平」
阿部 「ん??」
渡辺 「袖、赤いけどどうした?」
阿部 「これこの前ついちゃってさぁ笑笑」
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Syota side
薄々俺も気がついていた。
亮平が何をしているかなんて
渡辺 「、おう。そっか」
軽く流したつもりだった。
でも、その揺れた瞳を見ると、
渡辺 「ごめん。」
この|灯《ひ》は絶やしちゃいけない。
そんな気がした。
阿部 「急に抱きついて、どうしたの?笑」
渡辺 「辛かったよな、」
そういうと俯く亮平。
渡辺 「何も出来なくて、ごめん」
阿部 「なんのことっ?笑」
渡辺 「腕、貸して?」
阿部 「いや、大丈夫、」
渡辺 「貸して?」
亮平は俺のお願いに弱い。
阿部 「、はい、」
所々血が固まり始めている腕。
渡辺 「ちょっと染みるよ」
丁寧に消毒していく。
渡辺 「痛くないの?」
こんな深い傷、消毒するときも痛むだろう。
阿部 「うん」
手当している間の亮平のめは黒く、光がなかった。
渡辺 「おわったよ」
阿部 「、ありがと」
理由はあえて聞かなかった。
消えかけの灯を繋ぐ。
それが俺の使命だから。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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