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『雪中眠る君達へ。』予告編~雪中のウクライナから~
史実を参考にしています。
我が故郷ウクライナ。肥沃な土地に恵まれ、小麦畑が一面に広がる農業の楽園とも言える所であった。だから昔から争いの絶えぬ土地だ。そして、今も続く騒乱に俺は身を投じている。ここは、掩体壕の中だ。中には、古今東西多種多様な兵器が立てかけられていた。外を見ると、雪解けのせいで地表は泥だらけだ。この状況ではロシア軍の連中の得意技の戦車による陣地突破は不可能、ウクライナ軍は戦線維持で手いっぱい、よってウクライナの戦場は今、膠着状態だ。この膠着状態を打破しようと双方が躍起になっているが、それは、無防備な歩兵が突っ込むことを意味している。この塹壕の外には数え切れないほどの地雷と死体が横たわっているだろう。
「定期便がそろそろ来ますよ。」
そんな事を誰かが言った。俺は近くにあったショットガンを手に取った。空は快晴。敵も味方も、よく見えるだろうな。敵にバレないために、皆が伏せて物陰へ退避する。さぁ、今日も来るのか?
・・・・・・・・無言の広がる空に、無機質な羽音が響いた。その方向を見ると、ドローンが見えた。そう、定期便とはドローンである。そいつは爆弾を吊り下げており、緩降下しながらこっちに向かってくる。
「距離、500ヤード、400、300・・・・200・・・100・・75・・・」
そいつとの距離を囁きの様に言いながら照準を効果と共に下げていく。こっちの陣地から目と鼻の先の距離まで接近して来た時、引き金を引いた。すると、銃身が急に白煙を上げ、無音の空を切り裂く様に大きな音を立て、それと共にドローンは上空で爆弾と共に爆散した。ドローンを撃ち落とすのは、殺し合いと言うよりかはクレー射撃に近い。なぜならこれがここの日常だから。これが2年も続いている。ここは、娯楽も無く、死体だけが積み上がる消耗戦で陰湿な戦場だ。だが、引くわけにはいかない。引けば、民間人が今以上に死ぬ。だから戦う。俺らの戦いが戦史に載らずとも。だが、兵士も人間。飯が食えればそれで良いという訳ではないのだ。娯楽が無ければ生きていけない。俺の場合、本が読みたくてたまらなかった。だから、暇ありゃすれば軍隊手帳でも読んでいた。そんな時である。信じがたいことにボロボロのノートか何かがこっちに飛んできた。何故か俺の前にボトっと落ちてくる。最初はロシア軍のビラか何かかと思ったが、拾ってみてみると、それは古い古い、それも独ソ戦時のドイツ国防軍軍隊手帳であった。持ち主は・・・・
「クルト・アーノルト・・・・?」
中を読むと、それはドイツ語で書かれた日誌らしい。持ち主の記録は・・・・1,944年の2月ごろに途絶えている。俺は、すぐさま翻訳作業にかかった。廃れたそれを、何故か読みたくなったのだ。俺は、辞書とペンを片手に、もう片手に銃器を握って今も日常を送っている・・・・のかもしれない。
本編、「雪中眠る君達へ。」是非一度!!