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何が澱む
メリークリスマス🎅
2025/12/25 何が澱む
今日は雪が降っていた。私がコンビニで弁当を買って家に帰っている時、元クラスメイトに会った。
「奈那?」セーラー服に身を包み、暖色のマフラーに顔を埋めた竹口は、私を見て驚いたような声を上げた。無視して通り過ぎることもできず、私は視線を曖昧に動かしたまま口を開いた。「…ひさしぶり。」竹口は口角をあげ、久しぶりだねと言った。1年前よりも可愛らしくなっている気がした。
まだ11時半なのに竹口が外にいるということは、今日は中学校は半日だったのか。焦りのような、嫌悪のような、後ろめたさのような、よくわからない感情の中で考えていると、竹口は口を開いた。
「奈那が学校に来なくなって、もう、1年とか? ほんと久しぶりだね。」少しどきりとしながら、小さく頷いた。それで終わり。沈黙が場を支配する。コンビニの袋が手から落ちそうになったので持ち直す。寒いはずなのに手には汗が滲んでいた。この場から早く離れたいと思ってはいるが、それを言えるわけもなく、私はマスクの下で口をもごもごと動かした。「元気? マスクしてるけど…。」不意に問われ、ほとんど反射のように視線を竹口にやった。目が合う。「元気…マスクは、インフル予防で。」竹口は柔らかく笑った。可愛いというより、綺麗で大人びていた。たぶん、竹口は成長していた。身長も高くなっているし、髪型も、ボブだったのが低い位置でのポニーテールになっている。目の奥に何があるのかわからないのも、成長なのかもしれなかった。
「そっか、元気なら、よかった。」私はなぜ竹口はそんなふうに笑い、そんなことを言えるのか、理解ができなかった。
雪が降っていた。私の肩に落ちてきてすぐに溶ける。コンビニ弁当も冷えてしまう。まあそれは、家に帰ってチンすればいいだけなのだけど。
口を開いて声を出しかけて、やめた。私が不登校になったのは、竹口が原因だよと、そんなことを言ってもどうにもならない。
「じゃあね。」竹口は私に手を振って歩いて行った。私も歩き出す。竹口の足跡が積もった雪に残っているのが視界に入り、私はそれを、足跡とは逆向きに踏みつけていった。喉の奥に酸っぱい塊が迫り上がってきて気持ち悪い。竹口のそれをどれだけ踏みにじっても、惨めなのは変わらない。
クリスマスだから雪よ。